第3章:カンパニー抗争と暴走

第36話:礼節が人を作る

冬休みが終わり、僕達は日常へと戻った。

変わった事と言えば、カンパニーの活動を縮小した事位だ。

しかし、皮肉にも依頼が頻繁に来てしまい困っているのも実情だ。

僕達は週末のみの活動としている為、どうしても対応できる依頼が限られてしまう。

エステルが何とか断ってくれているみたいだが、毎日数件来るそうで対応に困っているそうだ。

評判が下がる事は別に構わないのだが…今僕が一番困っている事は、鞍替えだ。

元々、別のカンパニーに頼んでいたが、評判の上がっている僕達の方へシフトしてくる依頼者が増えつつあり、他のカンパニーから嫌な目で見られているらしい。


そんなある日、僕達はギルドで依頼を確認していた。

テーブルに座り、何十枚とある依頼表を見てどれ位の時間が必要か、いつやるか等を考えスケジュールを組んでいた。

すると突然、岩が僕目掛けて飛んできた。

自然のブラインドガーディアンで反応し、岩を粉々に砕いた。

緊張が走り、僕達は岩が飛んできた方向を見た。

そこには1人の男が立っていた。

ベルベットとレイはその2人を睨む中、僕は冷静に話をした。


「何の用ですか?」


背の高く、冷たい印象を受ける鋭い目つきの男が答えた。


「お前に渡す物がある」


そう言って、手紙をテーブルへ飛ばしてきた。

手紙を開けると、招待状だった…決闘の。

汚い字で読み辛かったが…要約するとこうだ。


僕達の存在のせいで依頼が何本も奪われた。

お前達と決闘をする、負けたらカンパニーの解散。

相手のカンパニー名は…「グローザ」


男は僕がそれを受け取り読んだ事を確認すると、捨て台詞を吐く。


「しっかりと渡したからな、逃げるなよ?」


「待て」


「ああ?」


ベルベットは手紙を渡してきた使いの腹部をキレのある回し蹴りを見舞う。

彼は凄い速度で吹き飛ばされ、壁にめり込み血を吐いている。


「帰って雇い主に言え、殺される準備をしておけと」


一発でボロボロになった使いは


「お、俺に手を出したな…戦争が起きても知らねぇからな…!」


満面な笑みを浮かべるレイが彼に近づき耳元で何かを囁いた。

すると、その使いは顔が真っ青になりボロボロの体を引きずってギルドを出て行った。


騒ぎを聞きつけたエステルが駆けつけてきた。

彼女はギルドの壁の凹み、壊れた椅子やテーブル等を見てプルプルと震えながら僕達をギルドマスターの部屋へと連行され怒られる。


「またお前達か…頼むからギルドを壊すな!」


「不可抗力だ」


ベルベットは淡々と答えたが、エステルは納得していない。

ここは何が遭ったのかを説明した。


「グローザというカンパニーから決闘を申し込まれたんです」


そう言って彼女に貰った手紙を渡す。

彼女は名前を聞き手紙をみると顔色が変わった。


「グローザ…だと、リヒター止めておけ」


「何故です?」


「あのカンパニーは犯罪スレスレのやり方をしていて、裏では犯罪者と絡んでいると言われている、つまり良い噂の無いカンパニーなんだ…あいつらはどんな手を使ってでもお前を殺しに来るかもしれん…」


「でも…」


「良いか?止めるんだ、無視をするんだ、一旦カンパニーを休止させほとぼりが冷めるまでは…」


しかし既に全てが遅かった。

何故なら…そのグローザからの使いを一方的にボコボコにしているのだ…

その事をエステルに説明すると、大きな溜息を出しながら頭を抱えている。


「何て事を…お前達…何故そんな事をした!」


「言ったはずだ、不可抗力だと」


「マナーの悪い方に礼儀を教えてあげたまでです、悪い子には罰を。当たり前の事です」


この人達は本当にブレない、少なくとも相手は強大で犯罪者紛いの連中だ。

何をしてくるか分からない相手だと言うのに…


「…取り合えず、決闘は何時なんだ?」


「7日後に闘技場でやるそうです」


「ふむ…決闘となれば、トップ同士の戦いの筈だ…」


「あー…やっぱり僕戦わないとダメですか…」


「そうだな…今日はもう休め、明日までに相手の情報を集めて共有する。そしてリヒターもしっかり鍛錬するんだ。魔法だけで勝てる相手では無いかもしれない」


そう言って僕達はギルドを後にした。

帰り道、僕は気になっていた事があり、レイに聞いた。


「ねぇ、レイ?使いの人に耳打ちしてたけど、あれは何を言ったの?」


レイは妖艶な笑みで僕に教えてくれた。

その笑みは純粋さを表していると思った、だが…その後の言葉を聞き、考えを改めた…


「それはですね、次手を出したら、貴方の大切な人を〇〇して、XXXXして、生きてきた事を後悔する様な痛みを味合わせて、目の前で一家全員皆殺しにするって言ったんですよ?知ってる?人間にとって一番辛い事って…目の前で大切な人が…」


流石「悪魔」と言う通り名が付く筈だよ…正気とは思えない事を平然と言っている…

レイは敵対したら絶対ダメな人だ、精神を殺しに来る奴だ…


こうして僕は一方的な決闘を受ける事になった。

内心迷惑だと感じていたが、本当に迷惑で色んな事に巻き込まれてしまった。

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