第53話:本当の目的

衝撃の言葉だった。

突然契約を解除しろと言われ、固まってしまった。

突然来たのだから、何かしら重要な話が有るのだろうと思っていたけど‥まさかね。

まずは‥理由を聞こうと思いレイの父親のハルさんに聞こうとすると‥


「ちょっと、質問を‥」


ドン!とテーブルを叩き、ベルベットとレイは突然怒鳴りだした。


「私は自分の意志で彼と共に居る!断る!」


「母様、突然の来訪にこの様な言い草、到底受け入れられません!」


彼女達はかなり怒っている、見て分かる通りだ。

まずは状況把握からしようと思ったのに‥

これに対して両方の母親が立ち上がる。


「おい、ベル?母親に向かってその口の利き方はなんだ?ああん?」


「酷いわね~レイったら、話も聞かずに断るなんて‥そんな事言っているとどうなるかしらね~」


不穏な空気が漂い、女性陣は一触即発だ。

ベルベットとカガリさんは殴り合いしそうだし、

レイとミラさんは笑顔を絶やさないけど、あれは笑っているのではないだろう。


尚男性陣はと言うと‥あの戦場に一歩でも踏み入れれば死ぬと察したのか、黙ってお茶菓子を食べている、当然僕もだ。

やっぱり精霊界でも女性が強いんだね‥世の中のルールなのかもしれない。


「そもそも、何故突然来た!おかしいだろ!」


「理由?お前は上位種で散々お見合いやらなんやら逃げてきたんだろうが?今回は逃がさねぇからなぁ?」


「ふふ、そうよ、レイ。貴方には良い男の人が居るんですから‥さぁ、一度会って貰いますよ」


ベルベットとレイは確かに普通の精霊とは違った。

上位種だとは聞いていたけど、上位種ならではの悩みなのかもしれない‥いや、女性と言う性別ならではの問題なのかもしれない‥


「それでも断る!私はリヒターと共に歩むと決めた!」


「私もです!例え絶縁してでも私は退きません!」


彼女達は口々に両親のお見合いに激しく断っている。

普通なら‥諦めて貰えると思うのだが、そうはいかなかった。


「ベル‥こんな手は使いたくねぇが‥腕づくでも連れて帰るぜ?」


「レイちゃん?痛い思いはしたくないよね?だから一緒に帰ろうね?」


母親と娘の戦いが目の前で起きている。

しかし‥喧嘩をここでして欲しくないし、そもそも僕としても契約解除はしたくない。

だから僕が割って入った。


「すみませんが、僕も契約解除する気はありませんので出て行ってもらえますか?」


一瞬にして冷たい視線がこちらを向く。

ご両親は気に入らない様で、レイの父ハルが威圧してきた。


「聞こえん、もう一度言ってみろよ?」


そう言って僕の胸倉を掴み睨んでくる。

当然睨み返す、ここで引くわけにはいかないし自分の意志は変えない。

そうして沈黙すると、ベルベットの父ガンビットが


「んー‥リヒター君、君は契約解除される方法がまだある事を知っているかい?」


そう言うと、すっと立ち上がり此方に近づいて来る。

何か異様な雰囲気を感じ、ナイトフォールを出してしまった。

それを見たベルベットはつかさず、僕の前に立つ。


「父様、もし‥リヒターを殺そうとするなら、私を殺してからにして下さい」


「ベルちゃん、退いてくれないかな。お父さんは本気だよ?」


無表情で言われる言葉は冷たく、本気だと感じた。

胸倉を掴むハルも緊張しているようだ、いつでも来いと言う印象を受けた。

ナイトフォールだけでは‥ダメだと思い、ベルベットとレイに伝えた。


「ごめんね、ベルベットとレイ。悪いけど‥あれを使うよ。この4人に出て行ってもらわないとならないからね」


そう言って、僕は一番危険で現状自分の持つ最強の魔法を展開した。


「ヴィズルポゼッション!」


その魔法を聞いた4人は一瞬にして、顔色が変わった。

ハルは距離を取り、ガンビットはその場で構えだす。

ベルベットとレイは必死に僕にしがみ付き止めようとする。


「リヒターダメだ!それだけは使わないでくれ!」


「止めて!これ以上寿命を削ったらダメ!」


彼女達に聞くと、これは寿命を縮める危ない魔法らしい。

でも、これで彼女達を守れるなら‥安い物だ。


「へぇ‥滅ぼす者と呼ばれたオーディンを憑依させる人間が居るなんてな!面白い!その喧嘩買ってやるよ‼」


好戦的なベルベットの母カガリは笑みを零しながら手をポキポキと鳴らしている。

しかし、つかさずガンビットが止める。


「ダメだよ、カガリさん。本気のオーディンと戦ったらカガリさんでも勝てないよ?それに‥本当の目的ではないでしょう?彼がオーディンを憑依させたからそれを止めに来たというのに‥」


それを見てハルは言った。


「‥リヒターそれを解除してくれ。その魔法の話をさせてくれ。娘を取り返したい理由は‥君のその魔法が原因だ」


「‥どういう事です?」


ガンビットから意外な事を言いだした。


「その魔法は、君の寿命だけじゃないんだよ、契約している精霊の寿命も奪う魔法、だから使うのを止めて欲しい、兎も角‥一度話をしよう」


その言葉を聞き、直ぐに解除した。

その事実にベルベットもレイも予想外だったらしく固まっている‥

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