第8話 麺を打つ

 蕎麦の打ち方が分からない。


 クリフ村から帰って来て、報告やグレイ達への報酬の支払いが終わり、ようやく一息ついた。

 帰り道から蕎麦の打ち方について覚えていることを思い返してみたけど、実際に蕎麦を打ったことが無いので、細かいところが分からない。

 とりあえず、試行錯誤するしかなさそうだ。


 そば粉は挽いた状態のものをクリフ村から購入したのでそのまま使う。

 さすがに初めてでそば粉10割は厳しいと思うので、そば粉と小麦粉を8:2で使う。

 水の分量とこねかたは色々試すしかないだろう。作業内容についてはメモを残しておく。


 そば粉と小麦粉を木製のでかい器に入れる。パン作るときにも使うやつだ。

 粉を混ぜたら、少しずつ水を入れて混ぜていく。水の量あってるだろうか。非常に不安だ。ぼろぼろの状態でまとまらないので、もう少し水を足す。


 生地の塊が大きくなって来たので、一つにまとめていく。

 一応まとめることができたのでこねる。こねる。確か昔見たテレビで耳たぶより固いくらいと言っていたはずだ。それを目指してこねる。


 とりあえず固さ的にはいい感じ?になったので、生地を伸ばしていく。パイ生地じゃないし、寝かせなくていいよね?

 調理台とめん棒にくっつかないように、台と生地にそば粉を振る。打ち粉って小麦粉じゃなくてそば粉だよね?


 切るときは生地を畳んでいたはずなので、長方形を目指す必要があったと思うが上手くいかない。どう見ても楕円だ。厚みも微妙に違う。

 仕方ないので、魔道具を使う。


「身体強化『頭:弱』で発動」


 魔道具から流れ込んだ魔力がオレの脳を強化し、目の前が開けたように意識がはっきりする。

 指から伝わる生地の感触が鮮明になった。この状態なら10分の1mmの精度で作業ができる。使いすぎると頭痛と鼻血が止まらなくなるのがちょっとした欠点だ。


 身体強化のおかげで良い感じの薄さと形に生地を伸ばすことができた。くっつかないように打ち粉をしてから生地を丁寧に畳み、最後の切る作業に入る。


 テレビだと、何か生地を木の板で押さえながら切っていたけど、あれは何で必要だったのか?

 包丁も武器強化して切れ味を上げながら、スパッスパッと生地を切る。


「ふはは。今のオレなら工場の機械並みの精度で蕎麦が切れるぜ!」


 身体強化してると、ちょっとテンションが上がる。

 蕎麦は全て同じ太さで切れている。端っこはさすがに違うけど。


 全て切り終わって完成だ。身体強化も解除する。


 さて、最初の味見的なものだし、そばは冷たい方で良いか。めんつゆ作らないと。というか蕎麦打つ前に作っておけば良かった。打ち方が気になって頭に無かったな。


 鍋に水と酒を入れて火に掛け、港町で仕入れた干した小魚を投入。少し色がでたら小魚を取り出して、最後に醤油で味付けして出来上がり。

 冷却用の魔道具で鍋ごと冷ましておく。


 次は蕎麦を茹でる。鍋に多めに水を張って沸騰させる。茹で時間は味見するしかないな。時間を測りながら蕎麦を投入して、良さそうなところで麺を一本食べてみる。


 ……固さ的にはこんなもんかな?


 蕎麦を取り出し、冷水で洗って水気を切る。

 蕎麦とめんつゆを器に盛って完成。いただきます。


 ずずずずずっ


「んー。んー?うん」


 うん。まあまあだね。初めて作った割には美味いんじゃないかな。もうちょっとコシがある方が好み。水か?こねかただろうか?色々と試してみよう。


 今回は味見だからそのままだけど、薬味も用意したいな。ざるそばの薬味と言えば、ネギ?ワサビ?天丼?

 天丼は違う。薬味じゃない。一緒に食べたいものだ。でもいいな天丼。そばと一緒に天丼食べたい。タレが美味しいの。

 天ぷらは作れるけど、お米はないんだよなあ。お米食べたいなあ。


 次は温かいそばで天ぷら乗せよう。ごちそうさまでした。

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