33.ダンジョンの入り口

 発見されたダンジョンは、山岳エリアにある。

 街で馬車を借りた俺たちは、運転を業者に頼み山道を進んでいく。

 街を出てすぐは道が整備されていて快適だったけど、次第に石や岩が目立つようになってきた。

 車輪が石を踏むたびに、馬車が大きく揺れる。

 時にはお尻が浮くほど強く揺れたりもした。

 プロが運転してこれだから、自分たちで運転なんてしたら大変なことになっていたな。


 しばらく進み、運転手が馬車を停める。


 道はまだ続いているが、地面がさらに荒れていて、これ以上は馬車では進めない。

 ここまではワイバーン殲滅戦で来ている。

 徒歩に切り替えて山を登ると、いくつか分岐点がある。

 今回向かうのは、ワイバーン戦とは別方向。

 道中に見える大きな二つの岩に隠れ、噂の洞窟がひっそりと見つかる。


「洞窟?」


「そう。この奥にダンジョンの入り口があるらしいよ」


「へぇ~ ここからもうダンジョンじゃないんだ」


「違う違う。ダンジョンはあくまで建造物だからね」


「ふぅ~ん。まっ、とりあえず進めばいいんだろ?」


 そう言ってキリエが先に洞窟へと踏み込む。

 俺たちは彼女の後に続き、洞窟内を歩いていく。

 当然だけど、洞窟内は整備されていない。

 足元はゴツゴツしているし、湿っている場所もあって滑りやすい。

 奥へ進むにつれて、入り口から差し込む光が減っていく。


 歩きながらミアが言う。


「暗いね……ダンジョンの中も同じなの?」


「いいや。ダンジョン内は明るいって聞いたよ」


「そうなの?」


「ギルドで聞いた話ではね。一応念のためにランタンは持って来たけどさ」


「ついた」


 ユイがボソリと言った。

 話しているうちに、俺たちは目的のダンジョン前にたどり着いていたようだ。

 そこには金色の枠で覆われた門があった。

 周囲の風景とマッチしていなくて、あからさま過ぎるだろうと心の中で呟く。

 ただ、重厚感が伝わる見た目なのも確かだ。

 ミアとキリエがごくりと息を飲む。


「これが入り口……」


「な、なんか急に緊張してきた」


 ダンジョンに興奮していたキリエも、目の前にするとやっぱり緊張はするらしい。

 この先にどんな光景が待っているか。

 知りたいという好奇心と、大丈夫なのかと言う不安が合わさっている。


 ダンジョン入り口を前にしり込みする彼女たちに代わって、俺が先頭に立つ。


「行くよ」

 

 そう言って扉に手をかける。

 扉はうち開きになっていて、押し込むことで開く。

 見た目とは裏腹に、押した感覚は軽かった。

 

 そして――


 扉の先に広がっていた長い通路に、三人は釘付けになる。

 話に聞いたとおり、ダンジョンの中は明るかった。

 壁や天井、床も青く光った石で造られていて、明りはなくても見えそうだ。

 光る石はいくつか知っているけど、これは初めて見るな。


「どれどれ」


 鑑定眼で見てみる。

 どうやら素材は普通の石のようだ。

 内部にモンスターのコアのような物が埋め込まれていて、魔力を流して光らせているらしい。

 これそのものにトラップのような効果はなさそうだ。


 俺が壁を確認していると、後ろからキリエが言う。


「これ進んでも大丈夫なのか?」


「今見たから大丈夫。床も壁も光っているだけで、人体に害はないから」


「そう……なのか? シンクが言うなら……まぁ大丈夫か」


「じゃあ進むぞ?」


「おう! 念願のダンジョン探索だ!」


 大丈夫だと思ってなのか、ちょっぴり元気になるキリエ。

 躊躇っていたのが嘘のように、彼女は自ら扉を潜ろうとする。

 そうして、俺とキリエが先にダンジョンへと入る。

 ミアとユイはそれを見て、遅れて後に続いた。

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