第39話 結果のための手段

 俺と月島は屋上に向かった。屋上は以外に広く、柵で囲まれている。

 そこから見える景色は正直普通。


 俺は屋上を見渡す。割くに寄りかかった一人の少女を発見した。ネクタイの色は青だから一年生だ。


「ねえ。何してるの?」


「待って。この子、多分一年四組の代表者じゃない?」


 月島さんは俺の腕を掴んで静止させる。

 確かに頭にはハチマキを巻いている。だがこの子は怯えて体が震えているようだ。


「まさか……」


「どうしたの?」


「多分、この子は銃弾恐怖症」


 初めて聞いたその言葉。俺はそんな病気を知らない。だが月島さんは知っていて、銃弾恐怖症について語る。


「銃弾恐怖症。それは銃によって命を奪われかけた人によく起こる症状で、彼女はペイント銃を怖がっている」


「なのに代表にさせたのか」


 俺は憤怒に溺れそうになる。


「違うの。私は自分でやるって言ったの。だって、もう嫌だったんだよ。銃を見るたびに怯える自分が。そんな自分が嫌いだから私は代表になった。だけどいざとなったら足がすくんで動けない……」


 憤怒に溺れかけていた自分を悲しげな目で見るように、彼女は悲しみという誰も乗り越えることができない感情に支配されていた。

 今の俺では彼女を悲しみの底から引き上げることはできない。そんなことをすれば、彼女はさらに深く沈んでしまいそうだから。


「ねえ。君、名前は?」


阿迦井あかい りほ」


 俺と月島さんは目を合わせ、静かに頷いた。


「優勝はこの子にお預けだな」

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