第98話龍神飛翔

明朝


「はぁ、内戦なんて馬鹿げてる。面倒くさいしよぉ、、、」


「おい、貴族様に聞かれでもしたら懲罰物だぞ、控えとけ」


「でもよぉ、俺の家族は王都にいるんだぜ?こぅ、がっとせめて終わらせる訳にはいかんのかね?」


これは、変わらない日常だった。フォレスタ方面を監視する第13師団にとって、何時も誰もが会話する内容だ。内線で軍需工場の稼働率は既に90%を超えている。平時ではあり得ない。だからこそ、狙われる危険があった。事実、バレタニア軍ではないがディーン王太子に反発する別師団から何度か攻撃を受けている。しかし、それらを全て退ける実力がこの師団にあった。更に、軍需工場及び周囲の建造物は高さ30m厚さ5mを誇る防壁に囲まれている。そう、あったからこその慢心だ。武力が効くのは敵が同じ人間の場合だけ防御もまたしかり、それを忘れていた。


「おい、あれはなんだ?、、、嘘だ、嘘だ、嘘だ!!!!」


「おい、どうしたんだ!」


双眼鏡を覗いて偵察していた同僚が恐怖し、立つことがままならない状況にある。兵士は同僚から双眼鏡を奪い、その方向を見た。


「、、、あぁ、、、」


兵士は叫ぼうとした。いや、叫んでいただろう。しかし、彼等かいた場所は粉々に吹き飛んでいた。


「GURAAAA!!!!」





挨拶変わりの火炎弾を此方を覗く二人組に向けて放つ。兵士がいた場所は火炎弾で粉々になり、抉れているというよりも、溶けている。


「バロ、サイレンだよ」


(友よ、振り落とされてくれるな)


我が友、ディスタは背に刃を突き立て立っている。我も魔法で保護するが、どうなるか。


「敵は巨大龍!厄災と思われます!」


小型戦闘艇が我が行く手を塞ぎ、豆鉄砲を撃ってくる。その程度で我が鱗を貫く事など不可能だと悟れ。


「GAAAA!!」


我は雷撃を纏いながら加速する。人間の言うソニックブームが発生し、轟音と強風なんて生易しい程の風が戦闘挺を襲う。魔導船の戦艦クラスなら何とか体勢を直せる可能性があるだろうが、戦闘挺は各々が風に流され地面との衝突を余儀なくされていた。そして車両や街、時には人を吹き飛ばしながら我は目的地である軍需工場から離れた師団の駐屯地で空へと舞い上がり、そして悠々と着地した。


(友よ、外は任せよ)


「それじゃあ行ってくる」


基地はディスタに任せて良かろう。我はディスタが消えたのを確認し、直線上に火炎を吹いた。街を燃やす我が火炎、30m程で、扇状に広がりさらには生きるものを焼き尽くす。我は神だ、そしてセリエの忠臣だ。


(怯えろ、すくめ。そしてただ嘆きながら死んで行け、それがお前達への緩しだ)


「撃てぇ!厄災を、厄災を仕留めろぉぉ!」


さて、また殺されに来た者がいる。


「GURAAAA!GAAAA!!」


兵(ツワモノ)達よ、我の赦しを与えよう。

民まで死んでいるだろうが、構わん。後で一斉に生き返させれば問題ない。

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