第14話  変化

マニュアル制作も初めてのことでなかなかうまく進められなかったが、教育係に聞きながらどうにかまとめることができた。厳しい人だと思っていたが、意外にも優しく教えてくれた。

出来上がったものを中途に提出に行くと、

「うん。良いんじゃない?お疲れ様。上にも提出してくるね。」

「え?上にも報告されるんですか?」

「そうですよ。念のためですけどね。部下の仕事もしっかり把握しておくことが上層部の務めでもありますからね。」

と言いながら去っていった。

あんな仕上がりで良かったのだろうか。中途の人にしか見せないと思っていたので、少し雑さが残ってしまっている。

「あ、待ってください!」

という声もかけられないくらい颯爽と去っていった。

教育係の人にも見てもらってOKは出たが、まさか上層部にまで出すとは思っていないだろう。

自分のフロアに戻ると、教育係が声をかけてきた。最近少し話すようになっていた。

「どうだった?」

「・・・上層部にも報告するそうです。」

とても言いづらかったが、悪いことほど早く報告した方が良いと教え込まれていたので、報告する。

「ふーん。それだけ?」

「え?」

「だって上層部に報告するのは当たり前でしょ。うちの会社は特に上の下と割とすぐ繋がっているから。社長がそういう方針でね。特にここに新しく入った人たちとは深く関わろうとするからね。」

「そうなんですね。」

「まぁ、お疲れ様。」

「手伝ってくださってありがとうございました。」

教育係は手をひらひらさせながら、自分の持ち場に帰っていった。

そういう職場なのか。

地方にいた時は社長は天の上の人と思っていたが、そこまでとっつきにくい人ではなさそうだ。


数日後よく目を合わせるようになるなんてつゆも思わなかった。

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