第195話 再開と休憩
「陽菜は……」
みーちゃんに問いかけをされた陽菜ちゃんは固まってしまった。そして、少しして震え始める。昔、何かあったのだろうか……
「大丈夫。私は陽菜ちゃんの先輩だから…安心して、絶対陽菜ちゃんの味方」
みーちゃんは陽菜ちゃんの頭に手を置いて、落ち着いて。と言う。ゆっくり、深呼吸して、と、陽菜ちゃんを落ち着かせる。
「ごめんね。ちょっと急だったね。合宿終わるまで待つって言ったの私なのにごめんね。ゆっくりでいいからさ、考えてね。陽菜ちゃんが後悔しない選択をしてくれれば私は何も言わないからさ」
「みはね先輩って、実はいい人なんですね」
陽菜ちゃんの言葉を聞いてまゆは笑ってしまう。
「ちょっと、陽菜ちゃん!実は…って何!?え、ちょっと、逆に今朝から私のことどう思ってたの?」
「何も考えてなさそう。うるさい。お節介。ちょっとめんどくさい。って思ってました。ごめんなさい」
「あはは。陽菜ちゃん、最高!」
ダメだ。お腹痛い。笑いすぎてお腹痛い。いや、分かるよ。陽菜ちゃんの気持ち、実際、合ってるから笑
あまり考えて行動しなくて、うるさくて、めっちゃお節介で、たまーにめんどくさい。でも、みーちゃんはすごくいい子だよ。
「ちょっと陽菜ちゃん、それは酷い、私泣いちゃうよ」
「ごめんなさい」
「陽菜ちゃん、間違ってないから謝らなくていいよ」
「まゆちゃん!!!」
と、先程までの真面目な雰囲気はどこに行ってしまったのか、気づいたらまゆたちはみんなで笑っていた。みーちゃんといるといつもこうだ。割と真面目な話をしていても気づいたらみんな笑っている。みーちゃんがいい子だから、みんな、安心して心の底から笑えるのだと思う。
「もう、パート練再開するよ!午前より練習ハードにしてやる」
「みはね先輩大人気ないですよ」
「どーせ私は大人気なくてバカでうるさくてめんどくさい鬱陶しい先輩ですよぅ」
みーちゃんは不貞腐れた感じでバリサクを持つが、仕草と相反するように、みーちゃんの表情は楽しそうだった。
「春香…ごめんなさい。休憩……したいです」
もう。限界だった。もう。吹けない。ハードすぎる。なんで、同じ練習しているのに春香がケロッとしているのか、本当に謎すぎる。
「え?もう?さっき休憩したばっかりだよね?」
………さっき、とは?
いや、えっと…1時間ほど前に5分くらい休憩はしましたけど……え?さっき……ねぇ。
「もう。情けないなぁ」
「ごめん」
「じゃあ、ドーピングする?」
春香は自身の唇の上に人差し指を置いて僕を見つめる。何これ、かわいい。
「え、ドーピングって……」
「春香ちゃん、りょうちゃん、お疲れ様。パート練習どんな感じ?」
僕が春香にドキドキしながら尋ねると、学生指揮としてパート巡りの旅に出ていた及川さんが、基礎練習を終えて楽器を持って、僕と春香がパート練習をしていた部屋に入って来た。正直言って、この部屋にはユーフォパートとコンバスがいたので、変な感じになる前に及川さんが来てくれて助かった気もする。決して残念だった。とは思っていない。えぇ、決してそんなこと…思って…ないです。
「りょうちゃんの唇が死にました」
「あ、ご愁傷様です」
春香の一言で状況を察した及川さんは引きつった笑みを浮かべて僕の方を向き、楽器を置いて手を合わせて頭を下げる。いやいや、死んでないです。一応まだ生きてます。
ちなみに、だが、及川さんも一度、興味本位で春香の練習を受けたことがあるらしい。去年、僕が入る前に春香に後輩ができたら…ちょっと不安だから、一回春香がパート練習する練習をしよう。となったらしくて……なんで平気な顔してあのメニューこなせるの?と、もうあの練習は極力受けたくない。と以前言っていた。
「りょうちゃんがちょっと休憩したいみたいなので、少し休憩もらっていいですか?合流していきなりで申し訳ないのですが…」
「あー、うん。了解、じゃあ、10分後から始めようか。どうする?このまま春香ちゃんがパート練習の進行する?」
「……お願いします」
「了解。じゃあ、とりあえず練習再開したら、今日2人が練習したところチェックするからね」
及川さんはちょっと安心した様子で練習再開後の予定を口にする。内心、僕も春香が及川さんにパート練習を任せてくれてホッとした。このまま春香がパート練習の進行続けていたら、本当に春香にドーピングしてもらわないとセクション練習や合奏練習まともに吹ける気なんてしなかったから。
「で、ドーピングする?」
休憩中、楽器を吹く及川さんに聞こえないように小声で春香が僕に尋ねてきて、めちゃくちゃドキドキした。
「えっと、休憩できるから。大丈夫」
「そっか…ちょっと残念」
ちょっと残念って、さっきいっぱいドーピングしたじゃん。と思いながら、僕も残念と思っていたことは黙っておこう。
さすがに、ここではできないし、今頃頑張っているまゆにも申し訳ないからね。
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