第28話夜の華
私はルシエラ。ルシエラ・バレンシア。
騎士団に入隊するときに、前の名前は捨てました。私の生活は、私の人生はあの年下の殿方によって全て変えられましたわ。
「バロ」
最初は酷いだけの男。
そう思ったいえ、まだそう思っています。
しかし、、、彼の、バロの本心はわかりません。口付けを交わすのも、彼にとっては造作もないのかもしれない。
「私の部屋。」
空間魔法の応用、バロの魔法で私のクローゼットの中は屋敷の、かつての私の部屋になっています。ここは、この空間は、私とバロだけが入れる空間。この部屋の、もう一つの扉を開ければ、、、
「、、、バロの。」
私とバロの部屋を繋ぐ扉、これを通ると彼の空間。その先に、、、
「ごめんなさい。」
話がしたい、それだけなのに。
明日でも良い、それも解っているけれど、
私は、どうしてもバロに会いたくなってしまいました。ベッドから起き、彼の空間に通じる扉を開く、、、案の定、空間は彼の仕事道具が並べられているだけでした。
そして、もう一つの扉を開きバロの部屋に入ろうとすると、私は動けなくなりました。
「喰わ、、せろ、我に、憎、き者、、、達の血、、、潮を」
バロは普段とも、仕事中とも違う口調で部屋を出ていきました。
クローゼットの隙間からただその姿を見ていた私は、部屋から出ていくバロを見て直ぐに追いかける決心をしました。
「!バロ!」
第四棟から出た瞬間、バロの背中からまるで竜のような翼が生えて、風圧を巻き起こしながら飛び去っていきました。
「待って!」
寝巻きのままバロの飛んでいった方向に向けて走り、誰もいない道をただ進んで、、、
私が見たのはまさにこの世の地獄に相応しい場所でした。
「何故、何故我々が!」
「神よ!我等に救いぐぁ!」
「俺の、俺の足が!」
燃え盛る王都騎士団の駐屯地。
阿鼻叫喚がそこら中から聞こえてくる。
その中に、私は確かに見ました。
人を喰らいながらも、優雅に、そして見るものを惹き付ける姿をした竜、いえ、龍の姿を。その目に消して消えぬ焔を宿し、炎のように金色に燃える鱗を纏い悠然と佇むその姿に、私の目は釘付けにされていました。
「何者だ。」
「、、、」
激しい威圧を受け、私の本能が逃げたい。そう叫んでいるのが解ります。しかし、私の心はこの龍の側に有りたいと願っているのです。
「答えよ。」
「ルシエラ・バレンシアです。、、、貴方は?」
「ふむ、依り代の縁者か。、、、我は龍。
縁者よ、お前は我が何であるか知っているのだろう。」
「、、、厄災。」
「!」
一瞬で龍の威圧に変化を感じました。
より強く、より鋭くなった威圧。
立つことも本来は赦されない。
それを理解させる。それほどの。
「くくっ、くふははははは。我を厄災と呼ぶか。、、、だがな我にもれっきとした名がある。縁者よ、御主程の人間はそうはおらん。我を前にし、立っていられたのは二人目だ。縁者よ、依り代を頼むぞ。」
私の記憶はそこで途切れています。
目覚めたら寝ていたベッドの上でした。
夢であったような、不思議な体験。
でも、これが私の運命を変えることに、
今は気付けていませんでした。
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