第231話 勉強会
「まゆちゃん生きてるかなぁ…」
深夜、勉強をしている最中にりっちゃんさんが呟いた。縁起でもないこと言わないでくださいよ……
「春香を血も涙もない鬼みたいな言い方しないでくださいよ…」
「あはは。怒った春香ちゃん怖いから……」
りっちゃんさんのせいでちょっとまゆが心配になって来た。ちょっと様子を見に行こうかな。と思った瞬間、リビングの扉が勢いよく開いた。
「わっ…まゆ……」
「りょうちゃん、助けて……もう無理、限界、疲れた、もうまゆ頑張れない。春香ちゃんの威圧が凄くて普通にレポートやるより数倍疲れてもう限界なの!」
そう言いながら全力で僕に抱きついてきたまゆを僕が受け止めて頭を撫でていると逃げ出したまゆを追いかけて春香がリビングに入ってきた。
「まゆちゃん、ダメだよ。りょうちゃんたちのお勉強の邪魔したら…ほら、まゆちゃん、まだ全然レポート終わってないんだから戻って続きやるよ」
「もう無理、限界、疲れた。もう今日は休むもん!勉強してるりょうちゃんに膝枕してもらいながらまゆはゆっくり寝るの!邪魔しないで!!」
こんなに怖い春香久しぶりに見たしこんなに必死なまゆは初めて見た。
「春香、まゆ、一回落ち着こうか。ほら、春香、隣座って」
「う、うん……」
僕にギュッと抱きついているまゆの頭を撫でながら僕は春香を僕の隣に座らせる。僕の隣に座った瞬間、少し表情が緩くなり僕の肩にもたれかかってくる春香、かわいい。
「まゆ、レポートはどれくらい進んだの?」
「2つ終わった…」
「お、偉いじゃん!頑張ったね」
「えへへ〜」
正直、全然進んでいない可能性を想像していたので2つ終わらせていたのならかなり上出来だと思う。
「春香、まゆも頑張ったみたいだし、春香もまゆに付きっきりで疲れてるでしょう?ちょっとこっちで休憩しながらゆっくりやらない?」
僕が春香に提案するが春香は全力で不満そうな表情をしていた。春香の表情を見たりっちゃんさんがニヤニヤしながら春香の背に回り込む。
「まゆちゃんだけズルい。私、まゆちゃんよりも前に計画的にレポート終わらせてたのにまゆちゃんばっかり褒めてズルい!ズルい!ズルい!ズルいーー」
「ちょっと、りっちゃん!私の後ろで変なアフレコ始めないでよ!!!」
「あはは。ごめんごめん」
恥ずかしそうにする春香にりっちゃんさんは謝りながら陽菜の隣に戻る。その際、僕の横を通ったりっちゃんさんに「春香ちゃんもちゃんと褒めてあげなよ〜」と言われた。たしかに、春香は当然のように計画的にレポートに取り組んでいた。土壇場で慌ててレポートをしているまゆを褒めて春香を褒めないのはおかしいか…
「春香、春香は偉いね。レポートちゃんと計画的にやって」
「褒めるの下手くそか」
僕が春香を褒めるのを聞いてりっちゃんさんが笑いながらツッコミを入れた。じゃあ、これ以外にどう褒めればいいのかを教えていただきたい。
「まゆちゃんは抱きしめて、頭を撫でてるよね。まゆちゃんよりえらい私にはどんなご褒美をくれるのかなぁ」
春香はそう言いながらまゆと反対側から僕を抱きしめて僕に顔を近づけてくる。なんとなく春香の望みを察した僕は春香にキスをしてあげた。
「は、春香ちゃんだけズルい!まゆも!!!」
僕と春香のキスを見て羨ましそうにしてるまゆを見て僕と春香はニヤリ。と笑う。
「春香はなーレポートちゃんとやってたしなー」
「そうだよねーレポート頑張ったご褒美だもんねー」
「まゆ、レポート頑張るからぁ」
「「終わったらね」」
僕と春香はニヤニヤしながら意地悪顔でまゆに言った。僕と春香の言葉を聞いたまゆは「約束だからね!」と言いリビングから出て行きすぐにパソコンを持って戻ってきた。
「終わったらすぐにしてよ!」
「レポートちゃんと書けてたらね。慌てて変なレポートは書かないでちゃんと考えて書きなよ」
「わかってる」
僕の注意を聞きながらまゆはすごい勢いでパソコンに文字を打ち始めた。すごい集中力……そんなまゆを見て春香が呆れた表情をしていたので春香の頭を撫でてあげた。
「私たち何見せられてるんだろう…」
「さあ、バカップルすぎてついていけてないです」
「だよねー」
「とりあえず、陽菜たちもキスしておきますか?」
「明日の試験頑張って単位取れたらしてあげる」
「えー」
僕たちのやり取りを見ていたりっちゃんさんと陽菜がそんなやり取りをしていたのを聞いてちょっと恥ずかしさを感じた。
まあ、そんな感じでバタバタしながらも勉強会は進んだ。全てのレポートを終わらせてやることがなかった春香は飲み物を用意してくれたりちょっと夜食を作ってくれたりといろいろサポートしてくれたし、りっちゃんさんは僕と陽菜に一生懸命勉強を教えてくれた。まゆも僕の横で集中してレポートをやっていた。そんな感じの勉強会はあっという間に終わってしまった。
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