第22話 マコト

 とりあえず少女を触手で縛り上げ地面に這いつくばらせる。


 「きゃ!?」


 「イルマくん!?その子日本人でしょ?どうして拘束するの?」


 少女に鑑定を使ったが何かに阻害されて見ることができなかった。


 「まだ信用できない。どこかの馬鹿共のせいで俺たち迷い人は暗殺者に狙われているからね」


 俺が始末した者のなかにもこいつのように鑑定できない奴もいた。


 マップでは緑色だが相手に対する敵愾心を隠ぺいするスキルもあるかもしれない。


 こいつが連中の仲間である可能性を否定できないのだ。


 「そっか……、ならしょうがないね……、わたしは後ろ向いてるから」


 あれ?まだ殺さないよ?マコトさんって結構ドライなのね。


 「ちょっと!全然しょうがなくないないわよ!勝手に殺さないでよ!」


 「お前が危険でないことを俺たちに証明しろ」


 「わたしは、何かあればコロンドの街にいる川越入間という日本人を頼れと小野君に言われてここまで来たの!」


 「そうか、小野を殺して俺のことを聞き出したのか」


 「ちっがうわよ!なんでそうなるのよ!」


 「さっきも言ったぞ?お前が危険人物でないことを証明しろ」


 簡単なことだ。俺が鑑定できるようにすればいい。


 「は?意味わかんないだけど!もういい!あなたには頼まない!だから離せ!」


 「そうか、なら仕様がないな」


 俺は少女の拘束を解き触手を操作して木々の向こうへとぶん投げた。


 「きゃーああああああ!」


 二人で少女を見送る。マコトさんは手を振っていた。


 「イルマくんは念力か何かを使えるの?」


 「見えない触手を伸ばせる」


 「触手……」


 『ポッ……』


 「お昼も食べ終わったし行こうか」


 マコトさんを背負い走り出す。


 途中でいつのまにか女になっていたマコトさんに欲情して、冒険者ギルドで休憩したのは長友には内緒だ。


 マコトさんをギルドに残し自分だけ外に出ることもできたので一人でコロンドまで戻ることにした。





 街に入り人通りの少ない路地でマコトさんをギルドから連れ出す。


 狩猟ギルドまでの道すがらコロンドの街を手をつないで案内した。


 「イルマくん!猫耳さんがいるよ!すごいすごい!」


 完全に女子である。


 つい昨日まで男だったので短い髪形をしているが、伸ばせば大和撫子然とした美人になるだろう。


 今でさえすれ違う野郎たちの視線をくぎ付けにしている。


 マコトさんはこちらの世界の食べ物にも興味があったようなので夕食は外ですることにした。


 まずいから気は進まないが一度食べれば納得するだろう。





 狩猟ギルドについたのでエマさんのもとへ直接むかう。


 「こんにちはエマさん。今日は森熊フォレストウルサスの買い取りは何頭まで出来ますか?」


 「あ!?ガキのくせに女なんか連れ込みやがって!三頭だよ!」


 (この人こんなだから結婚できないんだよな)


 『まさか……、マコトさんだけでなくエマさんも狙っているのでは?』


 (ないない)


 『これ以上増やさないでください……』


 今夜はソラのところで寝よう。





 狩猟ギルドを後にして小料理屋に入った。


 それ以来マコトさんがこの世界の食べ物に関心を示すことはなかった。


 


 


 


 


 

 

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