第179話 真紅の魔石(1)
「だから、無理だって言ってるだろ」
「そこをなんとか」
「エスメラルダはまだダンジョンへ行くのは怖いってよ」
「頼むヨォ。だってエスメラルダちゃんがいないとソルトが一緒に入ってくれないんだろう?」
「まぁ、そうだな」
サブリナの方はエスメラルダを説得している。
「ってか、別にお前レースなんかでなくてもいいだろう」
「それがさ……今回のダンジョンは是非攻略したいダンジョンなんだわ」
「レース終わってからいきゃいいだろう」
「それじゃ、レアアイテム取れないじゃんか」
「なんのダンジョンなんだよ」
俺の言葉を待ってました。と言わんばかりにニヤついた。
「俺たちが目標にしてたあのダンジョンだ」
俺は俄然、興味が湧いてきた。悔しいけれどこれは参加した方がいいかもしれない。
——真紅の魔石
それは、魔石の中でも最高峰の美しさを持つ魔石だと言われている。まぁ効力はそこまでない。ただ綺麗というだけ。
「そりゃ……その俺も拝みたいな」
「だろ?!」
タケルに乗せられるのは非常に腹立たしいがこうなってしまってはダメだ。俺もレースに出たい!
「じゃあ、条件がある。魔石を俺がもらうって言ったら?」
タケルはうーんと考え込む。すごく意地悪な質問だ。俺ながら、こんな残酷なことをしたくはないが……やっぱり真紅の魔石は欲しい。
「わかった。ソルトにやるよ。その代わり絶対に俺たちを1位にしてくれ。いいな」
「わかってる。絶対だ」
***
エスメラルダは俺からの勧誘なら断れない。
ちょっとかわいそうだが……真紅の魔石のためだ。これでレースに参加する条件、全ての種族が参加することが揃った。
「大丈夫、エスメラルダは俺たちサポート隊の護衛をしてくれればいい。フィオーネも一緒だ。大丈夫」
「はい……」
「よし、決まりだな。タケル、サブリナ、俺にシュー。サングリエとフィオーネとエスメラルダ。まぁかなり動きやすくて物理特化したパーティーだろう。薬師がいればもっといいが……」
薬師を連れて行くとなるとコストがかかる上に動ける人数が減るので却下。それから、ついていきたいとごねているヒメもだ。
サブリナと俺が手分けをしてレアアイテムを探し、その間にタケルやフィオーネが魔物を倒しまくる。
もしもエスメラルダが動けるのであれば他パーティーの妨害をシューと一緒にしてもらえれば助かるんだが……。
「では、ソルトさん。ダンジョン攻略の勉強会をよろしくお願いします」
サブリナは俺に言った。
彼女はれっきとしたS級だが、俺よりも経験が浅い。
「わかった。しばらくは俺の古書店で勉強会だ。サングリエにも挨拶をしてくれ」
サブリナは極東風の出で立ちだが、エンドランドの出身でかなりの勉強家らしい。どこでタケルに出会ったのか不明だが、とてもいい子っぽい。
「私、タケルさんと2人で冒険をするうち薬師としても動くことができるんですよ。ほら、回復術師を雇えなかったから」
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