第485話 好き。





「春香どうしちゃったんだろ…また明らかに避けられてるよね……さっき何かあったの?」


大掃除をしている最中、僕とまゆはバイトに出かける時間になった為、2人でアパートを出てまゆの車に乗る。春香に避けられてちょっと落ち込みながら、まゆに何かあったのか聞いてみた。ちなみに、避けられていたことに対して心当たりは全くない。


「りょうちゃんが春香ちゃんのこと昔からすごーく愛してたことが改めてわかって照れちゃったんだよ。春香ちゃんかわいいよね」

「えっと、どういうこと?」

「りょうちゃんさ、その…本棚の端にその…アレな漫画隠してるじゃん…」


え、あ、うん。はい。まあ、えっと、引っ越し初日に春香に見つかったから隠す意味がなくなって春香が置いてくれた場所にそのまま置いてありますけど…


「あの漫画に出てくるヒロインが春香ちゃんに似てるのは無意識なのかなぁ?」


………バレた。はいはい。そーですよ。ヒロインが春香に似ててめっちゃかわいかったから買いましたけど何か文句でも?


「どーなの?」

「ま、まあ、意識してたけど…」

「へー。りょうちゃんはあの本見ながら何回頭の中で春香ちゃんを好き勝手可愛がってたのかなぁ」

「な、内緒…」

「へー頭の中で春香ちゃんを好き勝手してたこと否定しないんだぁ」


ねぇ。やめて。は、恥ずかしいから…たぶん今、めっちゃ顔赤いと思う。


「本当に春香ちゃんのこと、前からずっと好きだったんだね」

「うん」

「なーんか。りょうちゃんと春香ちゃんの純粋な関係に入り込んじゃって申し訳ないなぁ」


まゆが笑いながら、少し寂しそうな雰囲気を漂わせて僕に言う。


「まゆ、そんなこと言わないでよ。まゆのこと、僕、本当に好きで、まゆがいないと嫌だから…」

「ありがと。まゆも、りょうちゃんが側にいてくれないと生きていけない。だから、ありがとね。まゆを受け入れてくれて」


ちょっとだけ、重い雰囲気になり、お互いに少し黙り込んでしまう。


「りょうちゃん、まゆとゆいちゃんも、春香ちゃんと同じように愛してくれて本当にありがとう。おかげでまゆは本当に幸せです」


駐車場に車を停めて、まゆはシートベルトを外して僕を抱きしめながら言う。こちらこそ、ありがとうだよ。僕の側にいてくれて…


「さ、バイト頑張ろ。年末のバイトは忙しいからね」

「うん。一緒に頑張ろうね」


そう返事をしてまゆと手を繋いでバイトに向かった。まゆが側にいてくれるから、今日もバイトを頑張ることができた。






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