第51話 王妃様たちのプライベートルーム
私はエド様と別れ、侍女たちに支度をしてもらって王妃様のお部屋に案内された。
多分、自室では無い。王妃様や王太子様、第二王子のルイ様がいらっしゃるわ。
我が国の王族の生活エリアは国王陛下の生活エリア、王妃様の生活エリア、側妃様方それぞれの生活エリアに分かれているので、ここは王妃様とその子供たちの歓談室のようなところなのだと推測される。私が自分のお部屋として賜ったのも王妃様の生活エリア内のようだし。
皆様、ソファーや椅子……思い思いのところに座って紅茶を飲みながら午後の
テーブルには、お菓子がふんだんに置いてあるし。
「意外と早かったわね。もう少しエドマンドが引き留めると思っていたのだけど。でもまぁ、エドマンドも思ったよりこらえ性が無いのねぇ。引き離して正解だわ」
王妃様は、私が部屋に入るなりそんな事を言っていた。
王子様たちは、苦笑いしている。
「すまない。母がそなたたちの情事を盗み見るような真似をして」
王太子殿下は、自分の母親の所業を謝って来た。ごめん止めれなくて……と言う感じで。
「わたくしたちの……じょうじ?」
じょうじ……情事。
私は、カーっと顔が熱くなったのを感じた。見られてた、ヤダ、エド様とのキスシーン……皆様に見られてたなんて。
「まぁ、エドマンドのあれは確信犯だよね。僕らに見られているのわかっていてやってるもん」
そう言ってきたのはルイ様。
でも、もう私は頭の中がパニックになってしまって、ルイ様の呟きどころでは無かった。
私が真っ赤になって固まっているうちに、王妃様が私の所にやって来てる。
「マリー、いつまでも入り口に突っ立っていると、出入りをする侍女たちが困ってしまうわよ。さぁ、こちらにいらっしゃい」
私は王妃様に手を引かれてボーっとしたまま歩き出そうとして失敗した。
足がもつれて転びそうになったところを、王妃様がその身体で受け止める。
はからずとも王妃様から私は抱きしめられる感じになってしまった……とういか、私の背中に両腕を回し、はっきり抱きしめられている。
「も……もうしわけございません。王妃様」
私は、離れようとしたのだけど、意外と王妃様も力が強い……って、そうか最近まで殿方に交じって戦場を駆け回っていたのだっけ。
「お母様でしょう? マリー。ああ、やっぱり女の子はいいわね。ふんわり柔らかくて、軽くて。可愛らしいわ」
なんだか、私を堪能しているって感じて王妃様は言われているけど……。
「悪かったですね、母上。がっしりしてて、硬くて重く。可愛らしくない息子しかいなくて」
別段、ムッとしている訳でもないのに、少しすねた感じで王太子殿下が言ってきた。
「あ……あの。王妃様?」
「お母様って呼んで。そして、あそこにいる息子たちはマリーのお兄様たち」
あそこと言われて王子様たちを見たのだけど、二人ともにこやかに笑っている。
ルイ様は手まで振ってくれていた。
「さぁ、期間限定の家族ごっこをしましょう」
王妃様は、皆の前でそう宣言された。
この場合、皆というのは侍女や使用人、近衛も含まれる。
私が王妃様の導きで椅子に座り、紅茶とお菓子を食べていると王子様たちがそばにやって来ていた。
「ごめんね、母が強引で。だけどこの期間だけは私たちに何をしても不敬なんて言わないから、自由に過ごして欲しい。私も妹が欲しかったし」
「王太子殿下。そんな恐れ多い……」
「グラントリーが、私の
にっこり笑って、王太子殿下から言われた。このお方は、本当にいつも笑っていて、何を考えているのか分からない。今のも本心なのかどうか……。
「僕とはほとんど初対面だよね。マリーとは、誕生月が数か月しか違わないけど、僕の方が上なんだ。僕の事も、ルイ兄さまと呼んでくれたら嬉しいけど……そうだな、ルイでもいいや。同じ年だし。期間過ぎても仲良くしようね、僕たちは」
第二王子のルイ様は、あまり身体がお強くなくて人前に出ない方だ。
もう、ここまで来たらこの悪ふざけ的な家族ごっこに乗らない方が不敬だよね。
「お母様、お兄様方。ふつつかな娘、妹ではございますが、よろしくお願いいたします」
私は椅子から立ち上がって、礼を執りながらそう挨拶をした。
「娘や妹なんて、ふつつかでも何でも良いと思うのだけれどね」
ルイ様がそんな事を言って、やっぱりみんなが笑ってしまっていたのだけれど。
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