第125話 君の幸せ。





日曜日、僕は春香とまゆ先輩と一緒に家で休日を過ごした。一緒に寝て、一緒に起きて、一緒に料理をしたり、一緒にゲームをしたり、一緒にお昼ごはんを食べて、一緒にお昼寝して、一緒に夕食の材料を買いに行って、一緒に夕食を作って、一緒に夕食を食べて、あっという間に夜になった。普通の1日がすごくあっという間にで…すごく幸せだった。


「りょうちゃん、春香ちゃん、また明日ね」

「うん。気をつけて帰ってね」


夕食を終えた後、家に帰るまゆ先輩を見送るために駐車場まで行くとまゆ先輩が僕に何かを訴えるような目線を送ってきた。


まゆ先輩のお願いに応えるために僕はまゆ先輩を抱きしめてまゆ先輩と唇を重ねた。数秒間、唇を重ねてまゆ先輩から離れるとまゆ先輩は顔を真っ赤にしながら、ありがとう。と言い、逃げるように車に乗り込んだ。


「じゃ、じゃあね。おやすみ。りょうちゃんも春香ちゃんも2人きりだからっていちゃいちゃしすぎないでよ」

「ん〜まゆちゃんが今、りょうちゃんにしてもらった分くらいにはいちゃいちゃさせてもらうよ」

「ずるい…」

「まゆちゃんだって一昨日りょうちゃんと2人きりだったじゃん」

「そうだけど…バイト終わりだったし、次の日もバイトだったから全然いちゃいちゃできなかったの!」

「はいはい。ほどほどにいちゃいちゃするくらいにしておくから安心して」

「安心できない…」


春香はニヤニヤしながら、まゆ先輩は頬を膨らませながら2人はそんなやり取りをしていた。


「りょうちゃん、いくら春香ちゃんがかわいいからって春香ちゃんだけ特別扱いしないでよ」

「うん。わかってるよ」


僕がまゆ先輩にそう答えるとまゆ先輩は車のエンジンをかけ始めた。春香だけ特別扱いするな。とまゆ先輩は言うが…たぶん、まゆ先輩の方が最近春香よりいい思いしてると思うんだけどなぁ…


まゆ先輩はかなり自分がしたいことやしてほしいことを伝えてくれるからその要望に応えるのだが…春香は良くも悪くも自分がしたいことやしてほしいことをあまり言ってくれない。遠慮がちなのだ。僕は春香もまゆ先輩もどちらも平等に愛しているが、それが行動で示されているかと言うとたぶんそうではない。だから、春香のことをもう少し考えてあげないと。春香に嫌な思いはして欲しくないから…


まゆ先輩を見送った後、春香は無言で僕の服の袖を引っ張って僕の顔をチラッと見る。春香の行動の理由は今ならちゃんとわかる。


僕は春香を抱きしめて春香と唇を重ねた。すると春香は満足そうに微笑んでくれた。まゆ先輩なら春香ちゃんだけずるい。とかまゆにもやって。とか言ってくれるが、春香はそうではない。言ってくれる時もあるが、自分の中にしまい込んでしまう時とかがあるので、そういう春香の気持ちを考えてあげないといけない。


僕は春香の手を握って、アパートの部屋まで歩いた。春香は満足そうな表情で一緒に歩いてくれた。

部屋に入ってから、僕は春香と2人きりの時間を楽しんだ。久しぶりに2人でデザートのスイーツ作りをしたり、2人でテレビを見て笑い、2人でゲームをしたり、ちょっとだけいちゃいちゃして、2人でお風呂に入って、お風呂から上がってからは春香の髪を乾かしてあげたり春香と2人きりで幸せな時間を満喫した。


春香の寝顔を見て幸せな気分になりながら春香を優しく抱きしめて僕も眠りについた。今日も幸せな1日だった。明日も、春香とまゆ先輩と幸せな1日を過ごしたいなぁ。





アパートの部屋を出て私は泣いていた。逃げるようにしてアパートの部屋から出た私はアパートの近くの公園のブランコに座る。懐かしいなぁ。つい、この前の出来事なんだよね。君が私を探してここに来てくれたのは…懐かしいなぁ…つい、先日の出来事なのにかなり昔の出来事のように感じてしまう。


ここにいると少し落ち着く気持ちと、儚い気持ちがある。君が探しに来てくれた時のことを思い出すと心が落ち着く気がするが、君が探しに来てくれない。と理解すると儚くて辛い気持ちになる。


助けてよ…助けに来てよ…私を探しに来てよ…また、あの時みたいに私と手を繋いでよ…


涙が止まらない。辛い、辛いよ…なんで……こんなに辛いのだろう………助けて………


いくら私が泣いても、いくら助けを求めても君は…助けてくれないよね。心では助けを求めているのに、私はそれを隠しているのだから、君にこれ以上心配をかけたくないから…私は君に助けを求められない。なのに、助けてくれないよね。は酷い言い方だな。自分勝手だ……


そろそろ戻らないとな…戻りたくないけど…戻らないと……


辛いなぁ…でも、君の幸せのために私は、私に出来ることをする。だから、幸せでいてね。お願い。自分勝手な私のお願い。


私は泣きながらブランコから降りて公園を出てアパートに戻るために歩き出した。泣きながら…歩いた。人通りの少ない道だから誰にも見られていないだろう。と思い、いっぱい泣いた。辛い。助けて…と……


「ゆい…ちゃん……???」


そんな私の後ろ姿を見られていたことに私は気がつかなかった。気がつく余裕なんてなかった。






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