第429話 アルバム






「あれ、これ何?」


夜ご飯を食べて、りょうくんと一緒にお風呂入って、私がドライヤーで髪を乾かしていると、私の部屋のベッドの枕元に置いてあった一冊のアルバムを指差してりょうくんが私に尋ねる。目敏いなぁ…


「アルバムだよ。りょうくんと再会して、付き合ってから今までの思い出のアルバム。この部屋で1人で寂しい時にね。たまに見返すの」


部活でみんなで撮った写真から、付き合ってから撮った写真まで、りょうくんと春香ちゃんとまゆちゃんとの思い出をこれでもか。と言うくらい詰め込んだ。


たまに見るとすごく懐かしく感じる。ただ、どの写真を見てもすごく、幸せそうに笑っている。あの頃も今も、私はずっと幸せなんだな。って見るたびに思う。


唯一残念なのは、りょうくんとの最初の思い出がこのアルバムにはないことだろう。りょうくんと出会ったあの日、私の幸せの蕾が出来た。再会してから蕾は花開いて、ずっとずっと、私に夢のような幸せな時間を与えてくれる。蕾が花開いて、これからもずっと幸せでいたい。そして、最後は、大切な人に見送られながら、私はずっと幸せでした。ありがとう。って言ってそれまでの幸せを振り返って、満開を迎えたまま、朽ちていきたい。りょうくんには恥ずかしくて言えないけど、私の最後はりょうくんに見送られて逝きたいって、今から考えてる。


あの日、私にできた蕾は、まだ全然開花してない。まだまだ、蕾は残ってる。最後の時まで、満開にはならない。これから先、きっと私はもっと幸せになれるから。


「うわー。懐かしいね」


私がだいぶ先の未来のことを考えている間、りょうくんはアルバムをパラパラめくって、数ヶ月前のことを懐かしそうに振り返っている。写真に写っているりょうくんも、私の瞳に写っているりょうくんも、全く変わっていない。どちらのりょうくんも幸せそうに笑ってくれている。


その笑顔を見られるだけで、私はすごく幸せだ。


「懐かしいよね。りょうくん、いっつも素敵な笑顔で笑ってるから、見てると私も笑顔になれるんだぁ」

「えーなんか恥ずかしいなぁ…」


顔を赤くしながらそっとアルバムを閉じるりょうくんが愛おしくてたまらない。かわいいよぅ。


その様子をこそっとスマホのカメラで撮っていたらちょっと怒られた。ごめんね。でも、いい写真が撮れたから今度この写真もこのアルバムに追加しておこうかな……そんなことを考えると、少しだけにやにやしてしまう。そんな私を見て、すごく幸せそうな表情をしてくれるこの人のことが、私は大好きだ。






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