第260話
ま、楽しみは後にとっておくとして、とりあえず動画の撮影をやってしまおう。
「んじゃ、ゴブリンにいこっか」
そう言って俺は小部屋へのほうへと近づいていく。
近づくにつれて中の様子が明らかになっていく、そこには10体のゴブリンが、武器を構えてこちらが中に入るのを待ち構えていた。ちょっと腰引けてるけど。
「ここからは今までの階層と違って、中にいる敵が事前にこっちを察知して待ち構えてたりする。なので不意打ちは基本出来ないと思って良い」
不意打ちは楽でよかったんだけどね。
まあ、でも扉開けてもこっち見ないってのは明らかにおかしいし、しゃーないかなーとは思ってる。
とりあえず入室っとな。
「見ての通り、一つ前のゴブリンと違って装備が良くなってるんで、向こうの攻撃は強力になるし、逆にこっちの攻撃は通り難くなるから……こんな感じで防具のない箇所を狙うように。ただやっぱゴブリンには変わりないんで、基本的な戦い方は一緒で良いよ。一応、最初は防御に重点おいてね」
入ると同時に襲い掛かってきたゴブリンを捌きながら説明を続け、ちょど良いタイミングでゴブリンの首が差し出されたので、鉈……爪? で切り落とす。なんか後ろに居た奴の首も飛んだ。 わざわざ攻撃範囲に入るとか、空気読んだ? ないよな。
「あと、傷がついてない装備はそこそこのポイントになるんで、かさ張らないのを選んで持ち帰るといいよー」
最初はうっかり傷つけちゃってたよなー……まあ、それも今となっては良い? 思い出だ。
この動画をみた人たちが、しっかり装備を持ち帰ってポイントを稼いでくれると良いな。
「いじょ」
おしまい。
「さくっと終わったな」
「まー、ゴブリンには変わりないし……」
「こいつはねー。次の階層は武器も変わるから多少ちがうんだけどねー」
基本的に前の階層と戦いかた変わらんし、さくっと終わらせた。
この鉈というか爪だけど、やたら切れ味上がってるんですっぱすっぱ切れるんだよね。
おかげでストレスなく首狩れました。
「んじゃ次は誰いきます?」
カメラを構えながら中村がそんなことを言うと、北上さんがすっと手を上げる。
「あー、じゃあ私がいこうかなー」
「うぃっす、そんじゃ北上さんお願いしまっす」
ぱっと見じゃ分からないだろうけど、なんかやる気いっぱいだなー北上さん。
なんて考えながら装備を確認している北上さんを見ていたのだけど……向こうもこちらをじっと見つめていることに気が付いた。
「ん? どうかしたっすか?」
何かあったのかな。
「私も龍化してみたいなーって」
「あ、やってみますー? 俺も他の人の見てみたいなーって思ってたんですよ」
「ん」
なるほど、そういう事か。
俺の龍化をみて北上さんもやりたくなったのか。
俺も見せて貰おうとは思っていたし、あとでなんて言わずやってもらっちゃおう。
一旦休憩所に戻って、カードを北上さんに渡すとしよう。全力で走れば1分もありゃ着くしね。さくっと戻るっぞ。
「んじゃこれどうぞ」
さくっと戻って北上さんに飛竜カードを渡す。
北上さんは受け取って、端末を操作して……ふとその手を止める。
「これ……なんか変なのあるんだけどー」
「気にしちゃだめっす」
「むぅー……じゃあ龍化するねえ」
変なのか。
たぶんアマツのあれだと思うけど……実は別のやつのがついてたりとかするんだろうか? あとでこっそり聞こうかな。たぶん撮影終わったあとに何かあるっぽいし、その時にでも。
「へーんしんっ」
「あ、掛け声はつけるんだ……」
戦隊物とか好きだったりするのだろうか。
部屋にいった感じそんな雰囲気はなかったけど……っと、それより龍化だ龍化。
果たして北上さんはどんな姿になるのやら。
北上さんが掛け声と共に龍化を発動すると、すぐにその姿が変わっていく。
身に着けていた防具は生物のよう……に?
あれ、あんま生物っぽくないぞ。
あ、でも頭部は……んんん?
「おぉぉぉ……」
「まじで俺とぜんぜん違う……普通に全身鎧着込んでるみたいだ」
「っへー。そんな見た目なったんだ?」
自分の腕や体を見ながら、そういう北上さん。
俺たちはそれにコクリと頷いて返した。
「あ、でも角はある……ありがと」
頭にある角に触れる北上さんに、中村がカメラを手渡す。
そこには龍化後の姿が収まっていて、北上さんはそれを興味深そうに眺めていた。
さて、北上さんの姿がどうなったかだけど。
まず全体的なフォルムは人間の女性から大きく変わってはいない。
俺の場合は防具が明らかに生物の甲殻とかへと変化したが、北上さんの場合は黒い金属製の鎧の様に見える。
盾の部分だけは赤色掛かった透明な甲殻っぽくなっているので、俺と色違いみたいになってるね。
爪? の部分は俺とほぼ同じかなー。
あと特徴的なのは頭部かな。羊のそれに似た大きな角がついている。あと髪の毛がしっかりあるんだよね……ヘルメットどこいったし。角になったのかな。顔に関しては生物というよりは……機械の龍みたいな感じ。かなり恰好良いと思う。
翼はない。
その代わりにヒラヒラした布っぽいのが揺れている。あれで飛べるのかな? ……まあ飛べるんだろうけど。
ほんと俺と大分姿違うなあ。
「んー? 島津くんと違ってフェイスガードはずれるっぽい」
「おろ」
まじかよ。
俺なんて顔と一体化してたと言うのに……。
「どうだっ」
少しカチャカチャとフェイスガードをいじっていた北上さんだけど、そういうと同時にフェイスガードを取り外す。
フェイスガードの下から出てきたのは、ほぼ人間といって良いものであった。
「顔は人の部分がかなり残ってますね。知ってる人なら北上さんだって分かるぐらいには」
てか、これほぼ本人の顔だな!
カメラ映りとか気にして考慮してくれたのだろうか。
まあ、とはいっても。
「おー。とりあえず普段はフェイスガードつけておくねー」
「それが良いっすね」
「俺もそう思う」
映すわきゃねーのですけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます