第27話 絶望
とある国の最新設備と最高峰の科学者、医学者が集められた研究所兼病院で、人間と病原菌の生死を賭けた戦いが行われていた。
「駄目だ、この薬も効かない」
『いや、Xバースター、一応は効果はあるぞ』
【こっちでは駄目だ】
[インゼツメツがこっちには効くが、こっちでは効かないぞ]
《なにかおかしくないか?この病原菌》
科学者達は新薬開発と、ワクチン研究をひたすらしていた。
それは最早、製薬会社や国の枠を超えた世界プロジェクトとして。
ノーベル賞を受賞したような、また、これから受賞に名前が出るような科学者達。
そこには各地から様々な情報も届いていた。
だが、既存の病原菌のように決定打が見つからなかった。
《この病原菌は、もしかして常に進化をし続けているのではないか?病原菌として安定していない可能性があるのではないか?》
[・・・・・・ありえる。ほんの些細な遺伝子配列がズレる。今だけでも30種類は確認できている。となれば薬が見つかってもすぐに耐性病原菌が出てくるぞ]
【だったら、ワクチンは完成したときには遅れた物でしかないじゃないか?】
『今、空気感染はしないが、もし進化を続けたら空気感染も?』
《そうなっては、世界は・・・・・・人類は消える》
そこにいた研究者達は、絶望の世界が見えていた。
死体が積み重なる光景。
次々と街で人間が倒れる光景。
中世ヨーロッパでのペストの蔓延を描いた絵のような地獄の世界。
人間が消え去る地球の光景を想像した者。
文明が作り上げた都市が崩れていく光景が見えた者。
一人は膝から崩れ落ち、一人は神に祈り、一人は自分の机にしまってあった酒を飲み、一人は家族が移っている写真を抱いている者もいた。
科学が敗北を宣言しようとしていた。
「今までの技術の常識では駄目なんだ」
「ならどうする?」
「悪魔に魂を売った者に力を借りるしかないのかもしれない」
「那珂湊か・・・・・・」
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