第16話 結果の前に

「で、いつ届くんだ、その結果。」


練習会の翌日。

教室で昼飯を食べながら、ゲンが聞く。

ちなみにヨネは腹が痛いと、トイレにこもっている。


「今週末には。遅くても来週だと。」


「まぁ、もう大体決まってんだろうけどな。その場で、けっかはっぴょーー!って言えば良いのにな、浜ちゃんみたいに。」



「で、自信は?」


「やれることはやったよ。必死で。」


「うーー、無視すんなよー!」


「ハハッ、悪い悪い。」


「二人が冷たい…。ヨネー!早く戻ってこーい!」




その日の、夕方。

クラブの練習も終わりが近づく。

今日はコーチから、軽めの別メニューを言い渡され、程よく汗を流した。


「集合!」


コーチのかけ声に反応し、ダッシュで選手が集まる。


「みんなも知ってる通り、テツが先週と昨日、ツインズの練習会に参加した。昨日の夕方、スカウトに来た鷲田さんから電話があってな。すごい頑張っていたと。今日は無理させないであげてほしいと、わざわざ連絡をくれた。」


「おーー!」


みんなの視線が集まり、さすがに照れる。


「聞いた話だと、PK戦の練習で4人連続で防いだそうだ。5人目は元Jリーガーのコーチのシュートを止めかけたと。にわかに信じられん。鷲田さん、さすがに少し盛ったかな。テツ、この話は本当か?」


更にみんなから視線が集まる。


「はい!あの、一個だけ。チーフコーチが元Jリーガーだとは、今の今まで知りませんでした!」


「いや、そこかい!」


ダイゴがつっこむと、「ハハハハッ」と、みんなから、どっと笑いが起こる。


「…テツは嘘つくようなやつじゃないもんな。良く頑張った!クラブを上げてテツに、みんなで拍手を送ろう!」


「パチパチパチパチ!」


「じゃー解散!」


「ありがとうございました!」



「さっきの、マジかよ。早く言えよ、お前。」


「だって俺、Jリーグ見始めたの最近だし。」


「そっちじゃねー!いや、そっちも正直なとこ気になるが、とりあえず先にこっちだ、PK4人連続止めたって話!」


興奮している。そのせいか、いつも大きめの声が、よりデカイ。


「3人連続止めて、4人目は外してくれて、5人目のコーチのシュートは触ったけど、コースは良いし、威力も強くて止めきれなかった。」


「マジかよー!PK得意なのは知ってるけど、半端ねーぞ!テツ!さすが!!」


そう言って強めの抱擁が、テツを襲った。


「4人目のキッカーの気持ち考えると外しちゃうのもわかるね。」


ケンがキッカーの心理を読む。


「俺なら決める!」

(抱きついたまましゃべってる)


「そーいや、松永が二人によろしくって!あいつ、ダイゴにそっくりな!」


「どこが!?てか、お前、仲良くなってんじゃねー!」

(少し動きが止まったがまだ離れず)


「こーやって抱きついて来るのとか、熱いとことか、あとグータッチとか!」


「ハハッ!自分とそっくりだから、気になるんでしょ!仲良かったもんね、二人。」


「良くねーわ!あんなやつ!」


そう言いながら、少し嬉しそうだった。


「連絡先交換したけど、いる?」


「…絶対にいらん!」


「強がるねー。」


テツとケンはダイゴを見て大笑いしていた。


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