50 存在感とか色々デカすぎるお姉さま

 学園祭、当日。


「お帰りなさいませ、ご主人さま♡」


「か、かわえぇ~」


 我がクラスのメイド喫茶は、好調な滑り出しだった。


 特に……


「なあ、あの子ヤバくないか?」


「あの黒髪ショートヘアの子だろ?」


「ワンチャン、ナンパできっかな?」


 僕はムッとする。


 けど、仕方がない。


 こうなることは、分かっていたから。


 もう既に味わっているけど……やっぱり、メイド姿の真由美ちゃんは超かわいい。


 他の女子も可愛いけど……やっぱり、真由美ちゃんが1番だ。


 だから、エロ男どもが鼻の下を伸ばすのは分かる。


 けど、残念だったな。


 その子は僕の彼女で、しかも僕にだけ、エッチなことをしてくれるんだ。


 しかも、この前、そのメイド姿でご奉仕をしてもらって……


「こら~、仕事中にボケッとするな~!」


「ご、ごめんなさい~!」


 と謝るけど、僕は即座に違和感を覚える。


 振り向くと……


「あ、灯里さん!?」


「やっほー、翔ちゃん♪」


 笑顔の灯里さんがいた。


 僕が騒いだせいで、みんなの注目が集まる。


「えっ、誰だあの超美人のお姉さま?」


「色気が半端ねぇ……」


「乳デカッ……」


 それまで真由美ちゃんに夢中だった男どもは、一転して灯里さんに興奮の目を向ける。


「あっ……」


「真由美ぃ~、似合っているわよ~」


 ひらひらと手を振って言う。


「えっ、あの人、真由美ちゃんの知り合い?」


「うん、実は……私のお姉ちゃんなの」


「「「「「「えぇ~!?」」」」」」


 クラスメイト達は驚愕した。


「どうも~、いつも妹がお世話になっていま~す♪」


 灯里さんは少し前かがみになる。


 その豊かな谷間が見え隠れすると、


「「「「「「い、いえ、こちらこそ……」」」」」」


 クソ男子どもが鼻の下を極限まで伸ばし、クソだらしない顔になった。


「おいおい、翔太よ~」


 親友の大樹が声をかけてくる。


「お前、マジで役得だな~。美人姉妹とお近づきになれて」


「いや、まあ……」


「まさかとは思うけど、彼女の姉貴ともよろしくやってないだろうな?」


「……やってないよ」


「否定が弱いぞ?」


 などと問い詰められ、冷や汗をかいていると。


「う~ん、妹の淹れるコーヒーでも飲もうかと思ったけど、忙しそうだから……」


 灯里さんが、僕の腕に抱き付く。


 むにゅっ、と極大に包まれた。


「あっ」


「「「「「「ああああああああああああああああぁっ!?」」」」」」


「真由美ぃ~、ちょっとだけ、彼氏くん借りるね~?」


 灯里さんの白々しい物言いに、真由美ちゃんは涙目になって睨み返す。


 けど、そんなのどこ吹く風。


「さっ、翔ちゃん。お姉さまとデートしましょ?」


「いや、僕もまだ仕事が……」


「つべこべ言わなーい♪」


 グイ、と強い力で引っ張られる。


「わ、分かったから、乱暴にしないでぇ~!」


「アハハ! 翔ちゃんってば、女の子みた~い」


 などと連行されていると、


「「「「「「……翔太もげろ」」」」」」


 背後から、モテない男どもの声が重く響いて来た。


 当然、気付かないフリをする。


 後でクソめんどくさいだろうけど。




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