第98話

行きには存在していなかった、居るはずの無い人物が居る……普通であれば驚くであろう出来事に、笹森さんも宇佐見さんも慌てること無く、笑みを浮かべ頭を下げる。


「この国の総理大臣を勤めています、笹森です。あなたがダンジョンの管理者殿でしょうか?」


「そうだよ!アマツって言います、よろしくねー!」


アマツのノリは相変わらずだねえ。

相手が誰でも変わりない……いや、大分テンション高めか?


これから一般開放も待っているとなれば、そりゃーアマツの立場からしたらテンション上がるわなー。


「島津くんもありがとね!思ったよりずっと早く会えたよー」


「いえいえー……あ、じゃあ俺、都丸さん達の方に応援に行ってきますね」


良いってことよー……とりあえず難しい話とか政治的な話には関わりたく無いので、あとは3人に任せて逃げ……じゃなくて都丸さんのお手伝いに行くとしよう。


「島津さん、ありがとうございました。後は我々にお任せ下さい」


「ありがとよ。本当に助かった」


3人を置いて、元来た道を戻ろうとする俺に礼を言う二人。


なんだかんだでいい人達だったな。

最初はあまりに偉い人達だったので、嫌がっていたけど……今後会うことはもう無いんだと思うと少し寂しい気持ちもある。


「良い結果期待してますっ!では」


二人にはぜひアマツとの交渉を頑張って欲しい。

俺はそう言って手を振ると、元来た道を引き返して行った。








「手伝いに来ましたよー」


「助かる!」


その後、都丸さん達と合流した俺達ははお手伝いと言うことで、ゴブリンを押さえる役を担当することにした。


ネズミやウサギならともかく、さすがにゴブリン相手となると腕力的に大差がある訳でもなく、押さえつけるのに苦労していたらしい。


それからはゴブリン狩りも順調に進み、夕方には全てのお偉いさんがチュートリアルを突破する事が出来た。






「それじゃー、皆さんお疲れさまでしたー。お肉はいくらでも追加できるんでガンガン食っちゃってください。かんぱーい」


お偉いさんも無事チュートリアル突破できたと言うことで、慰労会開催することになった。


場所はBBQ広場である。

戻ってきたお偉いさんと目が合って気まずい……なんてことも避けられるだろう。


あ、いちおう慰労会やるってことは伝えてあるよ?

ただアマツとの交渉があるってんで出られそうに無いとの事だ。


「このスープやたらと旨いなぁ」


「ちょっ、それ俺が育ててた肉っすよぉ」


「がはは、早い者勝ちだっ」


「トウモロコシうまっ」


「今朝採れた奴ですからねー」


皆開放感からか楽しんでいるようで何より。

お酒も入っているから尚更だね。


あ、BBQ広場だけどね、施設をグレードアップしたからか飲み物も大量に追加されてたんだよね。


ほとんどがお酒だけど、ノンアルコールもそれなり種類有るのでありがたい。


黒くてシュワシュワしたのが大好きです。



お肉もりもり食べてお腹も膨れてきたところで、今後のことについてちょっと聞いてみた。


「それじゃ暫くは攻略に集中するんですね」


「ああ、チュートリアル突破した隊員も増えてきているしな、俺達はレベル上げと階層更新に専念しろとの事だ」


都丸さん達も攻略に専念するらしい。

他の隊員の手伝いは、新たにチュートリアル突破した隊員が担当するそうな。


俺もそれが良いと思う。深い階層に行かないとポイントあんま稼げないしね。


「島津さんには新しい階層に行くときに、応援で来て貰いたい。それ以外は基本的に自由に攻略してくれて問題ない」


おや、そうなのか。

俺としては有難い話である。


たぶんゴブリン(剣)の階層は数日で行けるとして、その次の階層から難易度ゴリゴリ上がっていくし、適正人数でも1週間は攻略に掛かるんじゃないかな……?


その間はこっちも自由に攻略出来ると言うことだ。



まあ、無理すればもっと早いペース行けるだろうけど、敵が本当にヤバくなってくからねえ。


特にオーク以降はやばい……10匹相手にして無傷っての守ってくれると良いけど。




「島津くん、土日って暇なのー?」


おう?

都丸さんの話を聞いて色々考えてたら、北上さんが話し掛けてきましたよっ。


「今週末は暇ですね。来週末は麦の収穫の手伝いするんであれですけど」


畑の手伝い無ければ基本的に暇なのです。

ダンジョンも毎日潜らなきゃダメって訳じゃないしね。

他に予定なければ潜るけど。


「お、そっかそっか。じゃあキャンプしてみるー?」


「おお」


「あ、いいっすね!」


この間話してた奴だね。

このBBQ広場でキャンプしたいねーってお話。

あの場だけの話じゃ無くて、きっちりやるつもりだったらしい。やったね。


「なんだなんだ、何の話しだ?」


「どこか行くんですか?」


おう、他の隊員さんも食い付いてきたぞ。


とりあえず斯く斯く云々とキャンプの話を皆にも教えよう。





「なるほど、ここでキャンプか」


「川も湖も追加されたし、船とかの貸し出しもやってるんですよ」


なんか皆割と乗り気だぞ。

普段から訓練でキャンプっぽいことしてそうなイメージあるけど、そう言う訳でもないんかな?


「なにっ……行きたい……行きたいが、嫁さんが何て言うかだなあ」


なんて?


気のせいかな……太田さんに嫁さんが居るように聞こえたんだけど。ははは、まさかねー。


「確かにそうっすねえ」


「むぅ……」


まじかよ。

大野さんと田浦さんもかよ。


「えぇっ!?皆さん結婚してるんですかっ??」


「どう言う意味だっ」


「すんませんっ」


思わず声に出しちゃったじゃないかい。


「ははは……ここに居る男性は皆さん既婚者ですよ」


まじか。

皆既婚とかすごいな…………あれ?男性はってことは?




「…………あっ」


「なーに?」


「な、なななんでもないですっ」


目が怖い。


年頃の女性この手の話はあかんてっ。

太田さんのばかーっ。

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