第232話 女子会パーティー!(1)
今日のくろねこ亭は貸切だ。サングリエの快気祝いと日頃のお疲れ様会だとワカちゃんが張り切っている。
厨房では俺と外売りのおっさんがてんてこ舞いだ。
「手伝いましょーか?」
サングリエが主役のくせに顔を出す。しかし……
「だめ〜、今日は女の子はなーんもしないって日なんですからっ」
リアが連れ戻す。ソラまでもが申し訳無さそうに俺にお辞儀をするとワインを手にとって女子たちの輪の中に入っていった。
ミーナたちお姉さん方だけじゃなく、なぜだか知らんがアマテラスやヒミコまで顔を出していた。セキュリティー上ほんとやめてほしい。
「ちょっと〜、おつまみが足りないわよ〜」
「へいへい」
ミーナがオーダーした激辛パプリカを使った海老のカリカリ焼き。ミーナの横ではララが信じられないといった表情でミートパイを頬張っている。
「強い酒をよこせ」
手いっぱいの俺に命令したのはカウンター席で一人飲むエスターだった。少女のような彼女が北方の強い酒をあおっている。しかもストレートで。
「つまみくらい食わないと……酔っ払いますよ」
「うるさい、さっさと酒をよこせ」
うわー……エスターってめんどくさいタイプだ。俺は「へいへい」と返事をして酒を彼女のグラスに注いだ。
「ソルトさーん! こっちの大盛りフライ追加で〜」
フィオーネの大声に振り向くとこれでもかとフライをかっこむクシナダ。ニッコニコのヴァネッサがクシナダに次々と食い物を渡してやがる。
「おっと、呼び出しだ。私はこれでお暇するよ。ソルト、頑張って」
エルフの香りを漂わせたネルは俺の肩をポンと叩くと意地悪に笑ってくろねこ亭を後にした。土産にでもするのかいくつかパイを包んだようだったが……食えない女だ。
「のぉソルト、餅を追加してくれんかのぉ? アマテラス姉様とシキがきなこもちが食べたいとおっしゃるのじゃ。ほれほれ、もっとキビキビ動くのじゃ」
ヒメが眉をひそめた俺を煽るような表情で急かす。
「俺が手伝うぞ〜! はっはっはっ!」
厨房から現れたイエローヘアーのおっさんが陽気に笑った。横にはスイーツに頭を突っ込んでばたつく翡翠。
またやっかいな……。
「あくありうむはダメだって〜。グレちゃん意地悪〜」
翡翠がぷくっとケーキを食い尽くすと頰を膨らませた。
「まぁ、しばらくは温泉で我慢できるだろ……ってかおっさんダンジョンにいなくていいのかよ」
海の王者と呼ばれる海竜に全員が釘付けになっていた。
等の本人はへらへらしているが……。
「全然おっけ〜! 仕組みはいえないが、こっちの俺は自由だしさ。おっ、お魚料理もあるじゃないか〜。美女ばかりに囲まれて羨ましいやつめ!」
どんっ!
俺の背中に穴が開く勢いて手を振ると海竜のおっさんは自由に食事を始める。
手伝ってくれるんじゃなかったんかい!
「ソルトー」
「ソルトさーん」
「あーはいはい!」
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