第12話:のろいのこうかはぜつだいだ

ベルベットが言っていた呪いが効くのは1週間と言う事で、僕はその効果について聞いてみた。


「ねぇ、ベルベット。この前言ってた呪いの効果って何?」

「あれは、対象者に幻聴、幻覚等を使って精神を追い込む呪いだ」

「え…?」

「ん?つまりだ…24時間ずっと何かが頭の中で囁き、彼にしか見えない何かがずっと映っている状態だ、まぁ死にはしない、だが精神は…どうだろうな?」

「ベ、ベルベット…それは不味いのでは…」

「ふ、大丈夫だ、私達に辿り着ける者はいない。バレなければ犯罪にはならんのだよ…リヒター」


このベルベットと言う精霊は悪魔なのだろうか…

凄く綺麗で、クールな女性…なんだけど、言ってる事が悪人、人を痛めつける事に躊躇いがない…

僕が固まっていると、レイが会話に入って来る


「行った時点で罪です!なんという恐ろしい事を私のリヒター君に…!ベルベット、もう少し彼に良い影響を与える事をしなさい、彼はまだ17歳…私達精霊が彼を守り導く事こそが、彼にとっての幸せにつながるのですよ?」


「相変わらず堅苦しい奴だな…リヒターを苦しめる材料を消化しただけじゃないか?それの何が悪い?」

「やり方と言う物があるでしょう!」

「過程だと?結果だ、結果こそが全てだ、過程等どうでも良い」


2人が言ってる事は分かるけど…何とも言えない。


その日の晩、今日の父さんは凄く機嫌が良い。

いつもなら帰ってビールを飲み、仕事の愚痴を言うのだが…今日は帰りにお土産を買ってきたり、僕にお小遣いをくれた…母さんと僕は明日死ぬんじゃないかとヒヤヒヤしていた…


「今日はな、父さんの上司が退職したんだよ」

「え?」

「最近、ずっと訳の分からない事を言っていたんだ、やれ、悪魔がーとか消えろーとか…みんな怖がってたよ、それで今日突然辞表をだしたんだよ」


思い当たる節があり過ぎて僕はゆっくりとベルベットを見てみると…

サムザップして僕にウィンクをした。ああ…呪いの力でしたか…


「でだ…俺が繰り上げされ、隊長になったんだ!給料が上がるぞ!」

「あなた~私あなたと結婚してよかったわ~」

「ははは、そう抱き着くなよ、子供が見てるだろ、ヘレン」

「ふふふ…最高よ、ベントン…」


2人の世界を目の前で見せられ僕はお腹いっぱいとなり早々と自室へ帰った。

本音は、あれ以上見たくない…なんか寒気が…

椅子に座り僕は考えていた、呪いでそんな事になるとは…と


「ふふふ、これで分かっただろ?闇魔法は人を追い込んだり、傷つける事に長けているんだ、使い方次第で、色んな事が出来るぞ?」

「うん…そうだね、でも複雑な気持ちなんだ」

「ん?何故だ?」

「僕のせいでそうなったのかなって…」


ベルベットは僕の右隣に来て、耳元で優しく囁いた。


「良い勉強になっただろ…力の使い方についてだ…

リヒター、お前は私の持つ闇魔法を全て使う事が出来る、どう使うかはお前次第だ。だが…私個人の意見として間違った使い方をして欲しくないんだ…私の魔法はとてつもなく強力で、全てを無にする事だって可能だ。感情で使うんじゃない、良いな?」


「ふふ、大丈夫よ、呪いはもう解いたわ」


振り向くとレイがニコニコしながら入ってきた。


「ベルベットはね…貴方に力の使い方を教えたくて仕方なかったの。リヒター君は闇魔法を使わないし、知りたいともしなかったから…彼女は寂しかったのよ、長い間契約を待ち焦がれたのに、やっと契約出来たのに使って貰えなくてね…」


そう言うと、ベルベットは恥ずかしそうに顔を背けた。


「そうだったんだ…ごめんね、ベルベット…そんな気持ちにさせちゃって…」

「…ああ、これからは…上手く使ってくれよな…?」

「うん、約束するよ、ベルベット」

「じゃあリヒター君、明日は私の持つ魔法を使ってみましょうね?お姉さんが手取り足取り教えてあげるからね?」


こうして、闇魔法の危険性と慎重さが求められる事を知った。

闇魔法をどうやって使うかはまだ分からないけど、無意味な事に使わない事だけは心に決めた。

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