第15話 偵察用アンドロイドの投入

 バリバリバリ…と高圧電流のような音を放ちながらプラズマは放出されていた。その様相に作業員たちは身構え、プラズマ流に巻き込まれないように警戒を怠らない。


 気密スーツに身を包む彼らは扉の切断後に起こりえるかもしれない汚染物質の流出に備えていた。


 そして彼らの脇には内部情報を収集するための偵察型アンドロイドが待機していた。


「あともう少し…」


 作業の指揮者が呟く。


 高出力レーザーでは歯がたたないと思われた防護壁もプラズマの前ではゆっくりとだが確実に破壊されていく。


「あともう少し…」


 皆が固唾を呑んで切断の完了を見守る。


 ガチャンと盛大な音が響き渡った。


 切断された扉部分が床に衝突する音だ。時をおかずに作業員たちはバイオハザード対策用の探知器を作動させ指揮者は切断の完了を通信装置で告げる。


 その通信を受領した第101情報偵察管制隊のオペレーションルームでは部隊長がアンドロイドを遠隔操作させるオペレーターに下令した。


「突入せよ」






 切断された扉をくぐるなり偵察型アンドロイドは異常事態を認識した。


 血まみれになった死体の山が扉の内側をこれでもかといわんばかりに覆っている。遠隔操作のオペレーターはその光景に息を飲んだ。


 上官に指示を仰ぐと「前進」という言葉が返ってくる。死体への調査機能まではアンドロイドに備わっていない。よって先の状況を把握すべく前進するしかない。


 エスカレーターは何の原因からか動作を停止しており所々に死体が点在していた。扉のすぐ内側に折り重なっていた死体もそうであるが、まるで何かから必死に逃れようとして息絶えたような様相を成していた。


 三体のアンドロイドはエスカレーターを歩行で下りゲートらしきものが設置された階に降り立つ。


 奥はエレベーターホールだ。ここにも床のあちらこちらに死体が散在する。ゲートやカウンターの至るには損壊の痕跡が生々しく残っていた。


 アンドロイドの一体が階の全般、一体がカウンター等の損壊跡、一体がエレベーターの調査を開始する。前二体がセンサーを作動させて何か見のがしたものが存在しないか探知している間に、最後の一体はエレベーターのボタンを押して扉が開くのを待機した。


 だがエスカレーターがその動作を停止しているようにエレベーターもまた停止していた。


 アンドロイドの視覚装置によって中継される映像を、遠く離れた宇宙港内施設ではオペレーターがスクリーン越しに眺めていた。上官は「こじ開けろ」と命令する。


 オペレーターが命令コードを送信するとアンドロイドはアームを扉の隙間に差し込み力任せでドアをこじ開ける。アンドロイドの力をもってすればエレベーターのドアをこじ開けることなど造作もないことだ。


 だが扉をこじ開けた瞬間に爆発が発生するなど誰が予想しえたであろうか。

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