PTAサバゲー編

第63話 戦いの前夜

「この学園内において、校長である私の意見が最優先される」


 返原閃花はそう言った。

 その独裁的発言にその場の誰もが騒然とする。


「何を言っているんですか?彩、帰るわよ」


 月島の母親は彩の腕を引っ張り、連れていこうとする。

 だが、返原閃花はそれを止める。


「お母様。この勝負に勝てば、海外で使用する全ての費用を負担しましょう。たとえ何をしていようと、神乃学園が全ての費用を負担します」


「そんな口頭の約束。信じられるわけ……」


 月島の母親は固まる。

 なぜならば、返原閃花が一枚の紙を見せたから。

 その紙には契約書と大きく書かれており、一番下には返原閃花の名と印鑑が押されていた。


「これで、信用していただけましたか?」


 俺は思った。

 返原閃花は、本気だと。


「いいでしょう。その勝負、受けてたちます」


 さっきまで否定していた月島の母親は、一瞬で勝負を認めた。

 さすがは神乃学園校長、返原閃花だ。


「では勝負の内容は、サバゲー。明日の朝、我が校が誇る遊びの達人集団、生徒会とPTAによるサバゲーです。PTAの中にあなたが入ってもいいのですよ」


「そうですね。ハッキリ言って他人は期待できません。私が生徒会を倒しましょう」


「最後に言っておきますが、我々が勝利した場合、月島彩は神崎翔が責任をもって預かりますので、


 月島の母親は少し動揺を見せたが、振り向いて帰った。

 返原閃花は俺たちに言った。


「ちなみに生徒会メンバーの中に、あなたたちも含まれているので。明日の試合、楽しみにしてますよ」


 返原閃花は去っていった。

 去り際、彼女はこのようなことを呟いていた。


「これで目障りなPTAも消える」


 返原閃花は喜んでいた。

 確かにPTAと神乃学園の仲は良くないとは噂されていたが、消したいほど仲が悪いとは予想外だ。

 それよりも、俺は残された月島をどうすればいいのだろうか?


「翔。修行、しよ」


 確か俺の記憶では、かつてサバゲーをした。

 その時は謎の少年と魔法があったから倒せたが、今回は魔法もなく、しかも敵は大人だ。


 俺と月島は夜の道を二人きりで歩く。


「月島。怖くないの?」


「怖いって?」


「だって月島は自分の母親を相手にしてるんだよ。俺だったら逃げたしたくなるくらい嫌だ。でも月島は」


「翔。私には翔がいる。だから私は強く生きていける。だから翔、私の側にいてね」


「ああ。絶対に俺が護ってやる。俺はお前が好きだから。だから絶対に護ってやる」


 俺は暗い夜道、声を大にして宣言した。

 少し恥ずかしかったけど、俺は月島のためなら何度だって戦える。どこでだって戦える。


「翔。本当に君は、カッコいいんだね。本当の私にも見せてあげたいよ……」


「それって?」


 意味深な発言に俺は問う。


「そうだ。今日は翔の家に泊めてよ。親御さんにも挨拶したいし」


 月島は誤魔化した。

 俺も問うのを止めた。


「月島。じゃあ俺の家に案内してあげる。皆いい人だから怖がる必要はないよ」


「そうなんだ。楽しみ」


 月島は微笑んだ。

 やはり月島の笑顔は本当にかわいい。


「じゃあ行こう」

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