第57話 長いループを繰り返し
俺は月島彩の後ろ姿を見て思い出した。
「月島……杠……」
昔見た過去の少女は、どうして彼女と似ているのだろう。
楽しそうに笑う彼女に、もう会えないのだろうか?
「翔くん。どうしたの?」
月島彩は首をかしげ、俺に聞いてきた
その彼女の表情は、どこかで見た月島杠という女性に似ている。
どんな女性だったのかは思い出せないが、その女性は俺が最も大切だった女性だったということだけしか覚えていない。
「彩……いや、何でもない」
俺は言おうとした言葉を飲み込んだ。
まだ月島杠というのが月島彩という女性の妹なのか、姉なのか、それとも双子なのかは分からない。
俺はいつか月島杠という女の子に会えることを望んでいる。
「翔くん。いつか言えると思うから……だから私は……言わないことにしておくね」
悲しい仮面を被った彼女は、少し寂しい顔をした。
その表情に何が隠れているかは分からない。
でも、きっと今の俺には分からないことなのだろう。
虚無感と怠惰が流れるこの世界で、俺はただ何も考えずに前に進むことしかできなかった。
何も考えていないのだから前に進んでいないのだが、それでも俺は進もうと抗った。謎の虚無感襲われながらも、俺は生き抜いた。
ーー俺は一体、誰なんだ?
もしこの感情を背負える者がいるのなら、俺はその者を尊敬し、永久に敬い続けるのだろう。
だが、そんな人はいない。
俺は誰よりも苦労してきた。
誰よりも困難に立ち向かってきた。
死のうとすら思っていたのに、俺は結局何もできなかったな。
長いエピソードを歩いたはずなのに、どうして俺は運命を変えられない。
俺は心の中にいる多くの何かに睨めつけられる感覚を味わう。
俺の顔色は悪くなる。
「翔くん。大丈夫?」
「あ、ああ。俺は全然大丈夫だ……」
だけど、体は言うことを聞いてくれはしない。
「は……は……」
俺は倒れてしまった。
胸に引き締まるような感覚を味わい、俺は倒れた。
「翔くん!?」
ーーごめんよ、彩。俺は、少し分かったんだ。俺に生きる意味をくれたのは、紛れもない月島杠だと言うことを。
「杠……」
「私を、もう一人の私を知っているのですね。なるほど。そういうことですか」
黄昏に吹く風は少し冷たく、人の心を簡単に凍らせてしまう。
温かみを知っていた俺でも、さすがにこの寒さはキツいな。
俺は意識が遠退いていくのを感じ、そして俺は倒れてしまった
最後に彩は呟いた。
「翔くん。実は私、魔法使いなんだ」
ーー魔法使い?そんな言葉、聞いたことないよ。
たとえ何度ループしても、同じ運命を辿るとは限らない。
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