第300話 真夜中の電話






夜中、春香とまゆは僕の腕を抱き枕のように扱いながらぐっすり眠っていた。2人の寝顔がすごく愛おしくて、つい見惚れてしまう。かわいいなぁ。と思いながら春香とまゆを交互に見つめていると、枕元に置いてあった僕のスマホが震えた。


なんだろうと思いながら視線を春香の寝顔からスマホの画面に移すとゆいちゃんからの着信だった。こんな時間にどうしたのだろう。と思い、僕はそっと春香に抱きしめられていた腕を春香から離してスマホを一瞬操作して、ゆいちゃんからの電話に出てすぐに春香の抱き枕にすべく、腕を元の場所に戻す。


「ゆいちゃん、どうしたの?あ、隣で春香とまゆ寝てるからあまり大きな声は出さないでくれると助かるな」

「よかった。起きてた。夜遅くにごめんなさい」

「大丈夫だよ。どうかしたの?」

「え、えっと…りょうくんが側にいないと寂しくて寝れなくて……私が寝るまで、電話してていい?」


かわいいなぁ。かわいすぎるでしょう。いくらでも電話してください。


「いいよ。ゆいちゃんが眠れるまでお喋りしようか。何話したい?」

「え、えっと…ごめん…何も考えてなかった…りょうくんの声が聞きたくて勢いで電話しちゃったから…」


理由がかわいい。癒しでしかない。ぶっちゃけ疲れてたから早く寝たかったけど疲れなんて吹っ飛んだ。


「そっか、じゃあ、どうしようか…」

「あ、話したいことあった」

「ん?何?」

「え、えっとさ…わ、私もりょうくんたちの部屋で一緒に暮らしたいって言ったらどうする?あ、今すぐにってわけじゃないよ。年度が変わって私が借りてるアパートの契約更新のタイミングとかでさ……」

「僕は嬉しいよ。でも、バイトとかどうするの?」


ゆいちゃんは借りているアパートの部屋の真下にあるお店でバイトをしている。ゆいちゃんが僕たちと一緒に暮らすとして、アパートを引き払ってからもそこでバイトを続けるのだろうか。


「うーん。わかんない。どうしよう。別のバイト探すか自転車とか買って自転車通いで今のバイト続けるかかな…」

「いやいや、自転車は危ないからやめよ。ゆいちゃんかわいいんだから夜遅い時間に自転車で結構な時間移動するのは心配だよ。しかも、暗いから危ないし…いろいろ不安だなぁ…」

「えへへ。ねぇ、ゆいちゃんかわいいってもう一回言って」


……僕が心配してること伝わってるかな?まあ、でも、めちゃくちゃかわいい。


「ゆいちゃんかわいい」

「もう一回」

「ゆいちゃんかわいい」

「もっと♡」

「ゆいちゃんめちゃくちゃかわいい」

「えへへ♡」

「ゆいちゃん最高にかわいい」

「ありがと」


バカップルみたいなやり取りしてるなぁ……いや、バカップルみたいじゃなくて完全にバカップルなのかもしれない。だって、ゆいちゃんこんなにかわいいんだもん。こうなっちゃうのは仕方ないよ……


「ゆいちゃんも一緒に暮らすってなるとさすがに狭いかな……」

「そんなことはないと思うよ。それに、そのアパートくらい好条件のアパートここら辺には他にないでしょ」

「たしかに…」


田舎だし、このアパート以外は学生向けのアパートばかりだ。だから、ここ以外に好条件の場所なんてないよなぁ…ぶっちゃけ、探すだけ時間の無駄って断言できるレベル。それに、済む場所変えたってなると親への報告とか引っ越しとかいろいろ大変だしなぁ……あ、ゆいちゃんと付き合ったこと…ちゃんと報告しないとだよなぁ……


と、僕がいろいろ考え込んでいると、ゆいちゃんはぐっすり眠ってしまったらしい。電話越しにゆいちゃんの寝息が少し聴こえて、少しだけドキドキする。


さすがに、寝息をこのまま聴き続けるのは申し訳ないかな。と思い電話を切ろうとするが、両手塞がっていたからできそうにない。春香もまゆもぐっすり眠っているから、起こしちゃったら申し訳ない。と、自分に言い聞かせて、春香の寝顔とまゆの寝顔、ゆいちゃんの寝息を堪能しながら眠りについた。なんか、僕、だんだんとやばいやつになって来ている気がする。





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