47.一人じゃないから

 俺一人では勝てなかった相手に、パーティーで挑む。

 これは言わば第二ラウンドだ。


「ミア! キリエ! 前衛は頼むぞ!」


「任せて!」


「おっしゃ! ずっと見てたからな余裕だぜ!」


 ミアとキリエが前に出る。

 鎧騎士も剣を構えて応戦する。

 剣速も移動速度も、二人と同レベルの鎧騎士だ。

 おそらく単身では圧倒されてしまうだろう。

 だが、こちらは二人いる。

 連携しながら立ち回れば、翻弄するくらいは出来る。


【これは……確かに脅威と言える。だが――】


 激しい斬りあいの最中でも、鎧騎士は平然と魔法陣を展開させる。

 それに反応した二人は、咄嗟に後方へ跳び避ける。

 放たれる魔法。


「マジックバレット」


 それをユイが、同出力同数の魔法で相殺した。


【こちらも遜色なしか。ならば続けよう】


 鎧騎士は別の魔法陣を展開し、炎の渦を作り出す。

 ユイも対抗して魔法を放つ。


「プロミネンス」


 続く激しい魔法合戦。

 ミアとキリエも隙を探して攻勢に出る。

 三人が鎧騎士と互角の勝負を繰り広げている中で、俺はじっくりと観察していた。


 皆のお陰で余裕が出来た。

 今なら鎧騎士本体を覗いて、構造を見抜くことが出来る。

 そうして、俺は鎧騎士の弱点に気付いた。


「ユイ、そのまま攻撃を続けてくれ」


「わかった」


 俺は弱点をつくための隙を伺う。

 隙は彼女たちに作ってもらう他ない。

 能力的には、三人合わせれば互角といえる。

 ただし、この攻防が永遠に続くわけではない。

 なぜなら、こちらは生身で体力に限界があるのに対し、鎧騎士にはそれがないからだ。

 ずっと戦っているが、鎧騎士から感じられる魔力は一向に減らない。

 強力な魔法を連発していても、魔力消耗はしていないように見える。

 つまり、持久戦はこちらに不利だ。


「くっそ! 速さなら負けてないのに」


「押し切れない……」


 各々が持てる力の最大限を搾り出している。

 故に互角が続いているだけで、徐々に限界が見え始める。


【素晴らしい強さ。汝らを足枷と侮ったことを詫びよう。汝らとの戦いは、永劫に記憶しておこう】


 鎧騎士も彼女たちの疲労を見抜いていた。

 発言から、勝利を確信していることが伝わってくる。

 だが、鎧騎士はここで気付く。

 俺が視界から消えていることに――


【上か】


「正解だ! そしてもう遅い!」

 

 俺は透明になれるマントを着て、鎧騎士の頭上へ移動していた。

 すでに弦から手を離し、矢を放っている。

 爆発矢も貫通矢も、鎧騎士にダメージは与えられなかった。

 だからこの矢は、そのどちらとも違う。

 鑑定眼を通してわかった。

 鎧騎士の身体は、魔法によって構成されている。


 矢が命中し、鎧騎士の身体にヒビが入る。

 俺が射った矢は、彼女たちを助けるために使った魔法解除の矢だ。

 透明になって隠れている間に複製した。

 思った通り、魔法で構成されている身体には、この矢が有効だ。


「一本で足りないんだろ? だったらもっと降らせてやる!」


 続けて矢の雨を降らせる。

 回避に転じようとする鎧騎士。

 それをミアとキリエが逃さない。

 逃げ場をなくした鎧騎士は、矢の雨を受ける。

 一撃一撃を受けるたび、ヒビは大きく広がっていく。

 そして――


【見事である】


 そう言い残し、バラバラになって砕け散る。

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