116.火山への準備

「アステカ人……か」


【生き残りがいたって話かもなぁ。お前がその子孫なら、同じ眼を持ってても不思議じゃねーよ】


 俺が考えた予想に、ベルゼも賛成していた。

 壁に描かれた絵を見つめ思いふける。

 すると、その間に箱や棚を物色していた面々が、いろいろな素材を見つけていた。


「なぁ、これってゴーレムの心臓じゃない?」


 キリエが持っている物を見せてくる。

 見た目は黒いゴーレムに埋め込まれていた心臓と一緒だ。

 鑑定眼でも確認して、確信を持って頷く。


「間違いないよ」


 これで合計二個の心臓を入手できた。

 遺跡でのノルマは、これにて達成ということだ。

 

 その後も、次から次へと素材が出てきた。

 何があったのかは、使うときに紹介するとしよう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 砂漠エリアの探索から戻った俺たちは、三日ほど休息をとることに決めた。

 前回もそうだったが、疲労は思った以上に蓄積されている。

 それに、次の目的地は火山エリアだ。

 これまで以上に過酷な冒険になることは予想できる。

 準備は入念に、身体も万全にしておくことが大切だ。


【んで? 今回は何を作るんだよ】


「防炎と防熱の効果を付与したマントだよ」


 休日の宿屋で、俺は魔道具作成の準備をしていた。

 机の上に置かれたランタンの炎が、ユラユラと揺れている。

 ベッドには採取した素材と、道具屋で買い揃えた素材が並べられていた。


「火山エリアの平均気温は70℃……とてもじゃないけど、普通の装備では耐えられないからね」


【ほぉ~ん。人間ってのは大変だな~】


「ベルゼだって、肉体があった頃はそうだったんじゃないのか?」


【俺は悪魔で魔王だったんだぜ? 環境くらい魔法でどうにでもなったつーの】


「さすがだな」


 俺は呆れて笑いながら作業を開始する。

 砂漠エリアで採って来たサンドワームの皮、これがマントのメイン素材だ。

 見た目はハッキリ言って気持ち悪い。

 元がワームだったこともあって、嫌でも連想してしまう。


「そういえば、キリエも嫌がってたっけ」


【いーじぇねーか~ イノシシ娘が嫌がる顔! さいっこうにおもしれーと思うぜ?】


「最高に性格悪いね」


【褒め言葉だな! ほれ、さっさと作っちまえよ】


 急かすベルゼに、わかったと頷く。

 ワームの皮と耐火ポーション、さらに興奮剤を混ぜる。


 魔道具作成スキルを発動。


 完成したのはマントは、見た目こそ普通のマントだった。

 茶色っぽい色合いで、フード付き。

 サイズは少し大きめだから、ユイ辺りだと引きずるかもしれないな。


「出来た!」


 バサッと出来上がったマントを広げる。

 これを身につければ、火山の暑さもある程度は遮断できるはずだ。

 氷結晶の指輪もあるし、予定していた滞在時間は保てるだろう。

 

 残り四着を作る。

 その前に、出来上がったマントを見ながら思う。


「一応臭いとか確認しておくか……」


 連想されたのはキリエの言葉だった。

 念のためにと臭いをかぐ。

 

【どうだ?】


「……耐えられるからセーフかな」

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