英雄の息子が英雄とは限らない！

第79話龍と龍と人

「くくくっ、我の縄張りに来た愚かな龍よ。我がきちんと喰らってやろうぞ」

我の体、確かに傷付いているがまぁ別に良いだろう。腕など、何時でも再生できる。片腕の爪を龍爪へと変化させ人間である部位を最小限にする。

「小さき者よ、ヌシは龍か？」

「小さき者だと？貴様、我を知らぬと申すか。我はドラグーン、龍なる神にして我が母の第一子」

「クカカカッ、ドラグーンだと？奴は既に死んでいる。貴様のような小さき者の訳が無かろう」

くっ、今ここで我が本来の姿になることは容易い。しかし、セリエ達に攻撃される。仕方がない、小さき者の姿で争うか。

「グワァ！」

「名も無き龍よ、火炎を吐くだけで我を倒せるとでも？」

我の龍鱗はこの程度で溶ける事はない。しかし、近頃の龍は我の事を本当に知らんのだな。

「な！小さき者よ、何故生きている！」

「なに、名も無き龍。貴様の火炎が弱いだけよ」

「何をおぉぁ！」

名も無き龍は多大な魔力に包まれ、我の体もそれに共鳴するように魔力に満ちていく。

「コロスゥゥゥゥ！」

「哀れよ、実に哀れよ。」

だんだんと魔力に満ちていくのを感じた我は一度、雲の中に入った。

「逃げるかぁぁぁぁぁ！！」

「無駄な事よ！」

我は急降下し名も無き龍の首に食らい付いた。

「まさか！まさか！その姿は！」

「名も無き龍、貴様は我の縄張りに手を出した。しかし、このドラグーンの血肉になることは許そう」

「ガァァァァ！」

激しい衝撃と共に名も無き龍を地面に叩き付ける。これ程の衝撃、そして我に首を噛まれたのだ。生きていても、絶命するだろう。

「ハァ」

名も無き龍の首に、翼に、体に食らい付く。

濃密な魔力が我の体を癒し、強めていく。

余程、我は腹が空いていたのだろう。ものの見事に肉を我が食らっていた。

「心の臓か、一体どれ程の魔力を」

最後に取っていたとっておきだ。心の臓、龍の魔力が最大に集まる部位。我は咀嚼し、その味を吟味した。噛む度に濃密な魔力と血が溢れる。

「ほぉ」

その時、我の肉体に変化が起こった。無くした腕が蘇ったのだ。あの蛮勇をし我に牙を向けた人に切り落とされた腕が。

「おぉ」

そして、我の翼が二対に増えていた。鱗もより硬く、強靭なものに。身体はより大きく、100メートルは超えるであろう肉体。我は喜びの余り、火炎を吐いてしまった。不味い止まらぬ、セリエ達がいるなかに当たりでもしたら、我は我を許せぬであろう。我は首を天に向け、天に火炎を吐いた。鉛色の空は一転し、赤く染まる。

「貴方は、何を」

「貴方は、何を」

私達は驚愕している。龍はモンスターであり発声器官など有していないはずだった。でも、目の前の龍。厄災は話した、私の、、、

「ルシエラよ、どうした？怪我か？」

何で、何で、そんな目で見るの？私を助けてくれた時と同じ目で、何故私を見るのです！

「貴方は誰ですか？」

「我か？我は、龍なる神ドラグ、、、いや君には此方の方が良いか。ルシエラ、解っているんだろ？僕は、バロ・ランバースだ」