第14話 歴史とお風呂

 カノン様がユアン様との話を終えると、陛下に事の次第を報告に行くようだ。

 

  私達も慌ててカノン様の後に続く。


 正直な話、私じゃ話について行けなかったがメリティナならついていけたかな?


 メリティナをみると彼女も茫然自失といった顔で私と似たり寄ったりだった。


 ヨハン? 言わなくても分かるでしょ。


 話の内容を纏めると宣戦布告を受けた事でいいんだよね?


  ………うわぁー大変な事じゃん!!



 執務室にカノン様が入り私達は部屋の外に待機しているよう命じられた。


 暫くして中からカノン様の謝るような声と、陛下の怒鳴り声が聞こえた。


 だがすぐに静かになり、数分後目の下を赤くしたカノン様が出てきた。


「カノン様大丈夫ですか?」

「ええ、平気よ。心配してくれてありがとう」


「カノン様、今日のご入浴はどうされますか? ご気分が優れないようでしたら、今日はもうお部屋に戻られたらどうでしょう」


 え、待って待って。 私の一番の楽しみがなくなっちゃうの?!


 これが楽しみで生きているのに……よよよ。


 カノン様は少しの間逡巡して、チラッと私の方を向いて言った。


「ごめんなさいね、エト。 そんな気分じゃないのよ」


 まさか、顔に出てしまっていたのか!


「とんでもございません。 カノン様はゆっくりお休みになられて下さい」


  残念だけどしょうがないね。チャンスはいくらだってあるしね。


 カノン様が部屋に戻られた後、私達は自由にしていいと言われたので何をしようかと話し合った。 (私が一方的に聞いただけだけど……) メリティナはローラ達の仕事の手伝いに行き、ヨハンは剣の訓練に向かうそうだ。


 仕方なく私は久しぶりに勉強をする事にした。


 今日、勉強するのは隣国バルドニア帝国の歴史についてだ。


 バルドニア帝国は王国よりも歴史が長く、元々王国と帝国は一つの大きな国だった。


 だがある一つの大きな戦争の後、王家は二つに分かれた。 戦争が終結した後、国の未来を知るため当時の王族達が集まって呪文をかけ神玉を覗いたという。


 何が見えたのかはどの文献を読んでも書かれていないため謎に包まれている。そこから分かる事は、見えた未来が王族を二つに分けてしまうほど驚愕なものだったという事だ。


  神玉の内容を信じる側と信じない側に家臣達もそれぞれ分かれ、長い間激しい戦争が続き、国を二つに分けるということで双方が合意し停戦となった。


 その戦争で出た犠牲者は小国3カ国分の人口にのぼると言われている。


 未だ停戦という事になっていて終結とはなっていない。


 国を西と東に分け、西側が王国、東側が帝国の領土となり、これにより二つの大きな国が誕生した。


 神玉を信じる側の王国が神玉を継承していく事になった。


 それから、王国は今まで通りの神玉の導くままの国造りをし、帝国は神玉に頼らない新しい国造りを始めた。 これが今の帝国と王国である。


「つまり、今の帝国と王国の王族はどちらも血の繋がりがあるというわけか……」


 うーんとエトは手を伸ばし本を閉じた。


 同時にトントンと部屋のドアが叩かれる。


「エト 今入っていいかしら?」

「いいよ〜〜」


 シズルが部屋に入ってきて、私の机の上にある本に目を止めた。


「珍しいわね勉強嫌いのエトが勉強してるなんて、こっちに来てからあまりしてなかったでしょう」


「うん、そうなんだけど今日は本当に暇になっちゃたからね〜。 シズルは何しに来たの?」


「カノン様と入浴出来なくて、残念がってると思ったからお誘いに来たのよ。 どう今日は久しぶりに入らない?」


「 シズルと一緒に入るのも子供の時以来だね。いいね〜行こ行こ」




       

        ◇◇◇



 私達は使用人専用のお風呂場に向かった。


 この王宮には使用人なら誰でも使える風呂場があるので雇われメイドには目から鱗だろう。


 私とシズルは早速脱衣所で服を脱ぐと、お風呂場へ向かった。 私もシズルもしっかりタオルで前を隠している。誰かに見られてはしたない格好と言われたくないしね。


 ざっと20人くらいは一度に入れそうな程大きい。金かかってるなー。王族の方はもっとすごいんだろうなー。


「うひゃー。やっぱりここは広いねー」

「そうね、自分の家とでは大違いだわ」


 まだ時間帯が少し早いからか他に人は居ない。 私とシズルの二人きりだ。


 私は何気なく髪を洗うシズルを見やる。 泡が彼女の肌を伝う。 手から脇、脇から胸へ、ゆっくりと降りていく泡を見る。


 じっ〜〜〜と私がシズルの胸に熱い視線を当てていると、その視線に彼女は気づいたようだ。


「……なんで胸を見ているのかしら」


「いや、シズルまたおっぱい大きくなったとなぁと思って……」


 シズルの胸はいつの間にかよく成長していて、メイド服の上からでもその膨らみは見て取れる。 たった2年の間でここまで差をつけられるとは……ぐぬぬ。


「胸が大きくても良いことはあまり無いわよ、動き辛いし」

「それでもいいの!私だって社交界で谷間を見せびらかしたいんだよー」


「私達はメイドでしょ。 主人より目立ってどうするの。 それに私は見せびらかしてなんかないわ」

 

「うう〜」


 悔しいけど、胸の大きさでは負けてしまった。 だがいつかは追いついてみせるんだから!


 体を洗い終えたのでゆっくりと肩まで湯船に浸かる。 ふぅー極楽極楽。 


 隣でシズルのいい香りがする。 あ、もうダメだ我慢できないや、男の人ってみんなこんな気持ちなのかな。 私はズイッと体をシズルに近づけた。


「ねぇシズル。胸、触ってもいい? どんな感じか確かめたいんだ」

 

 そして私は唐突に声をかけた。


「何を確かめるつもりよ!! 嫌よ絶対」


 シズルの頬が少し赤くなっている。 のぼせたのかな?


「そんな事言わずにお願い〜」


 長い戦いの末シズルが根負けした。


「じゃあ、少しだけよ。それ以上はダメ」

「やったーー!」


  私はおそるおそるシズルの胸に手を伸ばす。 むにゅと柔らかい音がして、私の手にシズルの柔らかい胸の感触が伝わってくる。


 あ。すっごい柔らかい!  私は揉み揉みする。


「んっ!!」


 シズルから可愛い声が漏れた。


「ちょとエト! 変な触り方しないで」


 うーん何のことか全然分からないや。へへへ。


  私は気にせず揉み揉みする。


「うにゃ! ちょとやめてよエト」


 あ、変な声出た! 私は無我夢中で揉み揉みする。


「んんっ!!」


 その後、私は他の人が来るまでたっぷりとシズルの胸を堪能するのであった。 ぐへへ〜。


  顔を真っ赤に染めたシズルはふらつきながら出て行ってしまった。 残念……。


 私もシズルの後を追って出ることにした。



  王女の誕生日まであと2ヶ月。

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