第35話破壊獣~ベヒモス~
西バレタニア街道は慌ただしい状況だった。
西バレタニア街道を通ろうとする民間人、それを止める騎士団。俺達はそれを横目に、西門の防衛責任者の許可を得て、街道に出た。
バレタニアの騎士団もモンスターの討伐は経験がある。むしろ、モンスター生息圏に囲まれた辺境であるバレタニアは常にモンスターとの戦いが起こっている。しかし、それでもベヒモスは例外中の例外だ。騎士団が相手にしているのは通常Aランクまで。ベヒモスは別名、破壊獣。四足歩行で巨体と鋼の様に硬い外皮で全てを薙ぎ倒し、その身を喰らう。いくらバレタニアの騎士団が優秀と言えど相手が悪すぎる。しかも、モンスター生息圏間近の街道、モンスターが更に現れる可能性もある。
「Sランクが居ないのは痛かったな。でなければ、ソルジャーが出はる事もなかっただろうに、まったく。」
「ランバース君、僕達ソルジャーは、、、」
「はぁ、任務を全うします。コマンダー。」
「よろしい。」
ソルジャーのチームはクラスが、高い方が指揮官となる。クラス1stのマクレインが指揮官なのは道理だ。
「さて、ランバース君。ベヒモスについては、、、」
「ソロで何度も狩った。弱点は目、後は口を開いた時に魔法をぶちこむ。それ以外にあるか?」
「いいや、僕もない。正直、」
「ベヒモスなんてただの獣だろ?」
「それでも油断は駄目だよ。」
軽口を言い合いながらベヒモスの目撃された位置まで向かった。
「マクレイン、どうやら寝てるようだ。」
「うん、、、グレネードが余ってたはずだ。それで起きて貰おう。」
「フッ、了解した。チェーンバインドの準備に入る。」
チェーンバインド、魔法で創られたチェーンで敵を拘束する魔法だ。締め付けもできるし、ただ捕まえるだけじゃない。場合によっては圧死もできる。
「投げた!」
マクレインの声に反応したベヒモスが頭を動かし周囲を確認する。そして、俺達二人を見つけると大声で吠えた。
「モォォォー!!!」
「爆発する!」
ドォゴン!
「?!モォォォー!!!」
猛るベヒモスの下でさっきマクレインが投擲したグレネードが爆発し、大きな爆発音と共にその巨体が一瞬怯む。それと同時に魔法を展開した。
「チェーンバインド。」
「まったく、吠えてる時にもできたんじゃないのかい?」
「お前のグレネードの見せ場を作ってやったんだ。ほら、さっさと仕留めるぞ。」
「君ねぇ、、、まっ、良いけどさ。」
パン!パン!
マクレインはそう言ってベヒモスの目玉を片手銃で撃ち抜く、一寸たがわぬ射撃で瞬時に両目を奪いベヒモスは痛みに叫ぶ。
「モォォォォォ!!!」
「悪いな、これも仕事なんだ。エクスプロード。」
開いた口に火の上位魔法であるエクスプロードを撃ち込む。外皮は固くても中が脆いのは事実、口が焼け爛れ、泣くこともできなくなったベヒモスが血が流れ出、眼球を失った顔で俺達を睨む。どうやら匂いで判別しているようだ。流石、モンスターだな。
「あれで仕留められなかったのかい?」
「いや、死んだと思ったさ。まさかここまでしぶといとはな、まあ今楽にするさ。」
マクレインにそう言ってドラゴンダガーとエレメントダガーを鞘から出す。
「ビルドアップ」
脚部の筋力を強化し走り出す。二刀に魔力を込め、苦しみもがくベヒモスの腱を切り裂いた。
「一撃でじゃ無いんだね。」
「生憎、一撃で仕留める武装じゃ無いんでね。まぁ、見てな!」
限界まで強化した肉体で暴れるベヒモスの合間を縫いながら、脚を切っていく。
ベヒモスは脚から大量の血を流しながらも、残った尾で攻撃してくる。
「ベヒモス、悪いな。ブラッディランス。」
ブラッド系の魔法は血を必要とする。ベヒモスの流れ出た血を魔力で操り、槍状にし貫いた。
「、、、、。」
血の槍によって固定された体が魔法が解けた事で崩れ落ちる。顎から脳髄まで大きな穴が空いて、そこからはいまだに大量の赤い血液が流れ出ている。
「残虐だと思うか?」
「、、、君の魔法なら一瞬で楽にできた。
それをしなかったのは君だ。君にも考えがあるし、何よりモンスターに感情移入するのかい?」
「いいや、俺をそう思うんならチーム組んだのは失敗だと思っただけだ。」
「そうか、んじゃ帰ろうか。」
「ん!待て、マクレイン!」
「ランバース君!」
「ぶ!」
意識外から攻撃され、背中から周りの木に打ち付けられ、骨が砕ける音がする。意識が朦朧とするなかで俺は、、、巨人を見た。
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