半笑いの幸福

作者 サンダルウッド

49

17人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

皆さんにとっての幸せは何だろうか。

百個以上コレクションした、ペットボトルや空き瓶のキャップを机に並べて悦に浸ることだろうか。

僕がこんな事を言うと、大抵は白眼視するか、鼻で一笑に付すだろう。
だけれども、一見すると取るに足らないこの趣味は、おそらく誰かの幸福なのだ。

僕がこの作品を二周したとき、そういえば最近、寝る前に「いい一日だった」と思えたのはいつだっけ? と自問した。

この物語の主人公、悦弥に恋人はいない。介護の職場で、夜中に大声を出す厄介な患者と日々格闘している。昼時のカレー屋で見かける美男美女のカップルを見るたびにやるせない気持ちになり、職場の上司の不適格さに違和感を覚える。

それでも、風俗嬢との三十分の触れ合いに心のスキマを埋める幸福を見出したり、親友と呼べる社会を斜めに切り捨てる光蟲との語らいにはかけがえのない充実感を覚えている。

周りの人間が活躍し輝いていると、置いていかれたり、自分が取るに足らないちっぽけな存在に見えてしまう。

僕は劣等感を抱きやすい性質なので、時々、周りに流されて、自分の幸せを見失ってしまうことがよくある。
周りの求める幸せが、自分の求める幸せだと勘違いし、結果、世の中がつまらなくなる。

長くなったが、つまるところ僕は自分が今やっていることが幸せだと言いたいのだ。誰になんて言われようと。

★★★ Excellent!!!

 読者に負担を掛けない平易な文章でありながら、格調は落とさない。
 おそらくアマチュア作家のなかでは上位数パーセントに入る文章力の持ち主であると言って良いだろう。
 その典雅な文章で語られるのは、さぞかしシャレオツーな男女がバスタでも茹でながら「やれやれ」などと詠嘆し交尾……じゃない、愛を確かめあったりするリア充の生活なのだろうと普通は思う。
 ところがである。なぜか文章とは不釣り合いな非リア充の生活が描写されていく。
 喩えるなら、小田和正の美しい声で嘉門達夫を唄われたら感じるであろう不思議な感覚である。
 
 私は書き手としても読み手としても、あくまでも虚構性を強調した作品を志向している。ドンパチがあったり超常現象や謎の組織などが出てくる話を好む。
 この作品とは正反対のベクトルといって良いだろう。だが、コテコテのエンターテインメント小説の書き手もこの作品から学ぶ面は大きいと思う。特別な事件の起こらない日常描写に説得力を持たせることは虚構の説得力にも繋がるだろう。
 もちろんサンダルウッド氏のような文章力は一朝一夕で得られるものではないが、ひとつの手本として参考にできるのではないだろうか。

★★★ Excellent!!!

 時系列では半笑いの情熱に続く2作目になるのでしょうか?

 大学を卒業し、二十代後半に入った主人公の日常を描いた物語です。どこか世の中を斜めに見ていつつも、斜に構えたところがあるのは相変わらずですが、一人称で書かれた彼の心情には、小学生時代にあった小賢しさがなくなり、成長、進歩からくる変化を感じさせられます。

 灰汁だと思っていた部分が人格の深みに変わったような、そんな人柄を感じられました。

 変に格好つける事のない点、隠してしまいたい事も赤裸々に書ける所に、この物語に登場する人物が、皆、現実に生きているようなリアルな魅力を与えているように思えます。

 リアリティがあり、本来、相反する要素になるリアルとが合致したドラマです。

★★★ Excellent!!!

この小説にはきっとこの先も、世界を揺るがす大事件や衝撃的な場面転換、異能の発現などはないでしょう。
ただひたすら、主人公がてくてくと自分の美意識に従っていつも通り生活する歩みに、なんとなく寄り添う文芸作品。
ですが、心地よく美しい文章が得も言われぬ清涼感とともに流れ込み、私たちのような文芸中毒者の空腹を癒してくれます。
一日一話ずつ、ゆっくり味わいたくなる小説です。(ヤマザキの小さい食パンのCMか?)

★★★ Excellent!!!

 何気ない日常。
 確かに、ただ読めばそう感じるだけかもしれない。
 未だに話の展開は無く、短かったので星一にとどまっているが、作者の文章力と表現力は素晴らしいものがある。
 一般的で平凡な生活を送っている主人公だが、確かに心に深い闇を持っているのを、回想だけでなく、職業や行動からも読み取らせてくれる。
 素晴らしい。
 是非、更新を続けてもらいたい。