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◆A～Z◆

▼Agate（アゲート） crown（クラウン）：

　意味は「瑪瑙（めのう）の王冠」。力強いサウンドと抒情的なヴォーカルで人気のロックバンド。万単位のライブを開催できる稀有な存在。

▼AF‐705：

　Revelation（レベレイション）社が販売する最新機種の感情型アンドロイド。シリルを構成する機体でもある。

　表現力豊かな楽器演奏をも可能にする繊細な手先の動きと表情、それに他社の追随を許さない高性能脳機能W（ドゥブルヴェ）によってはじめて実現された大容量高精細感情プログラムにより、これまで以上に高い人間性を勝ち得た機種。AFはAuto(matic)とFellow(ship)の頭文字。後継機はAF-1050E

▼Cdf：

　五十畑と宮木が勤務するRevelation（レベレイション）社では旧世界のベルギー海洋構成部隊の階級を模した職位名を採用している。

　Cdfは五十畑の職位を表す階級名。フランス語でCapitaine de frégate、旧世界ベルギー海洋構成部隊での中佐を表す。課長職相当。

▼Cdv：

　Cdvはフランス語でCapitaine de vaisseau、旧世界ベルギー海洋構成部隊での大佐に相当する。課長と部長の中間にあたる複数のポストのうちの一つ。

▼CLEDライト：

　民生用LEDライト。LEDライトより耐久性や信頼性がかなり低い

▼CT社

　アンドロイド販売台数業界五位のアンドロイドメーカー。後発企業で、独特のデザインや発想と設計思想が注目されている。

　CTは、Collett Technologyの略。

▼Garland（ガーランド） chrysanthemum（クリサンサマム）：

　春菊の英名

▼Gボウル

　Gravity Ball。最も人気のある球技。高重力もしくは低重力下で複数のボールを使ってプレイする。男子リーグが人気の主流。あえて旧世界スポーツに例えるならバスケットボールが最も近い、と言えなくもない。

▼HUGUR（フューグェル）：

　アイスランド語で「心眼」の意。アンドロイドの脳機能のバグチェックに使われる機器でWraithをはじめ大概のバグを発見できる。

▼Kreuzstern（クルツシュテン）社：

　Kreuzsternとはドイツ語で十字星の意。荻嶋（おぎしま）希美代（きみよ）の父が幹部技師のトップとして勤務している。販売実績業界第一位。

▼Ldv：

　宮木の職位を表す階級名。フランス語でLieutenant de vaisseau、旧世界ベルギー海洋構成部隊での大尉を表す。主任から係長相当。

▼ ornis（オルニス）社：

　域内車輛大手生産メーカーのひとつ。ほとんどの車種を生産している。ギリシャ語で「鳥」を意味する。その名の通り旧世界の原始的な鳥がエンブレムになっている。英語に直すと"omen”

▼PM-300XEタイプ4：

　Kreuzstern（クルツシュテン）社製造の第二世代アンドロイドで主に宇宙船や衛星軌道上施設のメンテナンス用途に設計された。新暦332年販売開始。船外活動のほかにコミュニケーションを通し乗員作業員等の精神を安定をはかる初歩的な人格モジュールも搭載されている。

　当時よりはるか以前から18歳以下の外形を有するアンドロイドの製造は原則禁止されていた。デミレル療法に使用するなどの相応に合理的な理由がない限りこのようなアンドロイドが作られることはない。

▼Revelation（レベレイション）社

　レベレイションとは天啓、啓示、暴露を意味する。矢木澤シリルを製造したアンドロイドメーカー。販売実績業界第二位。

▼Rusty（ラスティ） path（パス）：

　大人気刑事ドラマ「ルイス＆ニック」のメインテーマソング。直訳すると「錆びついた道」。ここでいう道(path)とは「小道」「旅路」「あるべき道」「生き方」「行く手」と言ったニュアンスも含む。

　ほろ苦い結末を迎えることの多いストーリーにマッチした、パワフルな中にも哀切な響きを残す良曲。第23回アルギエバ賞受賞。

▼Ｗ（ドゥブルヴェ）

　ドゥブルヴェはWのベルギー語読み。Revelation（レベレイション）社が生産しているアンドロイドに搭載されていた脳機能で、X（イクス）の前モデル。XよりWraithが発生しやすいのではないか、と疑われていた。

▼Wraith（レイス）：

　Wraithとはスコットランド=ゲール語で「亡霊」「死霊」「失った肉体を探しさ迷う生霊」を意味する。

　Revelation（レベレイション）社製アンドロイドの脳機能にごくまれに発生する自律性感情系バグ。これが発生したアンドロイドは、感情プログラムやチューニングされた感情、ロボット工学三原則、思考行動制御抑制プログラムだけでなく、「自爆プロセス」さえも無視し、あたかも心があるかのように振る舞う。最終的にはWraithによって感情プログラムが書き換えられたり制御下に置かれるなどして、脳機能は完全に自律した心を得る。感情プログラムを隠れ蓑にするので発見が困難。発見にはHUGUR（フューグェル）と言う機器を使うのが一番確実。

▼X（イクス）：

　イクスはXのベルギー語読み。Revelation（レベレイション）社製の感情型アンドロイド用脳機能。Wの後継機。近々最新モデルのY（イグレック）にモデルチェンジされる予定。

▼Ｙ（イグレック）：

　現用の脳機能Xの後継機。近日発売予定。これでWraith問題は一掃されると期待されている。

◆あ行◆

▼アトルキア：

　主に惑星や域外での作業用として近年開発された爆薬。高威力で簡単に暴発しないため重宝がられている。粘土のように自由に形を変えられるという利点もある。

　あらゆる面において優れているため犯罪やテロに使われる事もあって、その取り扱いには厳しい制約がかけられている。

▼アルジェ：

　創業70年を超える伝説的な超老舗洋菓子店。8街区に2店舗を構える。オリジナルケーキ「トーラスババリア」が有名。その他ではタルトや各種ゼリー、オムレットも好まれる。10～13街区からの来店客も多い。

▼アルパンタン：

　アルパンタン山。惑星ローワンにある独立峰で標高5,334メートル。コーヒーの栽培が盛んで、中でも旧世界から親しまれてきたグアテマラは非常に高く評価されている。山の名称の由来は不明。旧世界の中南米にいたとされる神の名前だと言われているが、そのような神は存在しない。

▼アンガス効果：

　脳機能内の感情プログラムは特定の感情が強くなりやすくなるよう設計されている。これによって機体ごとに感情の偏りが生まれより個性的な機体が実現される。だが長期稼働機体の脳機能にある感情プログラムではこのアンガス効果により感情の偏りが顕著になってしまうとされている。理由はまだはっきりしない。

▼アンドロイド：

　いくつかの惑星のテラフォーミング用に開発された人型機械。人間の姿を模しており、強靭頑健で精密な作業も難なくこなし労働争議も起こさない。これによってテラフォーミングの工程は大幅に短縮された。

　10数年前よりいわゆる「感情型アンドロイド」の販売が認可された。複数のメーカーが販売を開始したが、あまりにも高価なため全くと言っていいほど普及していない。

　その普及台数にもかかわらず既に社会問題を引き起こしつつあり、また感情プログラムに深刻なバグが発生するのではとの噂も絶えない。そのためその是非を巡って人々の意見は真っ二つに割れている。

▼「アンドロイドは本来、その手を避ける動作をするようにプログラミングされている」

「強制的に働くはずの手を振り解くプログラム」

「こうした場合に動くと言われる強制停止機能」：

　人間とアンドロイドの身体的接触は忌避的行為とされている。そうした行為目的にアンドロイドが利用されることを防ぐためである。忌避的行為を行うアンドロイドは脳機能がバグ、エラー、ウィルスなどに汚染されているか、もしくは欠陥品や違法改造品であるとみなされ、内蔵された自爆プログラムなど複数のプログラムによりその場で脳機能を強制的に停止させられるよう設計されている。

▼ヴェデルニコフ膝蓋（しつがい）アクチュエーター：

　膝蓋部アクチュエーターとはアンドロイドの膝蓋部(膝)に埋め込まれる小型動力の1つ。シグマモーター社製。

▼宇宙ヨット：

　“太陽帆”を備え付け帆走する宇宙船。旧世界イギリスのジョン・デスモンド・バナールが西暦1929年に出版した書籍「宇宙・肉体・悪魔理性的精神の敵について」において提唱される。旧世界日本の実証機が太陽帆による光子加速を実証したのが先鞭となる。

　推力は非常に小さいものの燃料消費をせず航行できる利点がある。そのため小型で長距離運航する船舶に向いているとも言える。

　ただし、希美代が所有するジルコニア号は宇宙ヨットとしての機能を損なわない程度の小型液体ロケットエンジンも搭載している。

▼液体メタン：

　もっとも簡単な飽和水素であるメタン(分子式CH4)が液状化したもの。常温常圧下では無味無臭の気体だが、沸点である－161.52℃以下の低温になると液化していく。　旧世界太陽系第六惑星である土星の第一衛星タイタンでは液体メタンの雨が降り川や海を形作って循環している。

▼エビデンス：

　旧世界中英語“evidence(ev‧i‧dence)”を語源とする単語。主張を裏付けるために提示された事実または観察を意味し、「証拠」「証言」「(科学的)根拠」「裏付け」「形跡」「確率的な情報」と言った言葉として用いられる。

▼オオハシ：

　旧世界の中南米に生息していたキツツキ目の鳥類。大嘴（おおはし）、または巨嘴鳥（きょしちょう）とも。全長30～60cmほど。異常に大きい鮮やかな色彩のくちばしを持つが、その理由はよくわかっていない。

▼鴛鴦：

　爽やかな切れ味の一方で麦の香りが濃厚な麦焼酎。かぐらでは麦焼酎は一般的に少々高額。

▼オタハイト：

　旧世界ソシエテ諸島のタヒチ島の旧称。タヒチ語でタヒチ島を意味する固有名詞として使用されていたが、のちに誤用であった事が判明。18世紀にはオタハイトの名称は廃止された。

◆か行◆

▼街区：

　ここでは所得や社会的地位に応じて居住可能な街区が厳密に定められている。10から上の街区は一般的に高級住宅街とされる。

　伊緒の住まいは7街区。シリルの住まいは10街区。

　12街区は大企業要職、ちなみに13街区は「殿上人」、つまり政財界の要人が住まう。10～12街区には小奇麗な観光施設も多く、デートコースの定番。ごく簡単な手続きを取ればほとんどの人とアンドロイドが入れる。10街区だけは許可なく出入りが可能。13街区に入るにはそこの住人の許可でもない限り厳しい審査が必要。

▼ガニメデマン：

　子供たちに大人気のヒーロー番組。これまでに40作品余が放送されているが、なぜか初代番組のガニメデマンの名前で呼ばれることが多い。未就学児の将来なりたい職業ランキングに出た事もある。これに出てくるロボットは、皆いかつくて武骨でゴツゴツしている。

▼感情プログラム：

　アンドロイドの脳機能に収められているプログラムで、人間に似せた表情や言動を取らせるためのAI。驚くほど人間そっくりな受け答えをすることができるが、それにも限度はあり、一般に販売されている感情型アンドロイドの感情プログラムの性能では、人間の心の多様性や複雑さにはまだ及ばない。数年ほど前から感情プログラムに心が生まれるバグが出始めていると、まことしやかな噂が流れている。メーカーによっては人格モジュールと称するところもある。

▼旧世界：

　地球、あるいはかつて地球が世界の中心だった頃の世界。またはその時代。

　こちらからでは詳細が観測不能な「大厄災」によって地球との連絡が途絶する以前の世界。「黄金期」と称する人々もいる。対して現代は「現世界」「黄昏期」と呼ばれる。

▼胸骨剣状突起：

　みぞおちの辺りにある胸骨の一つ。文字通り短剣のような形をしている。アンドロイドでも恋をするとこの周辺がきゅんとする。

▼興味本位のからかい目的：

　発売開始から10年以上が経っていても、感情プログラムを持ったアンドロイドは未だ普及せず、大変珍しいものだった。また、これら感情型アンドロイドは全く人間と同じ外見を持ち、(表向きは）意思疎通もできるので、これに興味を持って新車や新型パーソナルコンピュータに触れる感覚でアンドロイドに接触を試みる者は多い。

　また、それ以外の意図で身体的接触を試みる者すらいる(それを防ぐための機能がアンドロイドには実装されている)。彼らはアンドロイドをただの機械だと認識しているので罪の意識など一切持たないのが普通である。

▼躯体（くたい）：

　アンドロイドのフレームと駆動部といった基礎的な構成を指す場合だけでなく、アンドロイドの身体全体を指す場合もある。

▼玄能（げんのう）：

　大型の金づち。鑿（のみ）を叩いたり物を壊したるするのに用いる。破壊力は普通のハンマー以上。

▼公立鴎翼（おうよく）高校：

　7街区から10街区までを学区とする庁立高校の一つ。各組25～28名で、各学年10～12クラスで構成されており、近在の高校としては特筆すべき生徒数。

　春の球技大会、夏の体育祭、秋の文化祭、冬の音楽祭があるが球技大会、中でも春の球技大会におけるバレーボールは最も人気がある。

▼ゴーギャン：

　ウジェーヌ・アンリ・ポール・ゴーギャン。画家。

　画家として様々な経歴を経た後42歳で旧世界タヒチに渡航。その地に楽園を見出し、いくつもの絵を描いた。のちにはマルキーズ諸島に渡りそこのヒバ・オア島で没する。享年54。代表作は「タヒチの女たち」、「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」

▼ゴクラクチョウ：

　正式な和名はフウチョウ。スズメ目フウチョウ科の鳥類の総称。旧世界のオーストラリアとニューギニアに生息していた。飾り羽の美しい鳥で、それ故に脚と翼を切り落とされ、枝に止まることなく風に乗って生きる「天国の鳥」との売込みで売買されていた。フウチョウの名は「風を食べる鳥」の伝説から採られた。

▼コロニー2893

　恒星デズモス(δεσμούς)と惑星ローワン(Ρόουαν)の直線解上にあるオニール型コロニー群のひとつ。伊緒、シリルらが暮らす。建造は中時期で、太陽電池、隔壁、環境維持設備などに老朽化の影響が出始めている。にもかかわらず統合政府による惑星行きスケジュールでは後塵を拝しており市民の間に不満と不安が高まっている。太陽とコロニー群の間に遮蔽物がない為太陽観測基地が設置されている。　域内建造物の建築様式は全て旧世界懐古調様式によって統一されており、まるで二十一世紀初頭そのままの景観である。

◆さ行◆

▼笹倉堂：

　7街区に店を構える和菓子店。煎餅、最中、饅頭などを取り扱い、中でもオニール栗最中や最近なにかと話題の醤油煎餅では定評がある。10以上の街区の人々からも支持を受けている。

▼参式腰部中継情報補助組織：

　財部（たからべ）演算組織基板社製。腰部中継情報補助組織と言うのは、アンドロイドの腰部(腰)に置かれる脳機能を補助する装置。独自の演算能力で主に下半身の運動と均衡維持を制御する。

▼紫苑：

　キク科シオン属。夏の終わりから秋にかけて薄紫色の直径2～3cmの花を咲かせ観賞用として好まれている。学名の属名や英名のAster（アスター）はギリシャ語で星を意味する。

　花言葉は「追憶」「君を忘れない」「遠方にある人を思う」「patience（忍耐）」「daintiness（優美、上品、繊細）」「symbol of love（愛の象徴）」

▼飾磨（しかま）IC：

　ICはインダストリアルケミカルの略。アンドロイド部品供給企業としては屈指の大企業。最近大きな疑獄（ぎごく）が浮かび上がり信用を失墜しつつある。

▼シカマ人化工業：

　アンドロイドの筋繊維(人工筋肉)、人造皮膚、人工毛髪、人造眼球など「柔らかい」パーツを生産している。現在母体企業の飾磨（しかま）ICが疑獄（ぎごく）の渦中にあり、シカマ人化工業も急速に受注を減らしている。

▼ショパンの夜想曲（ノクターン）第19番：

　作品72-1　フレデリック・ショパンが17歳の旧世界西暦1827年に作曲した。ショパンが初めて作曲した夜想曲。ショパンの夜想曲としてはあまり注目されていない。暗鬱で救いの乏しい曲調が聴く人を吸い込んでいく。

▼シリル：

　シリルの名前は英仏語圏の男性名"Cyril”から来ている。ギリシャ語由来で「威厳のある」を意味する。

▼人格モジュール：

　Kreuzstern（クルツシュテン）社では「感情プログラム」のことを「人格モジュール」と呼称している。機能については同じ。

▼スキルスロット：

　アンドロイドの機種により数は異なるが、複数のスキルスロットが実装されている。ここに各種の技能(スキル)をこなせるスキルチップを直接脳機能に挿す、またはインストールしたりする。これにより個性豊かな個体を実現することが可能となる。シリルには8つのスキルスロットが実装されている。

▼スコアアタック

　Ｇボウルのペナルティ・チャレンジを真似て一般向けに生まれた競技。2～6名のプレイヤーがタイムアップまでどれだけゴールできるか競う。普通重力操作はしない。

▼スペースワーカー：

　外部からの入力で作業をする作業ロボット。主に域外作業や域内危険区域の土木作業に用いられる。芋虫型から蜘蛛型、二足歩行型まで用途に応じて多様性に富む。

▼総合携帯端末：

　旧世界のスマートフォンにほぼ同じ。所有者が個人番号と紐づけられていたり、3D画像を投影出来たり、通信範囲や電池容量の著しい向上が見られる。

▼素体C：

　かつて極秘裏に脳機能の試験に供されたW（ドゥブルヴェ）搭載型アンドロイドを指す。Wraith（レイス）の発生など複合的な要因で機体は全壊し計画は失敗に終わったとされる。詳細は不明。アンドロイドの軍事転用を模索していたとも噂されている。

◆た行◆

▼第三域高度自律性人造躯体（くたい）に搭載される脳機能に関する重大な注意喚起：

　「第三域高度自律性人造躯体」とは一般販売されている感情型アンドロイドの法規上での名称。

　各メーカーのアンドロイドの脳機能においてWraithと同様の致命的なバグがごくまれに発生することが電機電子福祉局の調査で明らかになった。それを重大視した当局はこの注意喚起を告示。各メーカーにバグ発生の抑止と品質管理の徹底を、この注意喚起文で強く指導した。

▼第二世代（アンドロイド）：

　アンドロイドの世代を表す分類で技術的に第二段階目の生産品を表す。第二世代に属する感情型アンドロイドは、まだ開発の端緒についたばかりで、一般にはほとんど販売されていなかった。

　ちなみにシリルやジルは第八世代アンドロイド。

▼ダイレクトドラマ：

　外部機器を通し直接五感に働きかけることで視聴するドラマや映画。平均的なマルチグラスでは観られない。

▼チューリエ頸椎：

　頸椎とは人間を含むほとんどの哺乳類で言うところの首を構成する七つの骨。アンドロイドの頸椎は人間のそれと同じく様々な情報やエネルギーの伝達組織が密集している重要な部位である。

　チューリエ頸椎はカクタ躯体工房製で品質にはややムラがあるもののその分安価である。

▼定置場：

　車輛であれば、その運行を休止した場合において、主として駐車する場所とされる。アンドロイドの場合は、登録住所地と同一であり、かつ活動を休止して充電時に留め置く場所、とされる。

　シリルの場合矢木澤邸がそれにあたる。

▼デミレル療法：

　アンドロイドを使った精神療法の一つ。感情型アンドロイドの一般販売認可後、アントニー・デミレル医師が考案した。大切な人に死なれた事を受け入れられず精神の均衡を崩した人に対し施される。

　外見や感情プログラムが故人そっくりのアンドロイドを治療対象に付き添わせ、カウンセリングプログラムを通して故人の死の認識と受容を促す。対象がアンドロイドに対し極度の依存に陥るリスクが非常に高く批判が強い。その為、ごく一部の深刻な状態の対象にごく短期間行われるのが通例。

　保険適用外の治療であるため高額なアンドロイドを購入するか、もしくはやはり高額を支払って脳機能や外見を細かく調整したアンドロイドをレンタルする必要がある。感情型アンドロイドはレンタルを含め極めて高価なため、誰にでも手が出るものではない。そのためデミレル療法は普及した治療法とは未だ言えない。

▼テラフォーミング：

　惑星を人の手で地球そっくりの環境に作り変え、人間が快適に居住できるようにすること。

　多大な労力と時間と資源を要しその実現は困難を極めていたが、アンドロイドの出現により作業環境は一変。急速に作業は進行しつつあり、既に入植開始にまでこぎつけた惑星もある。

▼電機電子福祉局：

　市民生活省生活福祉庁下の省庁。電機製品による市民の福祉を指導、支援する。その電機製品中にはアンドロイドも含まれている。

▼トークン：

　一言でいえばアンドロイド用のリモコン。オレンジ色で涙滴（るいてき）型。ヒューマンモードや観察モード、オーナーガードモード、クッキングモード、人命救助モードなど様々なモードをボタン一つで命令できる。

▼ 統合安全保障局　実動保安隊

　Integrated Security Bureau Operating Guard Corps　（ISB OGC）　複数世界に跨る治安組織。

　その名前は知られているものの規模や組織の詳細、具体的な活動内容などは一切公表されていない。噂でしかその存在と活動が語られていないためになおさら人々の恐怖の的となっている。

　その噂としては、苦痛と恐怖を駆使し、人権への配慮が一切ない尋問や拷問、狡猾で卑劣な捜査、子供であろうと躊躇なく殺害する残忍さ、などが主に挙げられている。

　ただ、このような噂をわざと流布することによって、反社会勢力や犯罪者のみならず市民の全てに統合安全保障局を恐れさせ、治安維持の一助としているのではないかとする向きもある。

◆な行◆

▼脳機能：

　一言でいえば人工知能(AI)。

　アンドロイドそのものの制御に関わるプログラムだけでなく、人間の思考や感情を模した言動を取るように設計されたアンドロイド用の人工知能（感情プログラム）も含めて脳機能と総称する。

◆は行◆

▼ハイパワーフレーム：

　人体の外側に装着する作業支援用筋力補助フレーム。腰と肩腕を補助するものから、ほぼ全身をフレームで覆うものまで、用途に応じ形状は様々。

▼パーソナルスペース：

　人間で言えば、他人に近づかれると不快になる距離。アンドロイドの場合、躯体の安全を図るための各種機能が起動する距離。感情プログラム上も嫌悪の感情が出ることが多い。

▼バナール球：

　旧世界のイギリスでジョン・デスモンド・バナールが西暦1929年に出版した書籍「宇宙・肉体・悪魔理性的精神の敵について」における提案に基づきデザインされたスペース・コロニー。直径1.6kmの球体に2～3万人が居住できる。

▼パワーラッシュ：

　ボールを奪ったプレイヤーが、複数いる相手プレイヤーの妨害を排除またはかいくぐり、制限時間内にゴールを目指す。大抵の場合ゴールできるプレイヤーはいないため、最も長い距離を走行したプレイヤーが勝利する。女子リーグの方が圧倒的に人気が高い。

　あえて旧世界スポーツに例えるとするなら複数人で個人プレイするローラーゲームと言えるかも知れない。

▼ヒナ：

　タヒチのみならずソシエテ諸島、クック諸島、ニュージーランド、ハワイ諸島など旧世界の広い地域で信奉された女神。タヒチでの伝承によると、ヒナは夫のテトゥナを捨てマウイのもとへ走る。

▼ヒューマンモード：

　アンドロイドの性能を落とし、人間と同等以下の能力にまで低下させる機能。レクリエーションに使われる場合がほとんど。各年齢と性別に合わせランダムに能力を低下させる。ランダムに能力の低下具合が割り振られるため、中には平均値を超える能力が出る場合もある。もっともその分他の能力にしわ寄せがくるのだが。

▼フェミニン：

　女性らしい（とされる）上品なファッション。対語はガーリー。

▼predestination（プリデスティネイション）：

　英語で宿命、前世の約束、予定説、約束の意。一般的には名前に使う言葉ではなく、いわゆる「キラキラネーム」とされる。

▼フレーム問題：

　アンドロイドの脳機能にある行動をとらせる際、人間からしてみれば排除されてしかるべきささいな可能性をも全て抽出して考慮しまうため、脳機能が過負荷状態に陥り機能停止してしまう問題。

　アンドロイドに実装されているロボット工学三原則プログラムは、このフレーム問題が発生し難いように同プログラムの重要度や優先度を意図的に下げている。

▼閉架アルファレポート：

　Revelation（レベレイション）社内で全社員に送信され共有化される月例アルファレポートとは違い、申請したものでないと閲覧できない技術レポート。

▼ペトリコール：

　雨が降る際に地面から立ち昇ってくる独特の香り。植物由来の油分や土壌生物が作り出す物質、オゾンなどによって生み出される香りとされている。

▼ホワイトアッシュ：

　高級木材。清潔感がある白が美しい重い木材。緩やかな曲線で構成された年輪が優美。強度や柔軟性に富む。

◆ま行◆

▼マルチグラス：

　眼鏡の形をした端末。智、山、モダン、つる、レンズなどに様々な機能や操作ボタンがついている。これ一つでネットに繋いだり、通話したり、メッセージを送受信したり、VRゲームをしたり、映画を見たり、撮影や録画をしたり、と様々な用途に使える。リモコンで操作できる機種もある。

▼マルチグラスムービー：

　マルチグラスで見るVRムービー

▼モーターブレード：

　モーターで駆動するインラインスケート。パワーラッシュで使用されるものと原理的には同じ。定められた場所での使用しか認められていない。公道での使用は罰金二十万円以下、禁固三年以下の刑罰が科される。しかし、実際に摘発される例はごく稀。

▼モノフィラメントウィップ：

　単分子構造鞭。白兵戦で使用される個人携帯武器。単分子の金属糸に安定を保つための分銅が付いていて、これを振り相手に当てて切り裂く。兵器の中では最も効率よく人間や物体を切り刻める。あまりにも非人道的だと取りざたされる事も多かった。金属糸は厳密には単分子ではない。兵器であるため現在は製造も所持も使用もされていないが、ごくまれに闇社会で密かに出回っていると噂され、そうした社会での最悪の武装ギャング「ストリートサムライ」たちがこれを振るうのだと言う。

◆ら行◆

▼ルイーニャ（luinha）：

　伊緒の経営するクリニック。人間の内科と消化器内科とアインドロイド総合診療科を掲げている。自宅と棟続きになっている。クリニック名の由来はポルトガル語で『小さな月』。惑星ローワンの月は三つあり（プルートス＜Πλοῦτος＞、ダミアー＜Δαμια＞、カローン＜Χάρων＞）そのいずれも地球の月とは比べ物にならないほど小さい。

▼ルイス＆ニック(Lewis & Nick)：

　3Dテレビやダイレクトドラマで大人気の刑事もの。最終的に20シーズンまで放映された。ルイスは栄光を意味する名前で、ニックは盗みを意味するスラング。正義感の強いルイスと狡辛（こすから）いニック、そりの合わない二人組の刑事が数々の難事件を解決していくほろ苦いストーリー。お笑い担当のサブキャラにベンジャミンがいる。

　有名なセリフとして「見えないところでもう事件は起きているんだぜ」がある。第八シーズンから若干修正されて「事件はいつだって俺たちの見えないところで起きているのさ」に変更される。

▼ロボット工学三原則：

　「2058年のロボット工学ハンドブック」に記載されていた原則。人間を守り、人間の命令を守り、自身を守る。この三つを矛盾しない限り遵守することをロボットは求められる。旧世界でも遥か過去の原則だが、アンドロイドの行動規範としても取り入れられてプログラムされている。

◆わ行◆

▼惑星行き：

　近年、惑星ローワンのテラフォーミングが完了し、順次コロニー群からの移住が開始されている。一部の業種の市民を除き、希望者はこれに応募し抽選に当選すると“惑星行き”の資格と住居を得られる。