第19話

「まず、改めてチュートリアル突破おめでとう。 まさかソロで突破する者が早々に出るとは思わなかったよ」


「いやー……ははは」


うんまあ、普通は複数人でやるもんだよね。


でもあの状態じゃ一人で行くしかないからねえ。

下手に助けを求めても同じレベルになるまでどれだけ時間掛かるんだって話だし、何より情報が出回ったりとかさ、それで結果的にダンジョン封鎖とかになってしまったら目も当てられない。


「そんな君にはプレゼントがあるんだ」


何ですと。


やったぜ、一人で頑張った甲斐があった!



「ありがとうございますー……カード?」


……と思ったんだけどさ、渡されたのはただのカードだった。 描いてある絵柄からして今まで戦った敵のかな……。


「そう、カードだよ。 1階層から5階層までのモンスターのカードさ」


「あ、ありがとうございます……?」


やっぱそうだった。

てかこれ貰ってどうしろと……?


「カード貰ってどうすれば?って顔しているね」


「え、あ、いや……そ、そんなことないデスヨ」


oh、ばれてやがる。


ちょっとやばっと思ったけど、アマツは何故か楽しそうである。せーふせーふ。



「ははは! ……解放されるダンジョンの機能の中に、カードを使って装備や自身を強化出来る機能があるんだ。そうそうカード自体は今後敵を倒した際に手に入るようになってるよ。 昨日渡した端末はまだ見てないのかな? ま、カードについては後ほど説明するとして」


まじか。

そんな機能あるのか……何かこう、ゲームみたいだね?

カード集める要素とか特に。


まあ、楽しそうだから俺としては大歓迎だ。


後で説明してくれるそうだから、その時ちゃんと聞いておこうと思う。




「まずここが何なのか、なぜ出来たのかについて話そう」


お、確かに気になる。

大体なんで俺んちの納屋に出来たのかとかさー……いや、そのおかげで助かったんだけどね。気になるには気になるのだ。


「このダンジョンは私が……いや、我々が作ったものだ。 君達がダンジョンと聞いて思い浮かべる物。そう、ゲームなどに出て来るダンジョンと似たような物と思ってくれて良い。 ここはそう言ったゲームの中に存在するダンジョンを実現したものだ」


ゲームみたいと思ったらゲームのダンジョンを実現とな?

なんかちょっとファンタジーにSFが入ってきたぞ……。


「何故作った?だが……我々は娯楽には目が無くてね」


「は、はぁ……?」


んん?

急に話が飛んだ……?


「様々な世界の娯楽を楽しむことを趣味としているのだよ。 この世界の娯楽は実に素晴らしい、量と質共に他を凌駕している……!」


「あ、ありがとうございます」


「娯楽を楽しむ為には対価が必要だと我々は考えている。 この世界の娯楽を楽しむ為に我々が用意した対価……それがこのダンジョンだ。 ここでは君達の世界には無いが望まれている物が手に入る。 それに、好きだろう? こう言うのは」


「ええ、まあ確かに……好きです」


そゆことですかい。

律儀と言うか何というか……何となく俺達の作ったダンジョンを楽しんで欲しい!的な気持ちがありそうな気がしなくもない。


「ちなみにここに出来たのは偶然だよ、場所は全部ランダムで選んでいるからね」


「まじですか」


すっごい偶然ですね。

いや、まじで。


ランダムってことは別に人が住んでいる所限定ではないでしょ? 森とか山とか諸々含めた中から、うちの納屋が選ばれたって事だし……運がいいとかそう言うレベルじゃない気がする。


いやまて、それ下手すりゃ湖の中に出来たりとかもしたんじゃ……? だ、大丈夫かな、このダンジョンマスター。



「それじゃ項目の説明に入ろうか。まずはカードから……ちょっと端末起動してみてくれるかい……ああ、起動って言えば大丈夫だよ」


あ、あれさっきので終わり? ……後で気になる事があれば聞けばいっか。


それよりも端末起動しないとだ。

気が付いたら電源?落ちててさ、再起動の仕方が分からなかったんだよな。


んじゃ、起動っと。


「で、カードの項目と改造の項目どちらからでも行けるんだけど……そうだね、改造の項目からいこうか」


「はい……おぉっ、これって私が今着けている装備ですか?」


改造の項目をタップすると、画面にマネキンっぽいのが表示されて、そいつが着けている装備が今俺が着けているのと同じっぽいんだよね。 表示されてる名称も同じだし。



「そうだよ。 装備の名称の下に枠があるだろう? それがカードをセット出来るスロットになっているんだ」


やっぱ俺の装備か。

で、スロットとな……確かにあるね。あるけどー……。



「おー……あの、装備によってスロットの数が違う見たいなんですけど……」


「ああ、それはね。 装備も使っていく内にレベルが上がっていくのさ、レベルが高いほどスロットの数も増えていくんだ」


……なるほどね、確かによく見たら名称の横にレベル書いてあったよ。

ちなみに鉈と靴が10でそれ以外は8だね。靴下とか下着は対象じゃないっぽい。


「鉈と靴がレベル高いのは最初から使っていたからか……あれ、枠の色が違う?」


「カードにもレベルがあって、白枠はレベル1だけ、黄枠はレベル2までセット出来るよ」


「ほあー……本当にゲームみたい」



ダンジョンハック系のゲームにありそうな内容だ。

そして俺はその手のが大好きだったりする。


クロが全快したらまた再開するつもりだったけど、本当に楽しみだ。



「カードはその端末に保管出来るから入れておくといい。 左下のカード一覧を押して、格納を選んで出て来た枠内にカードを押し込めば完了さ。 取り出したいときは取り出しを押せば良いよ」


端末に保存できるのはありがたいね、うっかり無くしたり盗まれたりしたら大変だもん。

その点この端末に入れておけば……あ、あれこいつって認証機能とかあるのかな? ……後で聞いておくか。


「カードをセットするには装備の枠をタップしてカードを選ぶだけだよ。外したい時も枠をタップすれば良い……さて、カードについてざっと説明したけど何か質問はあるかい?」


あ、着け外し出来るのありがたいね。

ゲームによっては一度着けたらもう外せないのとか、破棄しないとダメなのあるし、割と親切設計だ。


気になること、気になることねえ……ダメ元で聞いてみるかね。


「えっと……カードって他にどんなのあるんですか? 魔法使えるようになったりとか……」


「それは秘密だね。 頑張って楽しみながら集めて欲しい。 他の参加者とトレードしても良いし」


「……んえ?」


やっぱ教えてくれなかったかー……って今何て言った?


「他の参加者って……他にもダンジョンがあるんですか?」


「その通りだよ」


あるんかいっ!

最初の説明の時に言おうよっ。


「あー……ちなみに何カ所あるんです?」


「まだテスト中だからね……今は15箇所だけだよ。 アメリカに5つ、イギリスに5つ、そして日本に5つさ。 ああ、詳しい場所は秘密だよ? 皆にも見つけた時のワクワク感を味わって欲しいからね」


まだテスト中ねえ……これって今後はもっと増えていくってことかな。

だとするとポーションを表に出す日もそう遠くは無いかもだ。


あとちょっと他のダンジョンにも興味がある、場所は秘密らしいけど公になれば行ってみたいところー……ん? 秘密ってことはまだ見つかっていないのかな?


「結構あるんですね。 もう発見されてるんですか?」


「…………」


あ、あれ?

なんかアマツが黙っちゃったんだけど?? 今の質問地雷だった? んなあほなっ。


「あ、あの?」


「ああ、すまない。 発見されているか?だったね。 今のところはここを含めて4箇所発見されているよ」


「おー。 ……でもニュースとかで見ないですね、結構大騒ぎになりそうなもんですけど」


1カ所でも見つかれば騒ぎになりそうなもんだけどね。

ここは納屋の中だから、俺以外気付かないし騒ぎにはならないけど。


「……発見された内の2箇所はここと同じ極小ダンジョンでね、一箇所は野生動物の住処になっているよ」


「え゛……発見って野生の動物がですか?」


「その通り! そしてもう一箇所は人が発見したのだけど悪戯だと思われて埋められてしまったのさ。 ……あの2箇所はもう閉めようかと思っているよ、それに極小ダンジョンはもう作らないでおこうと思う」


「そ、それはまた……え、えっと、もう一箇所は?」


確かに人がやっと潜れるぐらいの穴だしなあ……悪戯とか、動物が掘ったとか勘違いするのも分かる気がする。


……アマツとしてはその辺は想定外だったのだろうか、結構目に見えて凹んでるぞ。


あ、でも残りは違う大きさかも知れないし? それなら動物が掘ったとか思わないんじゃないかなー……?


「小ダンジョンだけど……物置代わりになってるよ」


「あちゃあ」


なんてこった。



「ご、極小と小があるなら大きいダンジョンもありますよね? さすがにでかければまた反応違ってくるんじゃないかなーって思うんですけど……その」


「……ちょっと辺鄙なところでね、まだ見つかっていないんだ」


なんでそんな所に作ったし。


てかアマツが暇なのってこれが原因だよね。


ダンジョン作ったは良いけど誰もこないとかダメじゃんっ。

ランダムって言っても限度があるでしょがー。


「えぇ……多少目立つところが良いんじゃ無いかと……」


「そう、だね。 ……うん、その内移動する事にするよ」



移動できるんかい。



「それじゃ説明に戻ろうか」


移動すると決めたからだろう、アマツは明らかに凹んでいたのがすっと復活する。


復活したアマツはまたにこりと笑みを浮かべ、続きを話し始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る