第152話

結局落ち着くまで少し掛かってしまった。


「んで、どんな装備にするのさ?メーカーさんからも販売始まってるみたいだけど」


コンビニで買ったホットなお茶を飲みながら、中村に装備の要望を聞いてみる。


「あー、そうだな……出来ればダンジョンの素材を使った装備が欲しいけどさ」


「けど?」


そう中村は言葉を句切ると、チラリと俺の様子を伺うように視線を向け、言葉を続けた。


「……島津のお勧めは?」


「んー?……中村のお財布の中身次第じゃない?一応装備が用意出来ない場合は支給されるって話だし、無理の無い範囲で揃えれば良いんでない?」


言ってなかったけど、装備品は一応支給される事になっている。

ただ必要最低限の装備ではあるので、自分で装備を買う人が多いようだ。


モンスターの素材で作った装備とかが存在するもんで、そりゃどうせ使うならそっちの方が良いよねって話である。


「支給品で十分戦えると思うか?」


「そりゃー……いや、そんなの俺に聞かれても」


ついノリで答える所だった。

その辺りについては実際に戦っている人じゃ無いと分からない事だし、適当に誤魔化しておこう。

いずれ潜っていることを話すつもりではあるんだけどね。

もうちょっと落ち着いてからかなー。


「もうダンジョン潜ってるんだろ?」


おっとお?

何か色々考えていたらいきなりぶっ込んできたぞっ。


「その経験から言ってどうなんだ?」


これは……気付いてるか。気付いてるね。


……首相達のマッチョ化と俺のマッチョ化からばれたかな?あと家の近くにダンジョン出来てるし……興味がある以上はどこにあるかぐらいは調べているだろう。



まあ、良いか。

その内気付かなくてもバラすつもりではあったしね。

言ってしまえーなのだ。


「……ダンジョンの素材を使っていなくても、後々強化出来るから問題はないよ。ただ最初は弱いのと、強化しても最終的にはカードが無いと見劣りするかも知れない。ダンジョンの素材を使った装備は強いけど強化しづらいから、最初は強いけど最終的にはカード積みまくった装備に追い抜かれると思う」


俺が話し始めると、中村は黙って頷きながら聞いていた。

ダンジョン潜ってまーすってカミングアウトした訳だけど、結構冷静な反応だよね。


下手に騒がれるよりはずっと良いのだけど、これはこれでちょっぴり寂しい気もする。


「あとはダンジョン内でポイント使って購入出来る装備もある。こっちも強いけど強化しづらいのと、最終的には追い抜かれるのは同じだね。こっちなら俺が融通出来るよ」


ポイントはドラゴンのおかげでまた増えたからね。

ぶっちゃけ中村一人であれば、20階層の装備を買って、ついでにドラゴンの素材で強化してもまだまだ余裕なぐらいポイントはある。


「島津は何を使ってるんだ?」


「俺は市販の一般的な装備を強化して使ってる。で、最近はそこに追加でダンジョンの素材を使った追加装甲っぽいの付けてる」


あの時は今みたいにダンジョンの素材を使った装備!とか無かったからね。

あれしか選択肢が無かったと言える……まあ、もっと探したら他にも良い装備あったかもだけどね。


でも十分強く育ったし、後悔とかはない。


「結局はカードを揃えれるか否かと、お財布に余裕があるか、ダンジョン内で使えるポイントを稼げるかで決まるかな。カードって集めるの滅茶苦茶大変なんだよね……だから、強い装備を購入出来るようになったら、その度に買い替えるのも手だと思う」


「金はねえな……ポイントってのはモンスター倒すともらえる?」


「そそ。あとで説明されると思うよ」


カードは俺たちも揃えきってるとは言えないからなあ……相当スロット余ってるんよね。



てか、中村にかなり話しちゃった訳だけど、まったく情報規制されてる感じがない。

ほぼほぼ無くしちゃったと見て良いのかな、これは。


まあ、説明するのが楽になるので助かるけど……アマツ的にはどうなんだろうね。

現状を見るに帰省無くす感じで動いている様だけど。



さて、あと何か言うことあったかなー……あ、そうだ。


「……個人的には敵の攻撃食らうとくっそ痛いから、最初は強い装備で行ったほうが良いかもね」


「なるほど、ありがとな。参考にするよ」


死なないだけで怪我はするし、もちろんくっそ痛い。

出来るだけ痛くないに越したことはないだろう。



「とりあえず一通り見てみる?もしかすると絶対にこれが良い!ってのがあるかもだよ」


「そうだな。ってかそれ目的でここまで来たんだからな!よっしゃ行くべ!」


とりあえずざっと説明はしたので後は店をまわって決めて貰おう。

何軒か回る予定だし、あまり遅くなると隊員さん達との食事に遅れてしまう。



「んじゃ、一件目はここ」


「ミリタリーショップ?」


「そそ、古いのだけど本物もあったりするんだよ。俺が使ってるのもアメちゃんの装備一式だし」


「っへー!」


まず向かったのは俺が装備を買ったミリタリーショップだ。

運が良ければまた一式揃う可能性もあるし、お値段もそこそこでお財布に優しい。

それでいて性能も悪くない……まあ、最初はダンジョンで買った装備や、素材を使った装備には負けるだろうけどね。


「おおー!」


「……さすがにエアガンじゃ倒せないよ?」


「分かってるって!ちょっと気になっただけだってば」


店に入るなり歓声を上げた中村が向かったのは……ガンコーナーだった。

……まあ気持ちは分からんでも無いのだけどね。


とりあえず中村は放置して……どこにあるか分からないから店員さんに聞くとするか。

店員さーん、かむひあー。




「申し訳ありません。当店にある在庫はこちらのみでして……」


「ありゃ」


在庫が無かった!

いや、あるにはある……でも種類がバラバラだ。

さすがにこれじゃなあ……とあたりを見渡してみると、店の隅にある物を見つけた。


「あ、でも盾はあるね」


俺が使っているのと同じ盾だ。


「これ、かなり頑丈だから良いよ」


「まじか、これ島津が使ってるやつ?」


「そそ」


これは買っても良いかも知れない。

と言うわけで中村にもお勧めしておく。


「それじゃ、これは買っちゃうか」


一応買う前に、支給品と変わらないかもよ?とは言っておいた。

ただそれならそれで別に構わない、との事だったので盾を購入して店を出た。


「次はー……駅の反対側か」


「遠いな」


「空いてるところがそこしか無かったんかね」


次はモンスターの素材を使った装備を扱っているお店に行こう。


トライアルに当選した人限定で装備を買えるんだよね。

誰でも買える様にしちゃうと、本当に必要な人にまわらないからと配慮したそうな。


ちなみに入店自体もトライアルに当選した人限定だ。

そうじゃないと一目見ようとする人やマスコミで大変そうなことになるだろうしね。



あとは転売も不可ね。

装備と買った人の情報は紐付けされていて、もし転売がばれたら事情を確認の上で、場合によってはトライアルの当選は取り消しになる。

それと今後一切お店で装備を買えなくなる措置もとるとか何とか。


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