第27話 それぞれが抱く思い

 木原咲良は生徒会を取り戻そうと、必死にPTAや教師会の周囲を嗅ぎ回っていた。

 生徒会の仲間の仇をうつため、PTAや教師会を瀕死にまで追い詰める何かを探していた。だけどその何かは見つかっていない。


「月島。そして生徒会を追い込るほどの作戦を整えた神崎。私の頼みを聞いてくれないか?」


 木原さんは俺と月島さんに頭を下げた。

 弱々しい頭だな。だが、木原さんのお願いは大体分かっている。


「聞こう。その頼みとやらを」


「私も聞きたい」


 俺たちの言葉を聞くと、木原さんは少し微笑みを見せた。


「ありがとう。実は、生徒会の解散の理由が書かれた資料を見つけたんだ」


 木原さんはポケットから、小さく折り畳んだ一枚のプリントを取り出した。それを開いて、俺たちに見せた。

 その内容を見て、俺たちは驚いた。


「全部デマじゃないですか!」


 そこに書かれていることは、一語一句、何一つ合っていなかった。


 生徒会は予算を私利私欲のためには使わないし、生徒会は生徒に暴力を振るわない。

 だが、その嘘は生徒会を解散に追いやる理由には相応しかった。


「これが嘘だと暴ければ、生徒会は戻ってくるのでは?」


「ううん。暴けたとして、教育委員会に提示しない限り、PTAと教師会はしらをきり通す。だけど今は全寮制。学校から出ることは出来ない。出るにも、私たちは常に監視されている」


 俺たちは半ば諦めかけていた。

 それでも、月島さんは諦めてはいなかった。


「二人とも。私に作戦がある」


 月島さんはその作戦とやらを俺たちの耳元で、誰にも聞こえないように話した。


「月島。良くやった」


「確かに。その作戦なら教師会とPTAに一矢報いることができる」


「でも、問題はこの資料が嘘だという証拠を見つけない限り、教育委員会は話を聞いてくれないでしょう」


 月島さんの意見はもっともだ。だがこれが嘘だと証明することは不可能だ。

 だが俺には思い付いてしまった。

 俺の意見は少しばかり卑怯だが、この方法しかない。


「なあ、俺たちも嘘をつこう」


「「は!?」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る