第166話

さて、入札の方だけど。

今現在いくら以上なら買えるのかと言った情報は分からないが、最高額や入札数は分かる。

そして最高額は現在20万を超え、入札数は億を超えていた……多すぎない?

それだけ数を確保しようとしてるって事だろうか?



入札の時間は割と短い。

数は多いけど、価値は一番低い低層のポーションということで、開始から30分ぐらいで入札は締め切りとなる。


んで、結果のほうは……最高額が3年のポーションに25万、で平均額が……。


「わ、5万円いったし!?」


思った以上に高い。

一人何本出したか知らないけど、これ数百万ぐらい儲けたんじゃなかろうか。

しっかし、思ったより高額だったなー。


んー……。


「そっか、海外はまだポーション入手できないから……次は10階のポーションか……これもいくらになるのかな。確か必要ポイントで言ったら5階の25倍とかですよね?」


海外組が思ったより本気出してるのか。

そう言えば自国じゃまだ入手出来ないところばかりだっけ?アメリカとイギリスはそうでもないっぽいけど。


しかし5階のポーションでこれとか、10階以降のポーションがいくらになるのか想像するだけで恐ろしいものがある。



「確かそうだねー……あ、でもこれも出品数凄いよ。3万だってー」


「結構出てますね……他の隊員さんも頑張ってましたもんね」


「ねー」


この数であれば、そこまで高くならない……か?

いやでも一気に数が減ったしなあ……数が少ない分競争が激しくなって高くなるかも知れない。そんな予感がする。




「500万とかやばい」


予感、当たっちゃった。

1本売れただけでこれやばいな。


中村も数本出してたはずだから……今頃小躍りしてそうだな。



「……出しておけば良かったかなー?」


およ?


「出してなかったんですか?」


「うん、私たちは15階のしか出してないんだー」


俺の言葉にちょっと残念そうな表情を浮かべた北上さん。


500万だもんなー。

100本ぐらいだしておけば、5憶だよ5憶。

宝くじ当たった並みの金額だもんね、そりゃ残念がるわ。


……ん?15階って確かまだあの8人しか到達してないんじゃなかったっけ。

それなら競争激しくなってさらに高額になりそうなもんだけど……。



「1種32個の合計128個……一人あたり16個かあ」


何個出したのかなーと確認したら、割と少なめだった。

これ絶対高くなるやつだ。


怪我も病気も大概のものは治るし、9年若返るし、毒も平気になる?

こんなの絶対金持ってる人ぶっこむじゃん。





「ど、どどど、どうしよう島津くん」


案の定というか、予想以上に高くなった。


具体的に言うと人生10回は遊んで暮らせそうな額……んで、そんな額を見てしまった北上さんはと言うと、端末をこっちに見せながらおたおたしてる。可愛い。


「お、落ち着いて……ち、近い、近いからっ」


てか、近いよっ。

嬉しいけど人前ですから、人前ぇっ!


クロ、潰れて変な顔になってるから!




「見たこと無い額になった……」


そんな感じでしばらくおたおたしていたのだけど、ようやっと落ち着いてくれた。落ち着いてくれたのかな?

今は講座の残高を見て固まってるだけかも知れない。


てかこれ、周りの人に出品者だってもろばれしてるよな。


今のところ誰も何も言って来ないけど……うっすらと視線は感じる。

なるべく見ないようにしてくれているらしいけど、さてどうなるか。


「こんな大金……怖い。島津くんのところに引き籠りたい……」


あー。


「まじめな話、落ち着くまでそれもありですね……施設は俺がアップグレート予定ですし、あとは個室をどうにかすれば行けるんじゃないすか?」


「うん……終わったらみてみるよー……」


うちのダンジョンに籠ればコンタクト取りようが無いしね。

自衛隊関係の人しか入れないし、自衛隊経由でコンタクト取ろうとしてもブロックされるか、間に誰かしら偉い人を挟むことになるし。


あとは施設をアップグレートして、自分たち専用の部屋?でも作っちゃえば完璧だ。


食事もとれるし寝る部屋だってある。

衣料とかが無いけど……アップグレートしたら何か出るんじゃないかなと思う。

オークション終わったら一度本気で出来るところまで全部アップグレートしてしまおうか。




「……これ、20階のはいくらになるんだろ」



そうこうしている内に、ついに俺が出したポーションの番がやってきた。

どうも午前中にポーション系はすべて終わらせてしまう予定らしい。



俺が出したポーションは当然ながら他に出す人はいない。

各種1個しか出していない……つまり数がめちゃくちゃ限られているわけで、値段は間違いなくはね上がるだろう……額によっては俺も引き籠らないといけないな。


まあ、今でも半分引き籠ってるようなもんだけど!





「さて、次がポーション系最後の出品となります……20階で入手可能なポーション、4種です」


台上に乗ったポーションは4つのみ。

その少なさに会場のざわめきが多くなる。


……隣に座ってる人たちから、ぽつりとこれだけか……と呟きが聞こえた。


いやー……本当はもっと大量に出せるんだけどね。最初だから一番良いのは少なめにと言われちゃってねえ……もっと出せっていう人用に例の動画使っていいか?って聞かれたので、了承しといたから直接文句言うような人はおらんだろうけど。



「個数が少ないのはその入手難易度のためです。……こちらの映像をご覧ください!」


(うおおおおい!ここで映すんかい!?)


「……ほんとごめんねー」


会場の人ばっちり見てるじゃん!てかあれか、会場に居る人ってもしかして全員お金もち???この映像もしかして会場以外には流してないのか?

もー……顔は映ってないから良いけどさあっ。



いや、待て、それより北上さんが凹んだじゃん!


俺としては本当にまったく気にして無いんだけど、北上さんとしてはそうもいかないのだろう。


「いやいや、北上さんの件がなくてもいずれ対峙してましたし、少し早いか遅いかって話なだけですよ」


「それにあの時戦ったからこうして一緒にオークションに参加出来てる訳ですし、俺的にはまったく問題なしっす」


こういう時は本音でゴリ押しするのだ!


「そっかー……ありがとね」


よし!笑ってくれた!


もー、まじで勘弁してくれ……ちょっと距離が近付いた感があるから良いけどさあ……。


あー……もう、そうこうしている内に入札始まってるし。

おっそろしい勢いで値段が釣り上がっていってるよ……。





「額がやばい……」


「もう引きこもるしかないねー」


貯金が倍ぐらいになったぞ。

いやー……お金持ってる人は持ってるんだねえ。


使い道に困るなこれ……下手に使いすぎると知らない親戚が増えそうだ。


……まあ、あとで考えるべ。


「次は……カードだ」


それよりも次に集中しないといけない。

うっかり入札逃したりしたら洒落にならないし。


「買うのー?」


「持ってないのは全部……って言いたい所なんですけど、ほらシークレットが残っているんで、あまりお金とか手持ちのカード使っちゃうと……ってな訳で、とりあえずこいつだけ落とそうかなーと」


そう言うと俺は北上さんに落とす予定のカードをみせる。


カードをみて少しの間首を傾げていた北上さんだが、合点がいったのか胸の前でぽんっと手を合わせる。


「うー?……あ!そっか、島津くん達には良いかもだねー」


「そうなんですよね。こいつがあれば倒せるかも知れないんで……なので絶対落としたいんすよね」


「おー……応援ぐらいしか出来ないけど、がんばだよー」


シーサーペント攻略には恐らく必須となるであろうカードだ。

多少まわりのひんしゅく買ってでも落とすつもりである。


カードは俺の目当ての物だけでは無く、他にも何枚も出品されていた。

さすがに潜る人数が多いと出るカードも増えるし、手放して良いと考える人も増えるのだ。


だけどそれらには手は出さない。我慢である。


どのカードも何かのカードと交換、それに追加で金銭とかで落札されていくので、もし俺が落とそうとするとカードを放出しなきゃいけなくなる。


今のところ極小ダンジョンにしか出ないモンスターも居るっぽいし、目当てのカードがくるまで出来るだけ放出したくないのだ。


「続きましては特大ダンジョンの12階に出没するモンスター……通称氷童のカードです」


そしてついに俺の目当てのカードがきた。

名前から分かるとおり、氷に関係するモンスターだ。

そのカードの効果は……。



「出品者からの一言は……「辺り一面を氷付けにしてくる敵から出たカードです。靴にセットするカードで、効果は靴に触れた周囲を氷付けにする……です。蹴った相手も凍るので非常に強力ですが、歩きにくいです、ただひたすらに歩きにくいです。まわりの皆からも滑って歩きづらいとか、靴がへばりつくとか文句を言われました……それでも良ければ入札をお願いします」……ええと、若干難のある高価ではありますが、強力なのは間違い有りません!」


「希望はレベル2以上のカード1枚と交換、槍の攻撃性能が上がるカードであれば優先します。それか金銭です……それでは入札を開始致します!」


えー……出品者からの一言を聞くと微妙な感じがするが、俺たちにとっては有用なカードのはずである。

気合い入れて落とそう。




……外れカードじゃないよね?


「……ちょっと嫌な予感がする。でも落としておこう……ゴブリン(槍)カードいっぱいあるし、行けるっしょ……一応トロール以下のカードもリストに入れておくか。一言は……ゴブリン(槍)は3枚出しますっと」


「わー、ぶっこんだねー」


「確実に落としておきたいんで」


幸いなことに出品者の希望にぴったりなカードが手元にあったりする。

俺とクロも使わないから余ってるんだよね。

それに追加で狩って置いた分もあるし、3枚出しても惜しくは無い。


これがだめでも15階層以降のカードだってあるし、たぶんいけるだろう。


さあ、入札だぞっと。




「おっと、これはー??……なんとゴブリン(槍)カード3枚がでました!」


「……いざ落とす側になると、煽るの止めて欲しくなるなあ」


「確かにそうねー」


ぽちっと押した直後に司会さんが反応した。


そしてそのまま他にありませんかー?とか、おおっとここで大金があ!とかあおり始めた。


自分が出品する側だと嬉しいんだけどね、落とす側になると止めてくれえ、となる。



まあ、問題なく落とせたわけですが。


さすがにカード3枚には勝てなかったらしい。

何人か粘ってはいたみたいだけど、割と直ぐ諦めて、締め切り時間前にカウントして終わったよ。


「おしおし、確保できた」


「これで攻略進みそうだねー」


いやー、ほんとだねえ。

あいつのせいでどれだけ足止め食らったことか……。


「あとは宝石も落とせば完璧です」


まあ、まだ宝石が残ってるんですけどね。

こっちはどう落とすか悩むなあ……と言っても出せるのはカードかお金ぐらいだけど。



「次は装備かなー」


まあ、宝石の出番はまだ先ぽいんですけどね。


装備に関しては俺もこっそり出品してたりするので、ちょっと楽しみなんだよねー。

何せ装備の紹介用にわざわざ動画まで撮ったかんね!


出演したの俺じゃないけどな!

ポーションの数を限定する代わりに……って事でちょっとお願いしてみたのだ。


まあ、本人らも乗り気だったし、問題なかろうなのだ。

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