第261話
ふむ。
しかしあれだな。
「顔がほぼそのままのパターンがあるってことは」
ちょっと気づいてしまったぞ。
「ことは?」
「人面犬のドラゴンバージョンもあり得るのかなって」
「そこで俺をみるなよ」
俺の単なる妄想だったけど、実現する可能性があるってことだ。
やべーな、ちょっち楽しみだぞっ。
てか、俺がそのパターンじゃなくてよかった。
まあ、それはさておき。
「それじゃー狩りの続きだー」
撮影の続きをしよう。
北上さんの姿は好きな人はがっつり刺さりそうだし、しっかり撮らないとね。
俺? 個人的にはすごくありだと思うよ!
さて、撮影開始だ。
北上さんの相手は……ていうか相手もゴブリンだけど、ぶっちゃけ龍化してると火力過多にも程がある。
初めてやる龍化するわけだし、手加減ミスらないと良いけど……うっかりブレスでもしようものなら、俺とクロはともかく、中村とか太郎は余波でやばいことになりそう。
「私の番だよー。次もゴブリンなんだけど装備が違うのね。構成は盾2、槍2、弓1だよ」
そんな俺の心配をよそに、北上さんは大して気負う様子もなくゴブリンへと向かう。
「こんな感じで入ると同時に矢が飛んでくるから、それは避けるか防ぐ。以降の戦闘はー……こう、基本的には盾持ちがこっちの攻撃を防いで、その隙に槍が突いてくるね。たまに矢も飛んでくるよー」
すぐ様ゴブリンたちが攻撃を開始するわけだが、北上さんは飛んできた矢をぺしっと叩き落とし、ついで伸びてくる槍を盾でいなす。すごい余裕そう。
「盾持ちとはいえゴブリンだから、蹴りとか入れて崩すと楽かな。槍持ちも巻き込めると尚よし」
そう言ってゴブリンに蹴りを入れるが……うっかり貫通したのはご愛敬ってとこだろう。
ちゃんと吹っ飛んで後ろの槍持ちも巻き込んでるし、問題なかろうなのだ。
「ここに来るまでに、ゴブリン数体を同時に捌けるようにはなっていると思うから、落ちついて戦えば問題はないよ」
そう言うと、残ったゴブリンの首をさくっと刎ねて戦闘は終了した。
うーん、あっさり。
「こんなもんかな?」
「ばっちりっす!」
「視聴者大喜び間違いなし」
「へー、そう?」
見た目格好いいしね。
俺は……ある意味恰好いいのかもだけど、北上さんのとはベクトルが違うんだよなあ。
どっちかというと北上さんの見た目の方が一般受けするだろうし。
皆見た目違う以上はしょーがないんだけどね。
それにもし皆の見た目が同じだったら、クロのあの姿もなかったことになる。
うむ、このままでよし!
さ、次だ次!
クロか太郎かそれとも中村か。
誰からいくんかね。
「次、俺いくぜっ! ちゅーわけで俺にもカード試させてくれっ」
とか考えてたら中村がめちゃくちゃやる気になっとる。
そんなに龍化したかったのか。
確かに俺も中村の龍化後の姿はとても見てみたい。
でもね。
「いいけど中村レベルいくつさ」
「俺? 16だけど」
「残念、足らないね!」
「まじかーーーっ!!?」
レベル制限があるのじゃよ。
20以上ならんと使えんのよなー……頑張れば二月もあればいけるんでないかな、たぶん。
カード出なくて心折れなければだけど。
中村が凹んで一時行動不能になったので、その間にカードはクロにうつしておいた。
「そろそろいくぞー?」
「……おう」
今もまでちょっとダメそうだけど、まあなんとかなるだろう。
てかそんなに龍化したかったのか。アマツにお願いしたら見た目だけでも変えてくれないかなあ……むりかなあ。
こうしている間にアマツが出てこないあたり、たぶん無理なんだろうなーと思う。
まあ後で一応聞いてはみるけどさ。
「んじゃ撮るねー」
次の撮影場所であるオークの小部屋前についたので、カメラを中村へと向ける。
どうでもいいけどオークの小部屋って名称なんかやだな。入りたくない感がすごいぞ。
中村かわいそう。次は俺と言った手前いまさら嫌ともいえんだろうしなー。
まあ、その本人はそんなの気にしてはなさそうだけど。
てかカード使えなかったショックがまだ尾をひいてんな。カメラに向けた笑顔が引きつっとるぞ。
フェイスガード越しだけどなっ。
「どうもう中村ですぅ。レベル足らなくて飛竜カード付けられなかった糞雑魚ですぅ」
「すっごい卑屈になっとる」
「かわいそー」
涙目になってそう。
でも撮影は続行するよっ。
「次はやっとゴブリンゾーンから抜けて、オークが相手だよ。薄い本に出てくるタイプのオークさんじゃないから気をつけてな。噛み付いてくっぞ」
ほんとな。
中には期待してる人も居るかも知れんけど、かなり凶悪だよねここのオーク。
「見て分かる通り、かなり体格が良い……攻撃方法もそれに見合った感じで、ごり押しだぞ……こんな感じで斧を全力で振ってくるから、腕力に自信がなければ避けたほうがいいな」
ふらっと小部屋に足を踏み入れた中村に、オークの群れが襲い掛かる。
だがそのすべての攻撃を中村は躱したり、盾で浮けたり、ナイフで腕を切り落としたりと淀みなく対処していく。
中村もだいーぶ戦闘慣れてんだよなあ。
ほぼ毎日潜ってるだけある。
なんちゅーか戦い方がスマートなんだよね。
俺みたいに泥臭くないというか……もしかしてどこかで習ってたりするんだろうか?
会社の研修とかで習ってるとかありそう。儲けが半端ないだろうし、会社も全力でサポートするだろうしねえ。
「んで、こいつの厄介なところは多少のダメージでは怯まずに、攻撃仕掛けてくるところで……こう、つかみ掛かってくることもある」
初見でそれやられてめっちゃ焦ったやつだ。
ごり押しで倒しけど。
「掴まれて、さらには腕力で負けてると顔面丸かじりされるから注意な。できるだけ鍛えておいた方がいいぞ」
筋肉は裏切らない!
レベルが上がってくると誤差になってくるけど、浅い階層だと元々に筋肉量が結構ものを言うからねえ。
ポーションに余裕あるなら筋トレはまじ推奨。
筋トレ推奨しておくのは凄く良いと思う。
俺ら以外の動画とか見た感じ、ちゃんと鍛えてそうだけどね。
「防具部分は堅いから、やっぱ首とかむき出しの急所狙うといいな。当てさえすれば割と楽に倒せると思う。たださっきも言ったけど掴まれるとやべーんで、仲間はいつでも割って入れるようにはしとくこと」
そういってオークの首やら脳天にナイフを突き立てこじっていく中村。
脳天は中身がこぼれるので……今回もグロ動画満載になりそうだ。いまさらか。
「こんぐらいっかな」
「まともだ」
「だねー」
戦闘を終えた中村に対し、軽く拍手する俺と北上さん。
戦闘も説明もスムーズだし、最初意外ふざけたところがないしで、ほんとまともな動画が撮れたと思う。
普段の感じだともうちょいおちゃらけても良さそうなもんだけどね。
根が真面目なんだろうと思う。
「お前ら俺をなんだと……みろよ、あの太郎の眼差しを。キラッキラしながら俺のことみてんぞ、ちっとは見習って!」
ちょっと憤慨した様子で太郎をビッと指さす中村。
確かに太郎は中村へキラキラとした尊敬の眼差しを……尊敬?
「あれはたぶんご飯欲しいとかそんな」
「アーアー聞こえなーい!」
たんに腹減っただけっぽい。
オークがお肉に見えたのだろうか……?
ちょっとさすがにオーク肉は食わせらんないなあ。さくっと撮影終わらせてBBQ広場いくまで我慢してもらうっきゃないか。てか太郎、朝ごはん食ってきてるよな? お昼はまだまだ先だぞ。
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