第32話


「いよっし、今日の目標はクロのバックパック買うまでポイントを貯める! で行こう」


剥ぎ取りに時間掛かってしまうけど、午前中いっぱいあれば余裕でたまるポイントだと思う。

部屋に行かなくても通路を徘徊しているだけで行けちゃうんじゃないかな?







「1日で10000以上貯まるのすごいな」


いけました。


かさ張る鎧と兜は放置して、重ねてバックパックに突っ込めるナイフや盾、それに手甲と脚絆だけ集めまくってみた。


その結果として午前中いっぱい掛けて、大体16000ポイント分の装備を集めることに成功した。


これならクロのバッグを買って、さらには装備の強化まで出来てしまう。

本当に装備引っぺがして売るのおいしいな。


とりあえず10000分をポイントに変換し、残りは容量チェック用に取っておこう。


しかし、こうも美味しいと勿体ない事をしたなーとも思う。

普通のゴブリン、あいつらもしょぼいナイフだけど一応装備持ってたんだよね。


「普通のゴブリンのナイフも売れたんだろうなあ……」


あれだけの数を狩ったんだ、一部だけでも持ち帰っていれば俺用の尻尾も買えていたかも知れない……そうだ、尻尾買わないといけない。



「ま、とりあえずクロのバックパック買っちゃおう。 どれにする?」


でも、まずはクロのバックパックを買うのが先だ。


ペット用のバックパックは結構種類がある。俺はクロに端末を見せ、どれが良いか選んでもらうことにした。


クロはしばらく画面をスクロールしていたかと思うと、クロがつけているペット用の装備、それと似た色のバックパックを前足でぺしっと押さえた。


装備に合わせるとかクロ、結構見た目にも気を使っているんだね……。


「購入っと」


とりあえず購入っとな。


「背負える?」


箱を開けてクロにバックパックを手渡す。


人間だったら背負うというのは簡単な行為だけど、猫にそれが出来るかはわからない。


上手くいかないようだったら手伝おう。 そう思いクロの様子を眺めていたが、クロはまず片腕を通し、体を横にくるんと転がるともう片方の腕も器用に通してしまう。


「器用だなあ……じゃあ容量チェックしてみよっか」


手伝えなかったのはちょっと残念だけど、これならクロがバックパック運用しても問題はなさそうだね。

あとは容量が実際どれぐらいなのかだけど。 容量拡張(20L)て書いてあるぐらいなんだから、元のやつに対して追加で20Lはいるってことだろう。


とりあえず余りかさ張らない手甲を入れてみようかな。


「ぱっと見は10セットぐらい入りそうだけど……」


クロが選んだバックパックの大きさは2Lのペットボトルが2本は入るかなー?といったぐらいだ。

手甲は重ねるとかなりコンパクトになるので、10セットは入るんじゃないかなと思う。見た目的にはね?


「おお、入る入る……」


10セットを両手でつかみ、ぐいっとバックパックに押し込むが、余裕で入っていく。


それならばとさらに同量をつかみ、突っ込んでみる。


「ま、まだ入るの……?」


まだまだ余裕そうだ。

なんかこう、奥に空間があってずずず……って感じで入っていく感じ。


「すごいな、本当に拡張されてるんだ」


結局クロのバックパックは手甲を50セット入れたところで満杯となった。


手甲をポイントに変換して俺のバックパックも容量がかなりアップしたので、今後の狩りでは大量に装備を持ち帰りポイントを集めることが出来るだろう。


一通り強化が終わるまでは多少時間が掛かるだろうけど、一度強化しきってしまえば後はレベルが上がるたびに少しずつ強化するだけである。

そうなれば施設にポイントを回したりと色々出来るようになるはずだ。


ポイントで悩んでいたのが一気に解決しそうですごく嬉しい。


「よっし、さっそく行こうか?」


それに何よりクロが嬉しそうなのが良い。


クロは装備はともかくバックパックはかなり気に入ったらしく、俺の声に嬉しそうににゃーんと返事をすると、尻尾をぴんと立て、歩き始める。






そしてそれから1週間が経った。


「やっと強化全部終わったあ」


端末の操作を終え、ふいーとため息をつく俺。

思ったよりも全部強化するまで時間が掛かってしまった。


「途中で要求ポイント増えたのが痛かった……」


時間が掛かった理由としては改造に必要となるポイントが途中で上がったからである。

最初は全て500だったのが2500に、今は12500となっている。


さすがに上がりすぎじゃ?と思ったが、これには一応理由があった。


このダンジョンは本来4人で潜る前提のダンジョンだ。

そこを俺とクロは二人で潜っている上に、安全マージンを取るためレベルも限界まで上げている。


アマツに聞いたが、本来は今の階層=レベルぐらいが丁度良いとのことだった。

12500ポイントというのは10階層以降であれば、楽に稼げるポイントだったりする。


まあ、それを聞いても安全マージンを無くす選択は取るつもりは無い。

いくら死なないと言ってもね。




それで強化が完了した装備の状態についてだけど。


武器は重量を15kgぐらいまで上げ、刃渡りを50cmとした。

刃渡りはもう少し長くしたかったのだけど、50cm以上伸ばせなかったんだよねー。


たぶんこれはダンジョンの制限に引っかかってると思う。

ほかのダンジョンに行けば刃渡りを伸ばせるかも知れないけど、そうするとこのダンジョンに武器持ち込めなくなっちゃうよね。 ってことで刃渡りについてはあきらめた。


それ以外はひたすら強度と切れ味上げまくったよ。

おかげで今なら鉄板とか切り裂けると思う。


防具については盾だけ重量を上げて、それ以外は基本的に対靭性と対衝撃性を上げた。

靴だけは武器としても使うので、硬くなるように強度も上げている。

プロテクターもそうだね。


靴とかたぶん車にひかれても平気なぐらい丈夫なってると思う。


クロについては武器は力場の強度を上げまくって、ついでに切れ味をあげておいた。

射程はデフォルトからそれ以上伸びなかったのでそのままである。


防具に関しては俺と同じで対靭性と対衝撃性を上げた。



あとはバックパックの容量も限界まであげてある。


俺のは元が40Lで拡張分が65L。

クロのは元が5Lで拡張分が60Lね。


ちなみに俺のレベルは13でクロは12である。




で、そんな風にいい感じに強化を終えた俺とクロだけど。

次の階層に行くため、扉の前で準備中だったりする。


とりあえずポーションを事前に飲んでおいて、バックパックは置いてっと……そういやこのバックパックは戦闘中つけてないけど、レベル上がるんだよな。


ちょっと不思議だけど背負ったまま戦ってポーション割れたら困るしな、たぶんアマツが気をきかせてくれているのだろう。


「さって、扉の先行ってみようか?」


俺の言葉を聞いて……というか聞く前から、クロは扉の横で待機していた。


尻尾を立てて、待っているその姿はすごく楽しそうである。

バックパックを買ってからと言うもの、クロは常にどこか楽しげだ。


よほど気に入ったのだろう、寝るときも常に側に置いてあるしね……そこまで気に入って貰えると買った方も嬉しくなるという物だ。


俺の尻尾がピンと立つのも仕方の無いことである。



「次はなんだろうね?」


ゴブリン、ちょっといい装備のゴブリンと続いて次は何がでるんだろうか?

これでまたゴブリンだったら笑っちゃうけどなー。


なんて考えながら俺はそっと扉を開けた。



「何が出るか――」



扉をあけたその直後ピュンッと風を切る音がしたかと思うと、俺の顔面目掛けて何かが飛んできた。

それは咄嗟に身を屈めた俺のヘルメットにあたり、明後日の方向へと飛んでいく。


「――なああぁぁっ!??」



扉の中にいたのはまたしてもゴブリンだった。

今までと違うのは5体いること。そしてその内の1体が弓を持っていることだろう。


「はっ? 弓ぃ!?」


先ほど飛んできたのはこいつが放った矢だったのだ。


少しよけるタイミングが遅ければ顔面にジャストミートしていた。

さっきはゴブリンだったら笑えるとか言ったけど、笑えないわっ。

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