第470話 幼馴染み






「りょうちゃん、これ美味しいから食べてみてよ」

「あ、はい。ありがとうございます」


さっきから隣に座るりっちゃんさんにいろいろ料理を勧めてもらっていろいろ食べているのだが、少し離れた場所に座る陽菜の視線が怖い。なんなら、陽菜の隣に座る春香の視線も怖い。


そんな怖い目で見なくても今更りっちゃんさんとどうこうならないから。ただ単にりっちゃんさんの面倒見がいいだけだから。


と、そんな感じで陽菜と春香の視線に耐えていた。(りっちゃんさんは全く気づいていない)


そんな状態がしばらく続くと陽菜と春香がひそひそ話始めた。なんだろう。と気になっても陽菜と春香のやり取りは聞こえない。


2人の話が終わると春香が陽菜にあーん。し始めた。は?え?何してんの?ずるい。


「え、ちょ、春香ちゃん?陽菜に手出さないでよ」


陽菜と春香がいちゃいちゃしてるのに気づいたりっちゃんさんが慌てて春香に抗議をする。さっきまで自分も無意識的に僕に同じことしてたんですよ。と言ってやりたかったが、陽菜に嫉妬心があったのでりっちゃんさんに便乗して抗議した。


「えー。別にいちゃいちゃしてたわけじゃなくて幼馴染みとして仲良くしてただけだよ」


僕とりっちゃんさんが抗議すると春香は楽しそうにそう答える。さっきまでりっちゃんさんに先輩後輩の関係で同じようなことをされていたからいい返せない。


「でも、春香ちゃん優しくてかわいいから、陽菜、春香ちゃんのものになっちゃおうかなぁ…」

「それはだめ。お願い。早まらないで…私を捨てないで。お願いだから……」


陽菜が冗談で言った言葉を間に受けてりっちゃんさんは泣きながら陽菜に懇願する。ガチ泣きだ。この人はどれくらい陽菜のことが好きなんだろう。と思うが、僕も春香に捨てられそうになったらきっと今のりっちゃんさんみたいな状態になってると思う。


「やっぱり、りっちゃんさんってりょうちゃんに少し似てますね」


唐突に陽菜にそう言われてりっちゃんさんは?を浮かべていた。僕も頭に?を浮かべる。陽菜の隣にいた春香がクスクス笑っていたから、2人の間で何か話したのかもしれない。そんな陽菜と春香の関係を見て、幼馴染みらしくていいな。と思う。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る