2章 絶望と惨禍の始まり
第12話 エトの1日 メイド編
こんにちはエト・カーノルド十五歳です。 シズルちゃんには色々小さいとか言われてるけど(どこがとは言わない) 私とあんまり変わらないんだからね。
今日のお仕事は王女の護衛と身の回りのお世話。メイドの中で実戦経験があるのは私とシズルだけだったから、一日ごとに交代交代で行われることになった。
そしてローラ、メリティナ、ミザリーの三人はカノン様の文官を務める事になった。
私やシズルもそれなりに勉強をしてきたつもりだったが三人の方が格段に上だった。特にローラは王宮の文官達が舌を巻く程だ。
この国に関する知識だったら彼女の右に出る者はいないだろう。
あれは出世する奴だな。ローラのくせにムカつく。
文官の方も三人でローテーションをして一日ごとに交代をしている。 担当ではない日は王宮内でなら自由を許されている。
なので案外ゆったりと過ごせるようになっている。
間違えてはいけないのは、王族のメイドだから許されているのであって、普通に雇われているメイドがしたら即刻解雇になるだろう。
まぁ私は部屋で本を読んだり、カノン様の様子を見にいったり、カノン様が勉強しているのを見守ったり、カノン様がお風呂に浸かっているのを覗いたりしてて忙しいのだけれど。
今の所カノン様には気付かれていないがシズルには一度気付かれて怒られているので気をつけなければ。
もちろん、やめろって言われたけど一度あの綺麗な肌を見てしまったら無理だよね。
確かに自分の担当日に堪能すればいい話だけど我慢出来るわけないじゃん!
あ、ローラが担当の時は絶対にしないよ。
カノン様の後ろには私、メリティナ、そして護衛のヨハンが付き従っている。 引き連れる人数を少なくするのは、沢山使用人を引き連れて王宮内を移動するのは印象が悪いからだ。
うん。私も含めてみんな美形揃いだね。
雇われメイドど専属メイドの大きな違いは服だろう。
雇われメイドの服は皆一律したものだが、専属メイドは装飾を許されている。
私のような雷の模様が入っているメイド服やローラが特注した華やかなメイド服など多種多様だ。
私が初めてメイド服を着た時。
「うん。よく似合っていると思うわ、可愛いわよエト」
カノン様に曇りのない笑顔で褒められてからこの服は私の一番のお気に入りとなった。
特注のメイド服を作るお金がなかった私とメリティナのメイド服はカノン様が立て替えてくれた。
王族が使用人に対してそんな事をしていいのかと聞けば専属だからアリなのだそうだ。
ちなみにこのメイド服一つで小さい家買えます。
王族半端ねぇ……。
カノン様が応接室の前で足を止めた。
ヨハンが素早くドアを開けカノン様が中に入り私とメリティナがその後ろに続く。
この国では十五歳から成人とみなされ大人として仕事をしていかなくてはならない。
それは王族も同じで十六歳になったカノン様は色々な国の人と会話し交流を広めていて、時には縁談話もあり、その相手がたとえ仲の悪い国であってもその全てに応じている。
今日のお相手は隣国の皇子様だ。
向かいの席には目鼻立ちがよく通っていて、とても爽やかそうな青年が座っている。
目は右目が黒、左目は赤色をしていて左右の目の色が違うのは非常に珍しい。
側には彼の従者らしき男性と女性が控えている。
私達もカノン様の後ろに立つ。
カノン様が腰を下ろすと青年の方から話しかけてきた。
「初めましてだね、カノン・シュトラス・ディスペラー第一王女様。この度は縁談に応じてくれてありがとう。 心から感謝の意を申し上げる」
「様はいりませんわ、ユアン・バルドニア・アルター第一皇子様。 こちらこそ私に縁談話を持ちかけて下さり光栄ですわ」
敵国同士の二人の駆け引きが今、静かに幕を開けた。
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