69.覚悟の誓い
「ベルゼ? 今なんて?」
【ゴブリン軍団をどうにかしてーんだろ? 方法ならあるって言ってんだよ】
ベルゼがハッキリとそう言った。
全員の視線が彼の揺れる炎に集まり、次の言葉を待つ。
「本当なのか?」
【おう。あ~ ただまぁ、確実ってわけじゃーねーぞ。シンク、お前がどれだけ耐えられるかにかかってるからな】
「耐えられる……かどうか? どんな方法なんだ?」
【簡単だぜ? 一時的にお前さんの身体をオレに貸してくれりゃーいいのさ】
「俺の身体を?」
【ああ、いわゆる憑依って奴だな】
俺は驚きながら聞く。
他の彼女たちも、各々に顔を見合わせながら、ベルゼの言っている内容を確かめる。
ベルゼは淡々と方法について語り続ける。
【見ての通り、知っての通り! 今のオレには肉体がねーんだよ。前みたいにダンジョン内なら別だが、この状態じゃほとんど何もできねぇ……だが! 肉体さえあれば話は別だ】
肉体を得たベルゼは、かつての力を行使できる。
魔王と呼ばれた力。
それさえ発揮できれば、十万の軍団だろうと容易いと彼は言い切る。
そして、同時に発生するリスクもあるようだ。
ベルゼは続けて言う。
【ただし、そんな方法がノーリスクで出来るわけもねぇよな? 本来は悪魔の肉体で行使する力を、人間の身体で使ったらどうなると思う?】
「……負荷に耐えられない?」
【そういうことだ。どこまで保てるかって話になる。オレの予想じゃ、せいぜいもって数分ってところだな】
「数分であの大群をどうにかできるのか?」
【出来るぜ? そこは断言しても良い】
「そうか、だったらやろう。今すぐにでも」
俺はキッパリと決めた。
あまりにも淡白な発言だったからか、その場にいた全員が驚き反応する。
【おいおい、そんな簡単に決めていいのかよ。まだ言ってねぇーけど、これをやったらオレとお前の魂が完全にリンクされる。どっちかが消えれば、一緒に片方も消えるようになるんだぞ】
「そうなのか? まぁそれくらいの制約はあって当然か。というかそれって、むしろベルゼにとってのリスクじゃないのか?」
【オレは別にどっちでもいいんだよ。どーせ余生だしな。いつ終わろうが未練はねぇ】
「そういうことなら遠慮なく」
「ちょ、ちょっと待ってよ! さっきから全然話についていけてないけど、また無茶するつもり?」
ミアが俺とベルゼの話に入ってくる。
彼女に続けて、キリエとユイも心配そうな顔をして言う。
「もう傷つくのは嫌だよ」
「そーだぜ! 何でシンクがそこまですんだよ!」
「大切な場所だからだ。あの場所は……俺たちの帰る家があって、日々を過ごしていく所なんだ。だから、救えるのなら救いたい」
俺がそう言うと、三人はもっと不安そうな表情になる。
傷ついてほしくない、危険なことをしないでほしい。
そう言いたいのだろうということが、彼女たちの目を見ればわかる。
だけど……いや、だからこそ俺は微笑む。
「大丈夫、俺は必ず生きて戻ってくる。もう皆の泣いている顔は見たくないんだ」
それから彼女たちは何も言わなかった。
言っても無駄だとわかったのか、それとも俺の覚悟に賛同してくれたのか。
どちらにしろ、俺の決断は変わらない。
ベルゼにもそれが伝わる。
【覚悟は決まってるってわけか】
「もちろん」
【だったら言うことはねぇ! 行こうぜ!】
「ああ!」
覚悟を胸に、俺とベルゼは奮い立つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます