第50話〔閑話休題〕再戦ゾル=マデウス2
「なんで君達がいるんだ!」
叫ぶと同時に地面を蹴ってつばぜり合いをしていた大剣を弾く。どうやら、ノア君が意識を手放して、敵味方問わず殺そうとする狂戦士にでもなった。そんな所かな。
「あんな事言われて、私達も戦えます!」
「意識を一瞬で刈り取る事もしないで良く言うよ。」
僕は雷の魔法を片手剣に付与し、刃の無い方でノア君の腹に重い一撃を入れた。打撲と感電による火傷になるだろうけど、僕は絶対に治療しない。治療して攻撃されたら面倒でしかないからだ。
「君達は、ソルジャーの命令を無視して此所にいるね。、、、帰ったらアドベンチャー資格を剥奪するよう動かせてもらう。」
「なぜ?!」
「命令不服従、それによる危険行動。ソルジャーの行動を邪魔をした。これだけで君達の資格剥奪には十分だ。、、、でも可哀想だからね、今帰ればこれは忘れてあげる。ほら、行くんだよ。僕は忙しいんだ。速く!」
「騒がないでよ!なん」
「終わった、来ちゃった。」
もう、それしか言えない。ここまで騒がしくしたんだ。そりゃあ、来ちゃうよね。
ブン!
前と同じように木が僕達目掛けて飛んでくる。気絶している人がいる手前、避ける事が出来ない僕は剣に魔力を込めた。
「サンダー、、、スラッシュ。」
二つに折れた木は僕達を避けるようにV字に地面を滑るが、木を二つにした程度で僕の魔力は消えない。そのまま、木を投げた張本人、張本機械に命中した。
「速く!逃げろ!僕が食い止める!」
「でも、、、」
「またか!」
前の様に岩を投げる体制になった機械巨人、ゾル=マデウスがまた岩を僕の前へと投げたのを、気付けなかった。まただ、違うのは回避が間に合わない所。この速度で当たったら、うん、ミンチだね。
「防いで。ファイアボム!」
「えっ!」
岩に向かって脇からファイアボムが飛んできた。岩は粉微塵に吹き飛び、粉々になった破片が僕の体に突き刺さる。痛みはあるけど、戦闘に支障はない程度だ。
「まったく、避けないなんて馬鹿だな。」
「バロ!」
望んだ戦友が来た!そう思い振り向くと、杖を構えた少女が立っていた。
「お兄さん、大丈夫?」
「感謝はするけど、速く逃げるんだ!」
「逃げられる訳が無いでしょ!貴方、自殺願望でも有るわけ?ザコルマもだけど貴方の名前、お墓にするよ。」
僕は無意識にバロという希望を望んでいたのかもしれない。でも、今はバロはいない。彼等を守れるのは僕しかいないんだ。
まだ、距離はある。
「お墓は嫌だね、僕はディスタ。ディスタ・マクレインだから。」
ズシン、ズシン、だんだんと近付いてくる足音の主に向かい銃を構え、雷の魔力を充填する。そして、姿が見えた瞬間充填した魔力を一気に解き放った。
「エクレール、バスター!!!」
激しい轟音と共に銃口から雷のレーザーが発車される。射線上にあった草木は落雷により、黒焦げた何かへと変貌させながら突き進む。
「当たったか!」
「いや、駄目みたい。」
命中はした。でも、ゾル=マデウスは外面に泥や土を着けていたんだ。隠れんために草まで生やしてね。ダメージは入っただろうけど、前みたいに動きを遅くしたり装甲を破るまではいかなかった。
ドシシ、ドシシ、ドシシ、ドシシ
攻撃されて敵と改めて認識したんだろうね。走って来たんだ、時折岩を投げながら。
「くっ!ぐぁ!」
倒れているノア君を投げ飛ばしたのは良いけど、岩を背中に直撃された。激しい痛みにもがいても、何とか移動した。
「お兄さん、治療する。リジェネジェーション。」
バロと同じ魔法か、そういえばバロはどうしているかな。
「お兄さん、お兄さん!」
「くっ!サンダースラッシュ!」
現実逃避なんて無理だ。まずはコイツを倒さないと。
「サンダー!」
「プリズムキャリバー!」
「えっ!」
思わぬ援護に感謝した。一瞬で振り返り、確認する。エレナちゃん、そしてヘレンちゃんだ。この際、実力とかはもうどうでも良い。
使わせて貰うよ。
「ヘレンちゃんは後方から魔法で援護!
エレナちゃん、一緒に仕留めるよ!」
「はい!」
「解った。」
エレナちゃんはどうやら、僕とは違ったタイプの魔法剣士みたいだ。僕は雷特化だけど、エレナちゃんは属性を切り替えて戦っている。でも、火力は数段落ちている。器用貧乏にならなきゃ良いけど。、、、なんて考えてる暇はないか。
「雷纏い!」
「えっ!」
「すごっ。」
雷を纏い、ゾル=マデウスの攻撃の中を突き進む。雷に追い付ける物体はない。
ゴゥ
更に加速する。もう、何回もゾル=マデウスを切り刻んでいるけど、適切な防御体制を取られたせいで、中々装甲を完璧に貫けない。
「取った。」
間接部に集中し、ゾル=マデウスの右腕を切り落とす。でも、それと同時に僕の雷纏いも解けてしまった。
「ぐぁ!」
空中で解けてそのまま飛ばさせる。もう一度雷纏いをすれば倒せるかもしれないけど、僕の体はボロボロ。とてもじゃ無いけど動けない。
「クロスサンダー。」
「シャイニングソード!」
十字を描く雷と、光輝く剣筋が膝を着いた僕の前に現れる。
「やっと、起きれた。いくぜ!兄貴直伝、
剛刃迅滅斬!」
「ノア君!」
気絶していたはずのノア君は、身の丈程もある大剣を軽々と振り回す。更に、さっきの一撃でゾル=マデウスな正面装甲に亀裂を作った。
「君達!ゾル=マデウスの中身はそんなでもない。その切れ込みを開いてぶち壊せ! 」
「「「応!!!」」」
「もう、魔力は全部使う。 ママ直伝雷の奥義魔法ブリッツデストール。」
あり得ない、としか言いようがない。ヘレンちゃんの雷魔法は彼処までの火力を出すのに魔力を使いきっているはず、魔法の操作なんて不可能なはずなのに。
「父さん、兄さん、使う。奥義幻影父兄斬。」
エレナちゃんがそう言うとエレナちゃんの両隣に二人の人影が現れた。一人は僕も良く知っている男、僕の戦友バロ・ランバース。でも、武器は短剣ではなく、東方で使われる刀を装備している所だ。そして、もう一人は、ターシェ王国の英雄にして生きる伝説のソルジャーである。
「オリックス・ランバース。」
「父さん、兄さん、お願い。」
二人は声に頷くとバロが先行し刀で一閃する。それにより傷は更に広がる。バロは姿を消し、オリックス・ランバースが二刀流した大剣(あり得ない)で攻撃する。するとバロと同じように消えた。
「次は私、プリズムキャリバー!」
横凪ぎに剣を振るい、ゾル=マデウスの傷痕に追撃を与える。更に傷痕は広がり、既に内部が露出している状況だ。しかし、ゾル=マデウスは動きを止めず、地面を腕で掬い上げそれを投げてきた。
「苦し紛れの一撃か、品がねぇな。今度は親父直伝奥義覇王剣!」
自分に魔力を纏いそれを斬撃にのせる。サンダースラッシュと原理は同じだけど、ノア君のは魔力自体を斬撃として出している。無属性の魔法攻撃だ。しかし、魔法攻撃だけでなく大剣でも斬り付けている。あり得ないと言いたいね、今のでゾル=マデウスの両足が木っ端微塵に吹き飛んだんだから。
「悪いけど、最後は貰うよ。エクレールバスターフルパワー!」
僕だって何もしてない訳じゃない。動かない間、回復する魔力を充填に回していただけさ。そして、100%になった。完璧なエクレールバスターが撃てるアイズさ。それに、充填分が切れても無理矢理僕の体と魔力をリンクさせた。僕もある程度は魔力がある。それも全て使う。ゾル=マデウス、お前に出し惜しみはない。
「滅べ!!!!!」
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