第127話 信じよう。
「ねえ、ちょっと、コンビニ行ってきていいかな?」
「あ、私もコンビニ行きたい。3人で行こう」
僕の言葉に春香がそう返すと僕は少しだけ困った表情をする。コンビニに行きたい。というのは建前で本当は1人になってさきちゃんと電話する時間を作らなければならなかったからだ。現在の時間は0時少し前、かなり遅い夕食を終えて後片付けをして春香がお風呂を入れてくれた直後なら1人でアパートを出れるかなと思ったのだが…
「春香ちゃん、夜も遅いし効率的にお風呂済ませた方が良いと思うよ。りょうちゃんに買い出し頼んでりょうちゃんがコンビニ行ってくれてる間にまゆと春香ちゃんで順番にお風呂済ませた方が良いと思うよ」
まゆ先輩は僕に目線を送りながら春香に言う。困っていた僕を見て助け舟を出してくれたのだろう。すごく助かる。
「りょうちゃん、まゆ、アイスクリーム食べたい。バニラ味よろしくね」
春香の返事よりも先にまゆ先輩は僕に買い出しの品を頼み、僕が1人でコンビニに行く雰囲気を作ってくれた。すると春香も納得して僕に買ってきて欲しいものを頼んだ。春香とまゆ先輩に行ってきます。と言いアパートを出るとまゆ先輩から、貸しだからね。とLINEが来たので、ありがとう。いつかちゃんとお礼するね。と返信してさきちゃんに電話できるよ。とLINEを送った。
「で、まゆちゃん、りょうちゃんに何があったの?」
りょうちゃんを見送って早々にまゆは春香ちゃんに問い詰められる。やっぱり、りょうちゃん1人に買い出し行かせるのは不自然だよなぁ…いつもなら絶対まゆも行く!って言ってるもん……たぶん、りょうちゃんは上手くごまかせたよ。ありがとう。とか思っているのだろうな…
春香ちゃんにめちゃくちゃ問い詰められているが、まゆも状況を全く理解していないので何とも言えない。とりあえず、適当にごまかしてみるか……
「ん?りょうちゃんに何があったって?」
「ごまかさないで…」
「いやいや、ごまかしてないよ。本当に春香ちゃんが何言ってるかわからないよ。え、りょうちゃんに何かあったの?りょうちゃんの様子変だった?」
白々しく春香ちゃんに言うと春香ちゃんを頬を膨らませる。かわいいなぁ…でも、そんなかわいい顔してもまゆは何も知らないから教えてあげられないよ。
「りょうちゃんは変じゃなかったけど、まゆちゃんが変だったもん」
「どういうこと?」
「いつものまゆちゃんなら、絶対りょうちゃんと一緒にコンビニ行こうとするし…今日、まゆちゃん、いつもより、りょうちゃんに軽口言わなかったし、なんかりょうちゃんに気を遣っている感じがあった。あと、りょうちゃんが1人でコンビニに行く雰囲気を作ったのもまゆちゃんだし…お願いだから、教えて…りょうちゃんに何かあったの?りょうちゃんが困っているなら私も力になりたいの。まゆちゃんならこの気持ちわかるでしょ?」
「そう…だよね…ごめんなさい。ごまかそうとしてた」
ダメだ。春香ちゃんにそう言われるとまゆには認めることしかできない。だって、まゆが春香ちゃんの立場だったら、春香ちゃんと同じことをしていたと思うから……
「教えて…」
「ごめんなさい。まゆは本当に知らないの。りょうちゃんが何か抱えているってことは確かだと思うけど…何があったかは本当に知らない。信じて…」
「そっか…」
「あと、りょうちゃんに問い詰めることはしないで。りょうちゃんとさっき話してさ、本当にどうしようもなくなったらまゆか春香ちゃんを頼るように約束してもらったからさ…りょうちゃんが相談してくるまでは…できるだけまゆは黙ってたい」
「わかった。りょうちゃんを信じよう。でも…本当にりょうちゃんがやばそうだったら問い詰めちゃうかも…」
「うん。たぶんまゆも春香ちゃんと同じだから…」
りょうちゃんを信じてはいても心配だ。りょうちゃんはいろいろ抱え込む体質みたいだし…もし、りょうちゃんが限界そうだったら、まゆはりょうちゃんに嫌われてもいいからりょうちゃんに力を貸してあげたい。余計なお世話と言われようが邪魔と言われようがただの自己満足と言われようがまゆはりょうちゃんのために何かしてあげたいと思うだろう。それはきっと春香ちゃんも一緒だ。
だから、今は信じて待つよ。まゆと春香ちゃんは少しでもりょうちゃんが安らげるように精一杯りょうちゃんを支えてあげよう。大丈夫、本当にりょうちゃん1人じゃどうしようもなくなったらりょうちゃんは必ずまゆか春香ちゃんに話してくれる。約束したもん。だから、今は信じて大好きな君を待つよ。
「そっか…そんなことがあったんだ…」
コンビニに向かいながら、さきちゃんと電話をして、最近のゆいちゃんについての話を聞いた。相当無理をしている…そう感じた。
「このことを他に知っている人は?」
「りっちゃんさん…ゆいが揉めた時に力貸してくれたから相談したの…」
「そっか、ありがとう。とりあえずさきちゃんはゆいちゃんの側にいてゆいちゃんを支えてあげて…もし、ゆいちゃんが無理してるなら僕が何とかする。たぶん、りっちゃんさんも協力してくれるからさ…」
「うん。ありがとう」
「いえいえ、相談してくれてありがとう。さきちゃん、ゆいちゃんを任せるよ」
「うん」
僕はそう言いさきちゃんとの電話を切った。事情は把握した。ゆいちゃんは僕たちのために怒ってくれた。その結果、ゆいちゃんに何かあったみたいだ…もし、ゆいちゃんが無理をしているのなら助けてあげないと……
せっかく再会して…友達に……なれたんだから………
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