第65話 業火の獣〜魔物掃討戦〜
建物へと押し寄せる魔物達と白兵戦を繰り返す。スケルトン達は骨の剣をダークゴブリン達は鋭い爪で襲いかかってくる。
スケルトンは固体によって能力に違いはあったが、剣の腕は新兵程度なので苦戦する事は無い。
しかしダークゴブリン達は召喚士の指示なのかもしれないが一定の知能がある為、簡単な命令を下しているようだ。
(窓や壁の隙間から入られたらどうしようもない!)
知能がないスケルトン達で私を足止めして、その隙にゴブリン達をばらばらに動かし建物内へ侵入させるつもりだ。
それにしても敵の狙いが掴めない。何の為にこんな事を起こしたのだろう。
雷剣でスケルトン達を屠りつつ左手で魔法を放ちゴブリン達を狙う。しかし素早く動き回り中々狙いがつけれない。
(まずい中に入られちゃう!)
建物内には避難させた市民達が大勢いる。全員非戦闘員だ。ゴブリン一匹でも彼等にとってはとてつもない脅威なのだ。
しかし一人ではどうにも手が回らない。斬っても斬っても一向に魔物が減る様子はない。むしろ増えているまである。
そしてとうとう私の隙をついたゴブリンに私の迎撃網を突破された。ゴブリンは真っ直ぐ建物の入り口を目指している。
無防備な背中を晒しているあのゴブリンに魔法を当てるのは簡単だ。だけどそのせいで新たに私の迎撃網を抜けてくる奴が出てくるかもしれない。
だからこの均衡は崩すわけにはいかない。
一手間違えれば市民はおろか、魔物の群れに呑まれ私も命を落とす事になる。
ゴブリンの姿を目で追う。奴は扉に手を掛けようとしていた。
「くっそ!」
危険を承知で左手を構えた時、ズルッとゴブリンの首が地に落ちた。
「先輩!!」
「ごめん遅くなった。抜けてきた奴らは僕に任せて!」
先輩の右手にはジークと同じ得物が握られていた。くるくると器用に曲剣を回し壁を駆け登り、小窓から侵入しようとするゴブリン達の首を刈り取っていく。
壁にしがみつくのに必死なゴブリン達は大した反撃も出来ないまま、その体を地面に落とされていく。
これでもう後ろを気にする必要はない。思う存分戦える。
「よっと」
短剣を5、6本取り出し、能力を付与して投げつける。
『ギィガ?』
5、6本の短剣で10体以上のスケルトン達が倒れ伏す。
スケルトン達は密集している為、当たった奴から連鎖になって痺れていく。
「あと、20体くらいか」
左手も雷剣を装備し二刀流で残りのスケルトン達に立ち向かう。
「うぉおおおおお!」
『グガァァァ』
カラカラと音を立てながら迫るスケルトン達は数分後には物言わぬ本当の屍と化していた。後ろを振り返ると先輩がゴブリンを切断している所だった。
「これでひと段落だね」
「先輩の方は何か収穫はありました?」
先輩は「うーん」と頭を抱えて唸りながら直接見せた方が早いかといって私の肩に手を乗せた。
「ちょっ先輩?!」
「動かないでね」
変な想像をした私が馬鹿だったようだ。
私の脳内に先輩のイメージが流れ込んできた。どうやら先輩の固有能力はこんな事も出来るらしい。全く羨ましい限りだ。
見えてきたのは無数の悪意の塊。それが会場のあちこちに根を張るように存在していた。
「え……こんなにたくさん」
「やっぱりそう思うよね」
先輩が肩から手を離すと途端に脳内に浮かび上がっていたイメージは霧散した。どうやら触れていないと持続できないらしい。
「これ、イリアさんにも伝えてどうすればいいか相談した方がいいよね?」
「うん。僕もそう思った」
私と先輩は、未だ中央で地獄犬と戦うイリアさんの元へと急いだ。
炎の壁はスピードが落ちる事なくどんどん迫ってきていた。
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