第105話 告白の後
「そっか…」
辛いなぁ……
「ありがとう」
「ごめんなさい…」
うん。これでよかった……大好きな3人の関係を崩さずに済んでよかった……
「さようなら…」
私に…春香ちゃんとまゆちゃんを裏切って私に…きみと…春香ちゃんと…まゆちゃんと関わる資格はないから….…さようなら。
「りっちゃんさん!?」
りっちゃんさんが楽器を片付けた後、僕はりっちゃんさんに返事をした……りっちゃんさんは泣きながら…そっか、ありがとう。ごめんなさい。さようなら。と僕に告げてホールの鍵を舞台袖の机に置いてホールから出て行った。
「ごめんなさい……」
りっちゃんさんを傷つけてしまったことに対する謝罪なのかはわからない…だが、気づいたら口にしていた。りっちゃんさんの後を追うべきかと思ったが……今……僕がりっちゃんさんを追いかけても何もしてあげられない。むしろりっちゃんさんを傷つけるだけだろう……僕はホールの鍵を閉めて、ホールの鍵を受付に返して次の授業に向かった。
「りっちゃんさん…大丈夫かな……」
あれから数日が過ぎて月曜日…りっちゃんさんに何度連絡してもりっちゃんさんは返事をくれない。それとなく春香と、土日お泊まりにきていたまゆ先輩に聞いてみたがりっちゃんさんは春香とまゆ先輩にも返事を返していないらしい。
月曜日はりっちゃんさんと同じ授業を受けてその後、りっちゃんさんにピアノを教えてもらう予定だ。だから、授業の教室に行けばりっちゃんさんに会えるはず………
と、思っていたのだが、りっちゃんさんは授業が始まってからも教室に現れなかった。授業が終わり僕は走ってピアノ練習室に向かった。いつも…りっちゃんさんと一緒にピアノの練習をする部屋に……だが、りっちゃんさんはいなかった。いつも使っている部屋以外の練習室も探したがやはりいない……僕はりっちゃんさんに電話をかける。最後に…りっちゃんさんに言われた一言がすごく気になったから……ありがとう。ごめんなさい。さようなら。その言葉が何度も脳内を遮る。最悪の場合のイメージをするたびに…僕はあの時、りっちゃんさんの腕を掴まなかったことを後悔する。あの時…ホールでりっちゃんさんを止めていれば……と後悔するが今更どうしようもない……今……僕にできることは……
2限の時間とお昼の時間、僕はりっちゃんさんを探し続けたがりっちゃんさんは見つからない。3限、4限の授業を受けた後、僕はまゆ先輩と待ち合わせをしていた駐車場に向かう。今日は、僕の初出勤の日だから…まゆ先輩と一緒に本屋さんに向かうためにまゆ先輩と合流しなければならないが…待ち合わせの時間まで…まだ時間がある。4限が予定より早く終わったから……
僕は適当にキャンパス内を歩いていると、授業が終わった建物から人がたくさん出てきた。
「りっちゃんさん…」
その中にりっちゃんさんを見つけた僕は急いでりっちゃんさんの元へ向かう。僕に気づいたりっちゃんさんは逃げるように人混みの中に消えてしまい、完全に見失った。
見失ってしまったが…りっちゃんさんが無事でよかった……と何度も僕は口にしていた。
「りっちゃんさんが無事でよかったです。連絡しても返事がなかったから心配してたんですよ。1限の授業も来なかったし…2限の約束も守ってもらえなかったし……来週はピアノ、教えてくださいね。明日、また部活で会いましょう。りっちゃんさんのバストロンボーンの音が聴きたいです。それと…また、4人で遊びましょう。春香とまゆには何も言ってないです。だから、僕とは無理でも…春香とまゆとはこれからも仲良くしてあげてください。お願いします。春香もまゆもりっちゃんさんから返事がなくてどうしたのかな?って言っていたので返事してあげてください。お願いします」
僕はその場でりっちゃんさんにLINEを送った。既読は付かない…だが、僕の想いと言うか…お願いを伝えたかった。これでりっちゃんさんが傷つかないといいが……僕とりっちゃんさんの仲はもう今までのようにはいかないかもしれない。だが、春香とまゆ先輩との仲は…変わって欲しくない。勝手だが、りっちゃんさんと春香とまゆ先輩は3人で仲良くいて欲しい。
とりあえず……りっちゃんさんが無事でよかった……
僕は少しだけ安心して、まゆ先輩との待ち合わせに向かった。
「りょうちゃん……」
りょうちゃんから送られてきたLINEを見て私は泣いてしまった。やっぱりりょうちゃんは優しい……ほんとうにありがとう。でも、やっぱりできないよ…春香ちゃんとまゆちゃんからりょうちゃんを奪おうとした私に春香ちゃんとまゆちゃんの側にいる資格はない……
ちゃんと…春香ちゃんとまゆちゃんに話さないとなぁ……ごめんなさい。って……ちゃんと謝らないと……そして……自分勝手なお願いだけど……最後に……りょうちゃんを幸せにしてあげてってお願いしたい……それが終わったら春香ちゃんとまゆちゃんと……お別れ……りょうちゃんにも……もう近づかない……完全にさようならしないと……いけない………私が犯した罪の償いは………ちゃんとしないと………
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