第405話 4人の部屋





「ただいま」

「おかえりなさい」


まゆと2人でアパートに帰る。いつも、バイトが終わってまゆと2人でアパートに帰る時のようにアパートの中に入ってただいま。と言うとリビングの方から春香の声が聞こえてきた。優しい春香の声が…明るい、春香の声が…


最近、ずっと、暗い声でしかおかえりなさい。と言ってくれていなかったので、こうして明るい声を聞くとすごく嬉しい。


そして、春香のおかえりなさい。のあとすぐにドタバタと足音が聞こえて来て、すごい勢いでゆいちゃんが僕に抱きついてきた。


「ゆいちゃん…勢い…少しは考えてよ…」


もはやタックルと言ってもいいくらいの勢いで僕に抱きついて来たゆいちゃんを僕は受け止めて抱き締めながら言うとゆいちゃんは泣き出してしまった。


「え、あ、ゆいちゃん、ごめん。強く言いすぎたね怒ってないから大丈夫だよ」

「違う…嬉しくて泣いてるだけ…りょうくん、大好き」


そう言ってギュッと僕を強く抱きしめるゆいちゃんの頭を優しく撫でてあげる。


「ゆいちゃん、泣かないで。これからもずっと一緒にいようね」

「うん…」


泣き続けるゆいちゃんを連れてリビングに向かう。廊下を歩きながら僕の背後でまゆが、「まゆの誕生日はまゆがりょうちゃんを独り占めする約束だったのになぁ」と僕に聞こえるように言っているから今度埋め合わせはしっかりしよう。


「春香、泣かないで…」


リビングに入ると春香が泣いていた。久しぶりに4人でこの部屋にいられるのが嬉しかったから…春香を見てまゆとゆいちゃんも泣いてしまい、僕も泣いてしまった。


そのあとは4人でまゆのお誕生日を祝った。僕たちが帰ってくる。ってわかっていたからなのかはわからないが、春香とゆいちゃんが用意してくれた料理と、まゆのお誕生日ケーキをみんなで食べて、みんなでいっぱい笑った。笑いながら何回も泣いてしまった。幸せすぎたから。


みんなでいっぱいお喋りして、まゆの要望で夜通しゲームをして、春香が寝落ちしそうだったので、久しぶりにリビングにお布団を並べて、4人で眠った。誕生日のまゆと、春香にじゃんけんで勝ったゆいちゃんに抱きしめられながら、眠った。すごく幸せだった。


こんなに幸せなら、いいじゃん。みんなで、これからも一緒にいようよ。そう、本気で願って眠りについた。これからも4人でずっと一緒に…これからも4人でずっと幸せでいられますように。そうやって、4人全員が思いながら、その日はみんな幸せそうな表情でゆっくり眠った。


おやすみ。って久しぶりに4人で言った。朝、起きたらまた、4人でおはよう。と言いたい。今日は、誰も…寝る前に泣かなかった。起きてからも、きっと、誰も泣くことはないと思う。いや、幸せすぎて泣いちゃうかな。まあ、それならいいや。幸せすぎて泣くなら、全然いいや。





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