第102話戦いの決意(*選択肢あり)


「皆に伝えたいことがある。俺とロナはタウバの下へ向かい、これを倒そうと考えている」


 あくる日、再び魔法学院の講堂へ、皆を集めたクルスは開口一番でそう発言した。

 目の前の誰もが彼の宣言に息を飲む。

 

「しかし俺とロナでは心もとないのが正直なところだ。できれば皆に協力を仰ぎたい。といって無理強いはしたくはない。だから去りたいものは、今ここで俺とロナから去ってもらって構わない」

「ま、待って!? 急になんでそんな!?」


 セシリーは皆を代表して、もっともな言葉を口にする。

 するとロナの青い瞳がセシリーへ向かった。


「タウバはこの時、この瞬間にもティータンズから魔力を吸い上げて、着々と侵攻の準備をしています。ですが奴の復活は未だ不完全です。叩くなら、今しかないんです」


 もはやクルスとの大願を叶えたロナに思い残すことは何もない。そして彼女自身の残された時間は少ない。

 だからこそ気持ちの全てが、タウバ討伐に向かっているのだと、クルスは感じつつ、ロナの言葉へ静かに耳を傾けていた。

 

「僕は行くぞい! ねえ様とクルスが行くところならどこへでも!」


 ロナから分化し、そして強く慕うベラは真っ先に声を上げた。

 

「私も参加します。タウバをこのまま放置してはおけません」


 次いでビギナも静かだが、淀みなくそう言い、挙手をする。

 すると、隣にいたゼラはにかっと笑った。

 

「じゃあビギッちが行くなら、ウチも参加っすね。なんてたってウチはビギッちの相棒で、クルス先輩を慕う同志っすから!」

「ありがとう、ゼラ!」

「ういっす!」

「なによ、これって行かないとまるで仲間外れみたいじゃないの」


 セシリーは不満そうに唇を尖らせた。しかしすぐさま口元だけをにやりと歪ませる。

 

「でもまぁ、面白そうじゃない。あの糞魔女をぎゃふんと言わせてやるなんて! ふふ……」

「私も参加いたしましょう。お嬢様が突出し、皆さまにご迷惑をおかけしないよう」

「ちょっとフェアあんたねぇ!?」

「セシリーはイノシシなのだぁ!」

「イノシシ……?」


 ビギナが首を傾げると、

 

「イノシシみたいに突っ込むしか脳がないってことっす」

「獣の耳のビムガンに言われたくないわよ!!」


 セシリー本人は怒っているのだろうが、周りは微笑ましそうに笑っていた。

 強張っていた空気が弛緩し、良い意味で温まる。

 

「皆、感謝する!」

「ありがとうございます!」


 クルスとロナは壇上で頼もしい仲間たちへ深々と頭を下げるのだった。

 

「で、タウバに喧嘩を売るのは決まったとして、具体的な作戦とかはどうなっているの?」

「勿論、考案済みだ」


 セシリーの問いにクルスは力強く答える。

 そして、ロナと二人で考えた“タウバへの対抗策”を語り始めた。

 

 ……

 ……

 ……

 

 

「なるほど……と、なると、もうちっと人手が欲しいっすね」


 対抗策に関しては概ね了承を得られたものの、一番の懸案事項をゼラは口にする。

 

「最悪、この七人でも決行します。先ほども言いましたが、時間を置けば置くほどタウバは力を取り戻して手が付けられなくなります。それにかなめさえきちんと発動できれば、それですべてを終わらせることができます」

「しかし、戦は数とよく言います。やはり多少兵は整えた方が良いのでは?」


 フェアもゼラと同様の提案をしてきた。

 するとゼラが“パチン!”と膝を手で打った。

 

「わかったっす! じゃあウチらビムガンが加わるっす! そろそろとと様がティータンズに到着する頃っす。だいたい数は1000位っすから、全部東の塔へ転進させるっす。間に合うかどうかは分からんっすけど、とと様から聖王国正規軍にも動いてくれるよう頼んでもらうっす!」

「ありがとう、ゼラ。頼めるか?」

「ういっす! 任せるっす!」


 ビムガン1人は、人の兵10人に匹敵する。戦力としては10000。敵の数が未知数ではあるが、頼もしい数の力だとクルスは思う。

 

「では、みなさん、宜しいですね?」


 最後の確認をロナは行った。全員が表情を引きしめ、頷く。

 あとはことに当たるのみ。それが七人の共通認識だった。

 

「話は以上だ! 出立は明日未明とし、夜明けと同時に開戦ちする。それまで皆は各々の準備に取り掛かってくれ!」


 クルスの宣言を持って、講堂での話は終わりを告げた。

 

「クルスさん」

「ん?」


 皆が出て行き、二人きりになった頃、ロナが声をかけてきた。

 

「クルスさんから皆さんへ短くてもいいので声をかけてもらえませんか?」

「皆にか?」

「はい。みなさんはクルスさんを慕って、戦いに参加するのを決めてくれました。貴方からの言葉がきっと皆さんを守る力になると思うんです」

「わかった。では俺も準備が整い次第、そうさせてもらう」


 ロナの勧めに従ってクルスは自らの身支度を十分に済ませた。

 

(さて、では誰から声をかけてみるか……)



【選択】


 大変永らくお待たせしました! 分岐箇所です。

お好みの箇所へお進みください。全部読んでも支障はありませんし、一つだけ読むだけでも構いません。


 

★ビギナのところへ行く


★セシリーのところへ行く


★ベラのところへ行く


★フェアのところへ行く


★ゼラのところへ行く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る