第345話 2年生会議
「りっちゃん、今日、陽菜ちゃんどうしたの?今日の練習お休みします。って言われただけだからちょっと心配で…」
ホールに入って、りょうちゃんたちと別れた後、まゆは真っ先にりっちゃんの元へ向かった。
「ん?あぁ…今日は病院に定期検診の日だからお休みするだけだよ。定期検診終わったらお泊まりに来る。って言うくらい元気だから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「なんだ…そういうことね。ちょっと心配しちゃったよ。陽菜ちゃんに心配かけたくなかったら今度からはちゃんと理由も添えるように言っておいて」
「はーい。ごめんね」
りっちゃんの様子からしても本当に大丈夫そうなのでまゆは安心してサックスパートの練習場所に向かう。まゆよりも先に来ていたみーちゃんも陽菜ちゃんのこと心配していたので、りっちゃんに言われたことをそのまま伝えておいたら、みーちゃんも安心した表情をしていた。
みーちゃんとそんなやり取りをしていたらミーティングの時間になったので、ホールの舞台に集まる。そして、いつもよりも長いミーティングで定期演奏会の曲を確定された。
「じゃあ、定期演奏会のお話しはこれくらいで…2年生に連絡…というか催促なんだけど……来年度団長やってくれる子と学生指揮者、確定させてね。定期演奏会で団長の仕事引き継ぐことあるし、学生指揮者には数曲指揮振ってもらうから…」
と、あーちゃん先輩がミーティングを締め括る。2年生からしたら耳が痛い話だ。だって、今、めっちゃ揉めてるもん。
だって、団長と学生指揮者、両方で第一候補のりっちゃんが頑なに拒否してるもん。たぶん、部員全員でアンケート取ったら団長も学生指揮者もりっちゃんがぶっちぎりで1位になると思うくらい。みんな、どちらかはりっちゃんがやると思っていたのに、まさかの、どっちも嫌。と言いだした……
というわけで、今からまゆたち2年生は2年生だけで話し合いだ。正直言って気が滅入るくらい嫌だ……
ホールの控え室の1室に2年生全員で集まるが、みんななかなかに顔が死んでる。
「えっと…じゃ、じゃあ、とりあえず、話し合いしようか」
誰も何も言わないからまゆが一言目を発する。とりあえず、さっさと終わらせたいから頑張ろう。
「えっと、りっちゃん、団長と学生指揮者どっちも嫌…なんだよね?」
「うん。私、結構抜けてるから団長は荷が重いし、学生指揮者は普通にやったことないからできるかわからなくて不安だし、吹くのに専念したい」
「「「「いやいや、何言ってんの?」」」」
りっちゃん以外の2年生全員の総意だった。りっちゃんは気圧されて、じゃあ、団長なら…考えてもいい。と言ってくれた。
さて、とりあえず団長はりっちゃんに押し付けた。問題は指揮者だ。春香ちゃんは絶対、嫌。って言ってるし、ゆきちゃんとかみーちゃん、他の2年生もみんな嫌って言うから、とりあえず誰がいいか匿名投票することになった。
団長の役職が仮決定したりっちゃんに票を取ってもらい、2年生で誰が適役かを調べる。
「えっと、じゃあ、1番票が多かった人は、試しに今日の初見合奏で指揮を振らせてもらう。それでいい?」
まゆが確認するとみんなが頷いたので、一旦全員頭を伏せてりっちゃん主導の元、投票が行われた。
「はい。じゃあ、みんな、顔あげていいよ」
票を取り終わり、頭を上げると、りっちゃんが票をメモした紙をみんなに見せた。
…………え?まゆが1番?え?え?嘘でしょ……
「りっちゃん、間違えてない?」
「間違えてないよ。私もまゆちゃんに票を入れたし」
即答しないで!まゆには荷が重いよ!!
「私もまゆちゃんがいいと思う。こうやってさ、2年生をまとめてくれる力はあるし、指揮者は笑顔がかわいい人がいい」
みーちゃん、何を言ってるの?わけわかんないよ。
「まゆちゃん、文句なしって言ったの、まゆちゃんだよ」
「春香ちゃん、うるさい……」
ちょっと涙目でまゆが言うと大丈夫。まゆちゃんならできる。と言ってくれる。春香ちゃんに続いて他の2年生にも励まされる。
「まゆちゃん、困ったことがあれば私も協力するからさ、一回やってみたら?教えられることは教えるから」
高校の時に学生指揮者をやっていたみーちゃんがそう言ってくれるとちょっと心強い。なんでみーちゃんが選ばれなかったの?まゆはみーちゃんに入れたのに……
まあ、そんな感じで、何故か、学生指揮者の候補にされて今日の基礎合奏と初見合奏の指揮をやらされると言う訳の分からないことになりすごーく憂鬱なので2年生の話し合いが終わった後、りょうちゃんに頑張って。って言ってもらいにチューバパートの練習場所に顔を出したら、現在の学生指揮者の及川さんに捕まって、合奏の時間まで指揮のやり方とかいろいろ教え込まれた。
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